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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第12章 それぞれのやるべき事
155/156

いざ、職人のいる工房へ

章の開始です。

今回は話数少な目で区切る予定です。


今章も拙作をお読み頂けたら幸いです!

 ユウとベラが出発して3日が経過した。



 とは言っても、ルースさんも交えて毎晩ケータイ袋で連絡を取っているから、

今も無事に旅を続けているのは皆も知っている。




 昨日は矯正箸について質問があった他は、ほぼそれぞれの作業をして過ごした。俺は袋の作製と食材の下処理、沙里ちゃんは食材の調理、美李ちゃんとピーリィは畑仕事だ。

 隷属化の解放は今は城の担当者が頑張っている。今も1日に5人前後が救助されてくるが、担当者が4人に増えた事で何とかなっているそうだ。



 姫様とトニアさんは別行動と言うか陛下に時間を作ってもらって色々と話し合いをしているらしい。帝国側が落ち着いたところで自分の国についての事を進め始めた。ニングさんも補佐に回っている。


 ついでに交渉材料になればとケータイ袋も渡しておいたので、使い方の説明も含めてそっちは任せておけばいいかなと。一応、他の要職者で悪用しない信頼のおける人にもいくつか用意が必要な場合は、姫様にとって都合のいい交渉に持ち込んで受けて構わないと言ってある。



 で、早速俺の所に陛下から着信があるってどうなのよ?

バータ皇后や自分の子供達より先に俺にしてどうするのさ!



 帝国側に渡したケータイ袋は皇族全員とリンクされている他に、姫様と俺にもリンクしておいた。何か不具合などあった時の為に俺にもリンクしてあるけど、まさか1発目にくるとは……

 蛇足だけど着信の色分けは陛下が金、皇后がピンクゴールド、皇子が黒、皇女が茶、宰相が灰色となっている。後で聞いたら誰も文句なかったと言っていたし、こんなもんでしょ。


 話し合いの後に部屋に来たニングさんにも焦げ茶色で作って渡した後、

一緒に晩ご飯を食べてゆっくり過ごしたらその日はもう何もなかった。




 翌朝、食後のお茶を飲んで今日の予定を話し合った。


「皆様、私はこれからしばらく陛下にお時間を作って頂き話し合いをする時間が多くなりますので、夜以外は別行動が多くなるでしょう。もし街へ赴く際には事前に部屋の外の護衛に声を掛けてもらえれば行動を共にして下さるよう手配してあります。

 日中でしたら買い物も問題ありませんので、遠慮せず申し付けて下さいね?それと、街で買い物をしても代金は後ほど帝国側から支払われるそうです。ヒバリさん達の報酬がかなり多くなってしまっているそうですので、そこから差し引くので遠慮せず使ってもらえるとありがたいと言っていました」


「姫様の補足になりますが、調理器具の製造を工房に依頼したいとの件は宰相のベイユ様よりご紹介頂きましたので、そちらへ赴く場合もその旨を伝えるだけで案内して頂けるそうです」



 おお、職人さんの紹介は宰相さん直々なのか!これは何をどうしたものが欲しいのかきちんとまとめておかないとだな!毎回メモはしてたからすぐ出来るはずだ。



「じゃあ俺はその職人さんの所へ行きたいです。道具が作れるのかも話し合ってみないと分からないですからね。3人はどうする?」


「ヒバリといっしょ!」


「だよねー」


「わたしも調理器具気になります」


「では、日の暮れる頃にはもどりますので、皆さんもお気を付けてお出かけください。トニア、行きましょう」



 少し寂しそうに先に席を立った姫様と後に続くトニアさんを見送って、俺達は改めて今日の予定を話し合った。と言っても、また商人ギルドへ行ってそこから宰相さんからの紹介の職人さんの元へ案内してもらう。

 しかも馬車は俺達の物だけど、護衛は2人が付き添って御者もその人達がやってくれるらしい。離れに軟禁された時一緒に防衛戦をしてくれた内の2人と言うから更に安心だ。てことは第2騎士団の人のはずだから、後で紹介してくれた宰相さんと共に皇女様にお礼を言った方がいいかな?




「お手数かけますが、よろしくお願いします」


「はい。我々にお任せ下さい」



 早速出掛ける事を告げると、1時間後に正面玄関前に馬車を回してくれた。

護衛の2人は御者台に乗り、俺達4人は幌の中に乗る。


 この幌馬車、近い内に箱馬車に改造されるそうだ。獣人達を送るための一団も安全面を考えて全て箱馬車だったが、俺達の馬車は未だに幌付きなのは危険だろうと忠告され、それなら報酬から差し引いて改造をお願いした。

 弓矢などの防衛にはいいが、欠点もある。ただの幌馬車ならば野盗に狙われる確率は他の幌馬車と同じになるが、箱馬車となれば重要な人物が乗っているか余程金目になるもの(人)がある、と優先的に狙われる可能性が上がる。

 しかしそこは陛下の計らいで少しでも安全性を高める工夫がなされる。箱馬車のデザインを帝国騎士団と同じものにする、この国では見た目での威圧効果抜群な箱馬車にしてくれるそうだ。商会の看板以外にも帝国ご用達の焼き印をしてくれるとも言われたので、遠慮するしない以前にすでに決定されててもうどうにでもなれ状態だったりする。



「内側に支柱を立てて箱馬車にするらしいから、一回り中が狭くなるかもしれないね」


「今みたいに4人だと丁度いいですけど、どの道居住袋を出せばあまり広さは関係ないですもんね」


「でも雨とか寒いのはいやだから、あたしはうれしいな」


 皆も特に反対意見はないから俺ももう任せちゃえばいいやって思ってる。ピーリィはそもそもまったく気にしてないけど、馬車が立派になればきっと喜ぶんじゃないかな?


 そんな事を考えながら馬車に揺られ、

偶に後ろに気を付けながら外の流れる景色を見ていた。




 商人ギルドに到着すると、馬車は護衛の1人が停車場所へ移動させ、

もう1人が俺達の最後尾に付いてきた。


「ラーク商会の方ですね?ようこそいらっしゃいました。さ、こちらへどうぞ」


 男性職員が俺達を見てすっと歩み寄って以前に案内された部屋へと連れて行く。中にはまたあの男性が……あれ?補佐さんはいるけど、椅子に座ってるのは女性?



「あぁ、ようやくお会いできましたね。私は商人ギルド帝国本部長のテレジア・ハルゥスです。お会いできて光栄です」


 すぐに立ち上がって頭を下げる女性はギルド本部長と名乗った。つまりは、あの副長の男性の上司で、ここのトップということになる。頭を上げて長い金髪を手で背に払った。背は沙里ちゃんよりは高いから160?は超えているかな?すらっとしていて大人の女性で……ん?ちょっと耳が長いか?


「?どうかしましたか?」


「あっすみません。耳がその、ギルド長もエルフなのかな?と。じろじろ見ちゃってすみません」


 無意識に鑑定しそうになった時声を掛けられて、

はっとして条件反射で謝っていた。


「ええ、若輩者のハーフになりますが。も、とおっしゃいますと、どなたかエルフにお知り合いが?」


「あー……旅の途中で出会った人がエルフだったので、ちょっと話した事があったんです」


 あんまりルースさんの事言うのもまずい気がするから誤魔化しちゃったけど大丈夫かな?大丈夫だと、思う。きっと。



「本日は皇帝陛下からお話を頂いております。なんでも魔道具や鍛冶での調理器具の製作依頼の件ですよね?」


「はい。直接説明したいので職人さんを紹介頂けたら後はこちらで交渉するつもりです」


「そこで、お願いがあるのですが……」



 エルフの話は流れたけど、ギルド長さんは待ってましたとばかりにお願いとやらを話し出した。きっとこの交渉するために態々ギルド長が出張って来たんだろうなぁ。


 内容は、その調理器具の販売に1枚かませろって話だった。以前レードルや計量スプーンはかなり好評らしく、目盛り付きの寸胴の話もいっていたため下の者達の負担は軽くなり、味の均一化を図る際にも基準となる計量具は大いに喜ばれた。

 そのラーク商会が新たに道具を開発するなら是非とも料理人らが自分達も使いたいと期待してるから何とかしてくれと、どこから嗅ぎつけたのか集まって押し掛けられたそうで。値段によっては買える買えないはあるにしても、自分達もその道具を見てみたいというのを交渉しろ、と。



「使い方を教えていただければ料理人らの対応はこちらで請け負います。当然技術料も含めましてお支払い致しますので、当ギルドにも販売していただけないかと……」


「ご無理を申しますが、なにとぞ……」


 補佐さんもギルド長と共に頭を下げる。



「まぁ、広めてくれるなら料理人にはいい事だし俺は別に」


「わたしも、ヒバリさんがいいなら」


「あたしたちは任せるよ。ねー」「うん!」


 他の3人も特に問題にしてないみたいだ。


「少々お待ちください。そういった話となりますと、一度陛下へお伺い立てして頂きませんと」


 護衛に来てた人がまったをかける。陛下から話を通してもらったんだから当然と言えば当然なのかな?でもそこは俺達は任せるしかないけど。


 その辺りの交渉はもう一切お任せしてしまった。俺達はお茶を頂いたのでのんびり飲んで待っているだけだ。ついでにお昼時だったから断わりを入れてすぐ隣のテーブルでサンドイッチを取り出す。当然ここでは鞄を持っているので収納袋を晒す様なミスはしてない。さすがに俺だってそれぐらいは学ぶさ!

 ついでに部屋にいる全員分と護衛の騎士さんには後で馬車の番をしてる騎士さんに渡すように別に包んだ物を渡してある。




 しばらくして話がまとまったようで、そこでやっと職人さんがいる工房へ移動する事になった。で、何故かギルド長と補佐さんも一緒に来るそうだ。ギルド長、マジで俺達に用があったからいただけなんじゃ……?


 馬車を回してもらってギルドからほど近い職人たちが集まる産業区画へと馬車が走っていく。昼過ぎのこの時間も周りには煙突から煙の上がる建物が多く、たまに油臭い場所など特有の臭いが漂う。



「こちらに職人のまとめ役がおりますので、話を通してきますので少々お待ちください」


 ギルド長自らガラスを多く使った建物へと入って行く。外から見るだけでも陽の光を反射してプリズムからの色とりどりの綺麗な光を映し出す場所も見える。


「綺麗ですねぇ。降りて見に行っちゃだめかなぁ」


「ホント綺麗だねぇ。皆で後でじっくり見せてもらおうよ」


 見たい!と馬車の中ではしゃぐ3人を眺めながらぼーっとしていると、建物から数人が出て来た。先頭には補佐さん、そしてギルド長、最後にがたいのいい……いや、見覚えのある赤い肌をした人が出て来た。




 赤い肌ではなく、正確には赤い鱗のある肌。竜を思わせる大きな口と鋭い牙。太く長い尻尾。鋭い目とおそらく不機嫌そうな表情。


 だが、ヒバリ達を見たらその不機嫌な雰囲気は吹き飛んだ。



「……お?なンだ、にーちゃン達じゃねーか!おーおー、鳥人族の嬢ちゃンも元気そうだなァ。うンうン、ちっと待ってろ。すぐ話し終わらせてくっからよ!」


「待ってくださいヴァージ殿!その話があるのがヒバリ殿なのですよ!」




 ヴァージ……


 確か……ゼスティラの街で、会ったんだっけ?




「ンー?」



 鰐よりすっきりした顔が、不思議そうに首を傾ける。




 そうだ、火蜥蜴族のヴァージ!


 ゼスティラの街でピーリィを心配して忠告してくれた人だ!



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