11話「オメガの策?」
「そうか…志波が。」
幸平と敦彦くんから「幸平が志波に命を狙われた」と報告を受ける。話を聞く限りだとEVに相当強い憎しみを持っているようだが、だからと言って志波が幸平を殺そうとするなんて…。
「なあ、博士と大牟田さんは、あの志波って人と仲間だったんだろ?なんか心当たりとかないの?」
確かにそうだが…志波はあまりに変わりすぎている、もう俺たちの知っている志波じゃない。地元に帰っている間に何かあったのか?
「やっぱりEVが俺の振りしてると思ってるからじゃないのかな。俺は俺だ!って誤解が解ければきっと戦わなくていいはず…」
現状そうとしか考えられないが、それは悪魔の証明だ。いくら幸平が幸平だという根拠をかき集めても完全には否定できない。幸平のこの言動は演技どうこうで説明できるものではないと僕は思うが、志波はそう考えてはくれないだろう。
「とにかく幸平、ここに来るのも控えた方がいい。志波はすでにここの場所も知っている。ここにも君を狙ってくるかもしれない。」
幸平が「わかった」と答える。申し訳ないが、現状でできることはこれくらいしかない。
「あ、そういえば。俺に連絡入れたのって誰だったんですか?大牟田さんは知らないって言うし。」
なんだそれは?幸平に説明を求める。
「いや、俺が知らないうちに敦彦に連絡が入ってたっていうんだよ。でも俺その時戦闘中でそれどころじゃなかったし…」
確かに戦闘中に連絡を取る余裕はないはずだ。だが敦彦くんに連絡が入っているのは事実だ。そのとき幸平が「あっ!」と声を上げる。
「ひょっとして、俺の中のEVがやったのかも!」
なるほど、それなら遠隔操作で電話を操作することもできるし、幸平が何も知らなかったことにも説明がつく。待てよ、だがそれはつまり幸平の中でまだそのEVの自我が生きているということになる。いつか聞かなければと思って先延ばしにしてきたが、この辺ではっきり聞いておく必要があるかもしれない。
「幸平、教えてくれないか。君がEVに感染した時のこと。」
幸平は「そうだよな」と答えると話し始めた。
「ふー、終わった終わった。二日連続で出るだけで珍しいのに一日に五体も出るなんてな。ほんと疲れちゃったよ。早く帰ろっと」
「まさか私が生み出した廃鬼をすべて倒すとはな。」
「誰だ?ていうか何それサンダー・アーマー?」
「これはEVアーマーと言う。私達EVの肉体のようなものだ。それよりも貴様、なかなかの実力者と見える。ぜひ私と手合わせ願いたい。」
「いや、俺疲れてるから…また別の日にしてくれない?」
「むっ、そうか。万全の状態でなければ意味がない。仕方ない日を改めるか。」
「あっ、良いんだ。」
「君はそんな前からEVアーマーと会っていたのか!?幸平、なんでそれすぐに言わなかった?」
「いや、ふざけてるだけだと思ったんだよその時は。とにかくまだ続きあるから。」
「逃げずに来てくれたな。」
「いや、本気でやるつもりなの?それ多分コスプレかなんかでしょ?動きづらそうだし」
「戯言と受け取っていたか。では私の実力を見てもらうとしよう。」
そしたら一瞬で距離詰めてきてさ。あれはまじで驚いた。
「…マジで?」
「本気を出さなければ貴様が死ぬぞ。」
で、もうしょうがないからアーマーつけたの。
Thunder armor set up! Type_Voltaker
「私はオメガだ。人間。名は何という。」
「…俺?大牟田幸平。」
「では始めようか。…と言いたいところだが無粋なものがついているな。」
そう言ってボルテッカーのカメラ破壊してきたの。で、もうそこからは一進一退の攻防。魂と魂のぶつけ合い。
「…そして君は敗北しオメガに感染された、というわけか。」
「いや、勝ったよ。」
…は?ならどうして…
「まあ、まだ続くから聞けよ。」
「ふふ、見事だ。大牟田幸平。私の負けだ、早く止めを刺せ。」
「うーん…」
「どうした?なにをためらう?」
「いや、なんかお前のこと憎めないっていうか、廃鬼を使って街を襲ったのはもちろん許せないけど、なんかお前は悪い奴じゃない気がする。」
「お前一体何を言って…今の私の体は放っておいても消滅する。せめてお前の手で、止めを刺してくれ。」
「それそれ、そういうとこなんだよ。俺が憎めないって言ってるのは。」
「そうか、これは私への罰なのだな?お前の同族を襲ったその罪への。」
「罰って…あっ、そうだ!」
「どうした?」
「罰ってわけじゃないけど、お前に罪を償わせる方法思いついた。」
「…いいだろう、甘んじて受けようじゃないか。」
「俺と一緒にEVと戦え!それがお前の償いだ。」
「ふっはははは!やはりお前は誇り高い戦士だ!いいだろう、お前に感染してやる!」
「…とまあ、こんな感じのことがあって、そこからお前と再会するまでの記憶はあんまりないんだけど。」
開いた口が塞がらない。つまりこいつは、倒したEVに情けをかけた結果まんまとEVの器にされちまった、ってわけか?お前は知らないだろうが、そのあとボルテッカーもしっかり機能停止にされているんだぞ。しかも僕達と再会するまでの記憶が抜け落ちているって怪しすぎるだろ!おい敦彦君、「流石だなぁ」じゃないんだよ。
「どうした直也?黙り込んで。」
呆れてものも言えないんだよ!なんかもう…処理しなきゃいけない情報が多すぎる。飯食って少し休んだら杏さんに相談してみるか。
「博士、すっごい疲れた顔してたけど大丈夫ですかね?」
みっちゃんが心配そうに聞いてくる。確かに、あんな疲れた顔をしているのは父親が行方不明になってサンダー・アーマーの完成に躍起になっていた時以来だ。交野くんは少し根を詰めすぎるところがあるから放っておくとぶっ倒れるかもしれない。あとでちょっと話聞いてやるか。
「…で、処理しなきゃいけないことが多すぎてそんな顔してたってわけ。」
これは想像以上に大変だ。とりあえず一つずつ整理していこう。
「まず交野先生の遺した設計図ね。考えられる理由としては…うーん、軍事利用とかかな。」
「父さんはそんなことしない!」
「あー、はいはい。わかったわかった。」
父親のことになるとこうなんだから。まあ私もそれはないと思うけど。でもEVの存在をその時すでに知っていて構想を練っていたとしたらなぜ交野くん達に何も言っていないのだろう。交野くんはその時からすでに科学者としての信頼を勝ち得ていたはずだが。
「これは考えても分からないわね!保留!」
「ちょっ…相談乗ってくれるはずじゃ…」
「保留って言ったでしょ?判断材料がそろってから考えればいいの。考えても無駄なことでいつまでもウジウジしない!テキトーさも必要よ?」
不満そうに「分かったよ」と答える。あとでもう一度釘を刺す必要がありそうだ。全く、変に真面目なんだから。
「で、大牟田くんの体のことか?自分でも言ってた通り悪魔の証明じゃない。あなたが信じたい方でいいんじゃない?」
「でも、主観で判断するのは危険だ!」
「今科学者として話してる?それとも大牟田くんの友人として?」
「………」
この件はもう大丈夫そうね。
「で、あとは志波くんと大牟田くんのことか。あんた人のことばっかりね。志波くん、あんたとは普通に話せるんでしょ?遠慮するような仲でもないんだし聞いてみればいいじゃない。」
「それはぁ、でも、彼にだって、ほら、言いたくないこともあるだろうし…」
「怖いの?」
「…正直変わってしまった彼が怖い。今の彼は憎しみの炎にとらわれている。」
「だったらなおさら逃げちゃダメじゃん、友達なんでしょ。」
「…それもそうか。ありがとう、なんかすっきりしたよ。」
「気にしないでよ。このぐらいしかできないから。」
まあ、もともとそんなに心配してないけど。あんたがそういう疲れた顔してる時は、絶対何かやってくれる時だから。
11話・完




