ある寒い日
ある寒い日のこと、容保は元気になった敏姫が走り回っているという知らせを受けた。雪が降っているのに……と心配した容保の視線の先には……
ある雪の降る寒い日、また敏姫がやらかしたという知らせが夫である容保に届いた。
不思議な力で健康な体を手に入れて以来、敏姫は鶴ヶ城から庭先まで、ありとあらゆる所を文字通り走り回っていた。
やれやれ、と許していた容保も、今回ばかりは心配だった。
雪が降っているからだ。
「敏!……いや、敏姫!大事ないか!」
まだ仕事中だというのに、容保は敏姫を探し回っていた。
「敏……いや、敏姫!」
「殿!」
容保の視線の先には、寒さで顔を真っ赤にした敏姫と、その敏姫に巻き込まれたであろう侍女の姿。
と、人の背丈はあろうかというほどの雪だるまがあった。
「……敏姫、何をしておる……」
「この雪だるまを作っていたのですわ!」
駆り出されたであろう城の男衆が申し訳無さそうに雪だるまの影にそそくさと隠れた。
「……やっと見つけたかと思ったら……」
容保は呆れたように肩をすくめた。
その表情は呆れていたが、それ以上に安堵が浮かんでいた。
容保は雪で着物が汚れるのも構わず足を進め、敏姫を抱きしめた。
「わぁ!」
「こりゃたまげた!」
「あの容保様が、我々の目の前で敏姫様を抱き寄せるなんて!」
「誰かおらぬか〜!写真!写真じゃ!」
侍従の反応に、容保はしまったという感じで片手で口を押さえたが、すぐにいつもの平静さを取り戻し、敏姫の方へ体を向ける。
「敏……体が冷え切っているではないか。手もこんなに赤くなって……」
「だって夢だったんですもの……雪が降ったら庭に大きな雪だるまを作るのが……」
敏姫が言い終わらないうちに、容保は軽々と姫の体を肩に担ぎ上げてしまった。
「!?!?」
突然のことに声が出ない敏姫と侍女たち。
「……もう見ておられん。敏、今少し辛抱してくれ」
容保はそう言って、あっという間に敏姫と部屋に戻って行ってしまった。
後に残された侍女や侍従が
「今の見た!?姫様を軽々と肩に担いで行ったわよ」
「敏、ですって!!素敵ねぇ!」
「私も担がれたいわぁ!」
「うおおお〜殿!写真が撮りたかったでござる」
などとわぁわぁキャーキャー騒ぎを起こしていたことなど、容保と敏姫は知らなかった。
敏姫様は作者の中では少しおてんば設定です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




