12話「苦肉の策」
廃鬼が出現した。いつも通りなら分析データをもとに敦彦くんに指示を送るのだが、今日は杏さんにその役目を任せあるところに向かう。
「どちらさま?ってなんだ、直也か。」
志波の家だ。ここでこいつときっちり話しておかなければならない。全力のスマイルで尋ねる。
「志波、何があったか教えてくれないか?僕達、と、友達じゃないか!」
「え、何その顔、キモイね!」
あっけなくあしらわれてしまった。やはりそう簡単にはいかないか。だがまだ策はある。
「ねえ、直也。この間の量産型、量産してどうするつもりだったの?」
「え、ああ自衛隊に配備してEVとの戦闘に役立ててもらおうと思って…」
いや、そうじゃない。完全に向こうのペースだ。策はあるんだ、早く実行に…
「変わらないね、そうやって誰かに戦わせることばっかり考えてる。だから決断が鈍る。」
誰かに戦わせるって…仕方ないじゃないか。僕みたいな素人より訓練を積んだプロが使ったほうがいいに決まっている…ボルテッカーだってそもそも適性がなかったんだ、仕方がないじゃないか…
「僕はずっと、幸平と肩を並べて戦いたいと思ってた。誰かに戦わせて自分は見てるだけなんて卑怯だろ?だからコンパスを、適性がない僕でも使えるように調整した。なのにあいつは、勝手に死んでやがった。だから、許せないんだよ。幸平を殺したオメガが。」
志波…君はそんなことを…でも僕も引くわけにはいかない。やっぱり君と大牟田が争っていいはずがない。スマホを取り出しラボのモニターから映像を転送してもらう。
「志波、これを見てくれ。」
「何?今更廃鬼なんかと戦ってるとこ見てもなんとも思わないけど。」
「違う、幸平の戦い方を見てくれ。」
「あの鞭を使った戦いのことかい?まるでサンダー・アーマーを潰すための装備じゃないか。」
僕も初めて見たときはそう思った。でも彼の戦いを見て確信した、あいつは紛れもなく、大牟田幸平だと。
レボルトとオメガの連携もかなり形になってきて、オメガが鞭で動きを封じてレボルトがその隙に電流を流し込むという戦い方が確立されていた。しかし、EVの身である幸平にとっても逆電流を使った戦いは危険なものだ。その負担を最小限にとどめるためにあの鞭を使っているのだ。
「あれはさ、EVの身でEVと戦うための苦肉の策だったんだと思う。あいつは何も変わってないよ。僕達のよく知っている、バカで無謀な正義のヒーローだよ。」
「下らないね。それがなんだというんだ、何の裏付けにもなっていない。君があいつを信じたいだけだろ?」
そうだ、僕が信じたいだけだ。でも僕は幸平をとことん信じると決めた。志波だって本当はそう思っているはずだ。
「また来る。諦めないからな。」
「勝手にすれば」と突き放される。でも諦めない。またいつか、昔みたいに3人で笑える日がきっと来る。
最近家に直也がよく来るようになった。幸平を信じろって説得しに来てるんだけど僕はそもそもあいつが幸平だと思っていないんだから、その説得が的外れだ。ただでさえ不愉快な来客が多いんだから友人の彼とぐらいは穏やかに話したいんだけど。そう思っているとほら来た、例の不愉快な客だ。
「やあ、志波君。またレボルトの開発者が来てたみたいだね。確か交野直也、だっけ?」
こいつは“カイ”とかいう名前のEVだ。EVの情報を引き出す代わりに生かしておいてやっているが、最近だんだんと馴れ馴れしくなってきているので実に不愉快だ。今すぐにでも殺してしまいたい。
「“アダム”達の計画が第2段階に入ったそうだよ。とうとう出てくる、EVアーマーが。」
アダムというのは多分こいつらのリーダーのことだろうがその辺の情報に関してはなかなか口を割らない。忌々しいがこいつらの言う”計画”とやらの全容が分かるまでは殺すわけにはいかない。
「どこに出る、教えろ。」
顔を突き合わせているだけで不愉快だ。それを聞き出しすぐに教えられた地点に向かう。
カイに教えられた場所に向かうが、それらしき奴は見当たらない。あいつ嘘を教えたのか?しかしここは電気街だ、どこにEVが潜んでいてもおかしくはない。警戒しながら辺りを歩いていると、電気街の中心地の方向から悲鳴が聞こえてくる。一足出遅れたか。コンパスを装着し悲鳴の方角へ向かう。EVアーマーが人を襲っていた。逃げ遅れた人を逃がし、EVアーマーに殴りかかる。
「不意打ちか。初対面なのに挨拶もなしか?」
あっさり攻撃を受け止められ、EVが馴れ馴れしく話しかけてくる。全く不愉快だ。
「人間を襲う連中と話すことなどない。お前たちの目的を話して大人しく殺されろ!」
NSロッドを分離してNロッドで足元を払う。
「おっと、危ない。そいつの磁力は厄介だからな。」
ひょいと足を上げて交わしてくる。すばしっこい奴だな。“コンパス”のスペックで正面から戦うのはやはり無理があるか。
「お前、カイと行動を共にしているらしいな。あいつを信用するのはやめといた方がいいぞ?」
僕だってあんな奴信用などしているものか。いちいち人の神経を逆撫でしてきやがって。一刻も早く殺してしまいたいがこちらの動きはすべて見切られている。それにEVの情報も聞きださないといけない。
「戦闘中に考え事か?」
奴の突きをもろに食らってしまう。怯んだところにさらに追撃が来る。ちょっとまずいな…やはりもっと調整を重ねるべきだった。
「この…」
「遅いな。」
反撃を試みるもことごとく防がれてしまう。これほどまでに差があるとは…
「我々が会いたいのは“レボルト”だ。悪いがお前には用はない。」
奴の体がさらに強力に電撃を帯びる。畜生ここまでか。これじゃあ、EVの殲滅なんて夢のまた夢…死を覚悟したその瞬間、目の前に何者かが割り込んできて奴の攻撃を受け止めた。
「オメガ…裏切ったというのは本当だったのか。」
オメガだと?一体どういうつもりで助けに入った?オメガが奴を蹴り飛ばすと僕のほうに向き直り手を差し出してくる。
「志波、立てるか?」
馴れ馴れしく話しかけて来るな。
12話・完




