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第四章 宣戦布告 捌

「兄、さん。覚悟、して」

I seeアイシィ。ジャパニーズ風に言うならお膳立てというものデスネ~。バットゥ、幾ら希少型でも力不足ではないデスか? シルバードラゴン!」

 霊力値約6万8000。神影領域にある遊撃型で、風の第二位。

 御子型を含めて4人リンクしている今は、攻撃値240%、防御値60%、補助値120%、召還値270%。

 神影領域であるため、適正値は2倍となり、上位次元密度は80%を超えている。

 特異型であった時の特異能力で継いだ力にせよ、あまりに強大な相手。

「任せて。クラウド」

 顕現するは希望を乗せた雲。決まった形を持たずふわりと上空に浮かぶ想い。

 エクスアイギスを発動させた万能型の誓と5人リンクしている今のセラフィは、妖精術の適正値において攻撃値115%、防御値830%、補助値390%、召還値315%。

 精霊術はリンクしてないので変わらず、攻撃値75%、防御値10%、補助値150%、召還値75%。

 そして妖力値霊力値共に約3万8000の上位次元密度20%。

 正直な話、セラフィにとっては何れも未知の領域で、使いこなせるのかという不安も少なくない。

 いや、不得手とする防御値に至っては、間違いなく上手く使いこなせないだろう。

 普段防御値が僅か10%しかない幻影型のセラフィにとって、防御とはするかしないか。

 つまり、0か10かでしかなかった。

 美姫であれば相手の攻撃を見て要らない力を抜き、上手く余力を残せる場面でも、セラフィは力を抜けず余力を残せない。

 出来て0か半分か全部、この3段階が関の山である。

 それでも、リンクによって生まれた胸に灯る温かな何かを感じながら、目の前の兄に──

 父の影に挑む。

 騒音吹き荒れる戦場の中、いっそ静かに、腰に納刀したままの『零刀 雪月花』を構えるセラフィ。

「零刀 雪月花。斬る対象の動きを凍らせる『雪』。見える範囲で斬撃の距離を跳ばす『月』。斬った対象の霊質を散らす『花』。抜き放った刀身を瞬時に鞘に納める『零』。一定の連撃毎に攻撃値をアップする『刀』。確かにそこそこ・・・・強力な妖精具デス。ですが、ユーもシルバードラゴンの特異能力、忘れてないでしょう?」

 自身の力に余裕をもって講釈を垂れるセルヴァルト。

 そこそこと強調して見下し、煽る。

「4人リンクで君臨する限り、術者と守護精霊への、不利な妨害系能力を防ぐ」

 風を使ったすり足で距離とタイミングを計りながら、冷静にセラフィが答える。

 セルヴァルトは何かと大仰でありながら小狡い。

 精神の影響を受けやすい精霊術戦──。

 こと補助に重きを置く戦闘スタイルにおいて、怒りや焦りは禁物である。

「つまり、『雪』と『花』は無意味デスネ~。『月』は術者なら別によくある攻撃です。そして頼みの綱の『刀』は3秒制限のせいでほぼ常時妖力を消費する代物。ならば守護精霊? まさか、それはない。能力作成の相談に乗った守護精霊に関しては妖精具以上に知ってます。リンクさえすれば・・・・・・・・非常に強力な特異能力、しかしユーはノーリンク。それで、ミーに勝つと?」

 安定の煽り。

「勝つ、よ。だって、みんなが信じて、任せてくれたから。だから──」

 大きく深呼吸。

「華と、散れ。セルヴァルト=スルーザクラウドル」

 決別の言葉を送る。

 と同時、風と共に一足飛びで空へ翔けたセラフィは、鯉口を切って宙を斬る。

 『月』で跳ばされた『零刀 雪月花』の斬撃が守護精霊であるシルバードラゴンを襲い、居合いで放たれた冷気混じりの風の斬撃が枝分かれしてセルヴァルトに襲い掛かる。

「小賢しいデス」

 セルヴァルトは守護精霊と共に大きく移動しながら、セラフィの攻撃に対し防御の風壁を張りつつ撃ち漏らすことなく風撃を当てていく。

 セラフィの攻撃に対してただ避ける、守るというのは愚策。

 攻撃判定がどの程度で下されるのか。

 それが分かるまでは、防いでいたつもりが『刀』で楽に攻撃値を稼がれていたなんてことになりかねない。

 仮に空気中に含まれる湿度の変化なんてものまで攻撃としてカウントされれば、目に見える攻撃を避けた所で意味がない。

 だからセルヴァルトは防御と応撃を同時に行う。

 守護精霊に関しては詳しく知っているが、あの事件後に創られた妖精具に関してはセラフィが言葉を封印したのもあって詳しくない。

 先日やこの日に備えて情報収集は欠かさなかったが、終ぞセラフィが仔細まで明かすことはなく、詳しく知ることは叶わなかった。

(デスが──フゥム、特に問題なさそうデスね)

 セラフィの補助値が高いこともあって、攻撃の種類は多岐に渡り、全て防げてはいない。

 しかし──

(『刀』の攻撃値アップには上限があるのはわかっています。当然デスね。特異値100%の特異型でさえ上限のない特異能力など持てない。まして特異値50%の幻影型であれば尚更デス)

 明確な上限のないパターンは存在する。

 だがそれは、設定上限こそなくても時間などの外部的要因で上限を設けられてしまう。

 結の炎浄なる悪食カオスイーターがいい例だ。

(報告では100連撃で50%アップが上限。リンク相手は万能型と基地型、そして恐らくは特異型。残りの坊やが少し読めませんが、武装型や万能型ではなさそうデスね。ならば──っと)

「──ヤッァ!!」

「フ、無駄デスヨ。シルバードラゴン!」

 セラフィの攻撃に対応しつつ思考を進めるセルヴァルト。

(リンクによって多少上限増加は考えられます。こちらの防御値は60%、向こうの攻撃値は固有スキル倍化で115%に『刀』分。向こうの最大妖力値に比べ、こちらの最大霊力値は2倍弱上。上位次元密度はおよそ4倍差で圧勝。とは言え、向こうは精霊術と妖精術の両刀。危険度は下がりますが、普段通りの精霊術で差は少しばかり埋められてしまいますか。デスが、防御がおざなりなのもあって消費に無駄が多い。その上、守護精霊はこちらが圧倒的デス)

 前衛も可能なシルバードラゴンと違い、クラウドは完全にサポート仕様の後衛タイプ。

 切り札はあるが、この状況下では劇的に攻撃力を上げる手段とはならない。

 チラと、攻防の合間に周囲へと弾幕を張る誓を見る。

(完全に任せているのか、彼はどうやらここ以外のサポートに専念している様子。どうにも気に食わないデスネ。このモドキがミーに勝てると?)

 そうして、セルヴァルトは結論を出した。

(冗談。攻めに転じて、早く潰してしまいましょう)


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