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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第11章 帝国と天人教
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袋詰めスキルのレベルアップ(LV7)

 翌日、かなりの早起きをした俺はすぐに隣の部屋の椅子に座って、昨日書き出しておいたメモを見ながら袋製の道具を作り出していった。



 最初はユウとベラ専用の簡易居住袋。これは改めて作るよりも、昨日の陛下についていった時に作ったワンルームサイズがあるのを思い出した。丁度イスやテーブルも入れていたし、予備の鍋料理用小型魔道具コンロをシンク台とセットで置けば大丈夫だろう。


 次は浴槽型の袋は2〜3人用を作ればいいとして、ユウとベラ用プラス輸送メンバーが使う男女用で2個必要だ。形は俺達が使ってる浴槽の同型ということで日本の一般家庭で使う直方体をもっと広くしたものだ。上が一辺以外開けられるようになっており、入らない時には閉じておけば多少は保温出来る。

 時間経過なしの条件で作ると湯船に浸かれないのでこれは仕方ないだろう。それでもかなりの保温能力はあるし、川がなくても残り湯で洗濯も出来るはずだ。

 水はベラが、火はユウが作り出せる。それと、そう言った生活に使う魔法を習得した者も同行するのが商隊や軍の常識らしいから、それなりの人員を用意してくれるそうだ。それなら風呂や料理に使う水も火も問題ないだろう。



「これで浴槽はOKだな。トイレの方は要らない椅子を貰って座面を切って作る方が早いかな?……あ!折り畳み椅子用に組んだパイプあったな!あれに袋を被せられる様にトイレ用の袋を調整すればいっか」


 食料用の収納鞄や自立する水袋、トイレや排水、ごみを入れる生活用袋を次々と作り出していく。自分達用も同時に作ってるので、混ざらないように置き場所を変えながら積んでいった。



「……ん?なんか急に袋作りが楽になったような?」


 前にもこんな感覚があった気がする。確か袋作りに没頭してて、途中からノッて来たから調子よく作ってたんだよな。その後どうなったっけ?


「そうだ!確かスキルのLVが……あー、やっぱりかぁ」


 慌てて自身のステータスを鑑定すれば、案の定袋詰めのスキルがLV7になっていた。なんとなくそんな感じしたんだよなぁ。って言っても、LV7で初めて上がった瞬間が分かったっていうね!やっとだよ!



 その内容は、


 LV7:遠隔操作や時限式による開閉条件の詳細設定が可能になる。



 開閉条件の詳細設定ってなんだ?遠隔操作は前からやっていたような?

ああ、あれは袋の消去だけか。とにかく試してみるしかないな!




 それから1時間(本人は時計を見ていなかったので分かっていない)近く色々検証してみた結果、開閉条件というのがかなり幅広い事が分かった。


1.どの袋だろうと、触れていなくても念じれば開閉可能

2.開か閉の初動条件を決めて、それが行われた時に設定した時間を経過すると初動と逆の開閉をさせる。

3.上記以外にも特定の条件を設定し、条件達成時に開閉や消去など実行させる



 1は今まで消去しか出来なかった遠隔操作に開閉が加わっただけだ。この辺りは分かりやすい。

 2は、例えば落とし穴として設置した場合、初動キーは袋を開く事でタイマーが起動し、設定時間を経過すると自動で閉じるといった使い方だ。落とし穴以外にも利用方法がありそうだが、それは後で考えよう。

 3の特定条件は色々試せるようだ。袋を1度叩く、指定量の魔力を通す、50℃以上のお湯を掛ける、陽の光を受ける、指定回数の開閉を行う、合言葉を言う、等様々な条件が設定出来た。



 正直まだまだ実験したい事が一杯だったのだが、


「ぴぅ?ヒバリィ?」


「お?ピーリィおはよう。俺は隣の部屋にいるよー」


「ヒバリー」


「はいはい、ここにいるよ」


 もぞもぞ動く音は聞こえても布団から出る様子がないピーリィに、仕方なく実験を中断して寝室へ顔を見せにいった。ベッドに腰を下ろすとすぐにくっついてきて、安心してまた寝直す。


 昨日、ユウとベラが俺達から離れると聞いてから、ピーリィの様子がまた甘えん坊に戻ってしまった。昨夜はそれで風呂も一緒寝るのも一緒とずっと俺の後をくっついている。


「さっき陽が昇って来たのは気付いてたけど、もういい時間になりそうだな」


 胸ポケットから時計を出して見れば6時過ぎ。多分トニアさんはもう居住袋の中で色々と支度をしている頃だろう。

 昨夜の美李ちゃんは、ユウとベラと一緒に寝ると言って居住袋の中に行ったから、寝室にいるのは俺とピーリィだけだ。それならと、ピーリィにも2人と一緒に寝るよう勧めたら何故か怒られた。解せぬ。




「ヒバリさん、おはようございます」


「おはようございます、トニアさん。皆はもう起きてるんですか?」


「姫様と美李さんは起床なさっております。後の方はそろそろかと思いますよ。美李さんは畑へと向かわれました」


「ピーリィ、皆も起きるみたいだから、そろそろ起きよう?」


「ぴゅぃ〜」


 起きる気はないか。まだやる事あるんだけどなぁ。


「私が見ていましょうか?」


「あ、お願いしていいですか?まだ作業の途中なんですよ」


「はい。(ヒバリさんの匂いがなければすぐ起きますから)」


 ん?何か言ったかな?とベッドから立ち上がった後振り返っても何も反応がなかった。トニアさんはそのまま俺がいた位置に座ってピーリィを撫でる。



 隣の部屋に戻ってからはまた実験を再開する。


 遠隔操作は相変わらず俺だけが出来るが、今回のレベルアップでは条件を設定しておけば俺以外の人が使っても罠の様に開いたり消したりと狙って行えるようになったわけだ。便利になったのは間違いない。


「この辺りは誰かに協力してもらって時間のある時にやろう。それよりもあとはどんな条件が付けられるか試した方がいいな」


「ヒバリさん、あと1時間以内で済ませてくださいね」


「あ、はい。善処します!」


 1時間かぁ……ノッてくると時間忘れちゃうんだよなぁ。

あ!せっかくだからタイマーの実験もしとこう!


 閉じたら50分後に開くように作った小袋の中にジャムと蜂蜜を混ぜた香りの強い物を入れる。閉じると袋の上にカウンターの数字が浮かび、徐々に減っていった。


『 00:49:31 』


 最大は分からないけど、見た限りは秒単位まで表示されるのか。これなら分かり易くていいな。音が出せれば完全にタイマーとして使えるんだけどねぇ。そこも要改善ってわけだ。



 それからは時間いっぱいまで色々と試し、その中で即採用のものがあったので早速それを利用して改良品を作った。この改良は皆も喜んではずだ!


 1人にやにやと笑いながら調整しては作り、納得のいった物が出来るまで次々と作っていった。そして、ふわっと甘い匂いが漂ってきた事に気付き、もう50分過ぎたのかと確認しようと小袋を、


「ん?」


「……ピーリィ、その袋、開いてた?」


「んーん。おいてあったから、あけて食べたの!」


「そっかぁ。時間前に開けちゃったかぁ」


「ッ!?だめ……だった?」


 何かやってしまったと悟ったピーリィが慌てて食べるのをやめてすがりつく。昨日の件もあってか怯えた顔で見上げてきた。


「ちょっと試してたからさ。それと、何も聞かないで勝手に開けちゃだめだよ。次からはちゃんと出来るよね?」


「はい、ごめんなさい……」


「よし、ちゃんと謝れたね!ピーリィは偉いなぁ。ほら、おいで」


「うん!たべたいときもちゃんときくよ!」


 嫌われてないと分かって飛びついてくるのはいいが、後で服を洗わないとべったべたになっちゃったな。さっきピーリィは直接手でジャム舐めてたの見てたから分かってた。分かってて呼んだから無問題!



「では、そろそろ朝食になりますので、2人とも中へいらして下さいね」


「あ。すみませんすぐ片付けて行きます!」


「ごめんなさい!」


 突然トニアさんから声を掛けられて驚いたけど、慌てて2人揃って謝る姿を楽しそうに見てから、居住袋の中へ入っていった。やっぱり時間オーバーしちゃったか?ピーリィを叱ってもこれじゃしまらないなぁ。




 片付けてから皆と一緒に朝ご飯を食べて一息入れる。

因みに朝ご飯はオムレツとフレンチトーストとサラダの洋風セット。


 今日の予定は、ユウとベラは明日の出発に向けて備品などを騎士団宿舎で分けてもらいに行く。俺達はまた隷属化された人を解放するためにいつもの広間へ行く。

 午後からはゆっくりと俺達と過ごせる時間を貰っているので、そこで俺から渡したい物を作っておいたので、その説明の時間を取らせてもらう事にした。


 説明には実際にユウ達と共に出発する臨時編成の護衛団の責任者も招いて聞いてもらう予定だ。そこには皇女様とビルモントさんも加わる。陛下や他の面々は政務に忙しくてとても悔しがっていた。それが昨日の晩ご飯の話だ。



「じゃあ予定通りいきますか!ユウとベラは昼から合流でよろしくね!」


「分かってるって!すぐ終わっちゃったらそっちに行くよ」


 そう言ってユウがベラを伴って城の外へ向けて歩いて行った。俺達はいつもの案内係に連れられて広間に到着すると、今日は1人以外全員女性で人族の女性2人を含んだ8人と報告を受けた。


「では、すぐに開始します。1人ずつ連れて来て下さい」


 姫様に言われたメイドさんはすぐに退室し、獣人女性を2人が支えながら連れて来て簡易ベッドに横たえた。準備が出来た所で衝立の外にいる俺に声が掛かり、気合を入れ直してとりかかっていった。




「ふぅ。今日はここまででしたよね?」


「はい。皆さん思ったよりも悪くない状態のようでなによりでしたね」


「そうですね。皆、家に戻れるのを喜んでましたしね」


「今までお救いした方の中には帰る家の無い者もいましたが、そういった方は陛下が城で雇うとおっしゃってました。ただ放り出される者がいないというのは安心出来ますね」


 へぇ、陛下はそこまで指示してたのか。

家がない人がいるってのは考えてなかったな。


 姫様と話してる間に粗方片付けが終わったようで、

今日はここまでだとお礼を言われて広間を後にした。




 昼ご飯は案の定皇女様が待ち受けていて、今日は俺の我儘で炒飯と餃子と担々麺にさせてもらった。ゴマ味噌と挽肉と自家製ラー油を合わせた俺の力作だ。ルースさんにも送ってあるから感想が気になる。


 あ、餃子はニンニク無しにしておいた。ちょっと物足りないけど、皇女様にニンニク臭をさせるわけにはいかない。あと、匂いで陛下達に何か言われるのも怖いからね!

 担々麺の辛さは各自好みで決められるようにラー油をテーブルに置いていた。俺が結構入れるのを見てびっくりしてたけど、ユウとビルモントも辛い方が気に入ったみたいだった。


「味の付いたオコメも美味しいですわ」


「自分はこの辛いパスタが濃厚で素晴らしかったですね」


「お話には伺っておりましたが、未知なる調理法にも味にも驚かされてばかりでした。ありがとうございます」


 皇女様とビルモントさん、そして今回の護衛団長に任命された騎士さんがそれぞれ食後のお茶を飲みながら感想を言い合う。気に入ってもらえたのならよかった。麺は特に自信あったから嬉しいね。



「それでは時間もない事だし、道具の説明を始めて頂けますかしら?」


 散々ご飯の話をしたら満足したのか、

皇女様が本来の目的を思い出したようだ。 




 テーブルの上を片付け、部屋の一部を広くするためにイスとテーブルを端に寄せてもらってから今回の道具の説明をさせてもらった。


 当然居住袋は今は見せないし説明していないが、大容量の鞄と浴槽と簡易トイレ、そして各種用途別の袋の説明をしていった。用途別に色違いにしてるからまぁ間違えないだろう。

 浴槽のお湯の準備は同行する騎士にそういう生活魔法と呼ばれる魔法の使い方の上手い団員を入れているので問題ないとのこと。

 あとは男女別に使えるようにする衝立と、風呂トイレを覗かれないよう女性の交代監視を強化をしておく必要があると問題点を挙げていた。


 一応護衛団用と護衛対象の獣人達の荷物を入れられる収納鞄も渡して、表向きは陛下からの貸し出し品として護衛団が管理責任を持って後ほど返却する旨も説明しておいた。


「なるほど。こういった道具があったからこそ馬車が少なく済むのでしたか。通常であれば輸送時に必要な食材や道具で場所を取られてしまいますからね、この話を聞いて納得出来ました」


 団長さんも実際に鞄に色々出し入れして確かめて、

実際の容量を聞いて驚きながらも笑っていた。



 先に護衛団に預ける分は渡して、誰でも開けられてしまう事をもう一度注意しておいた。そこでふと、思い出した方法でゴミやトイレ用の袋を作り直させてもらって、再度説明をさせてもらった。


「ゴミとトイレ用の黒い袋はちょっと改良しまして、この袋は一度開いて閉じると12時間…半日後には袋は消えます。なので、使用後に閉じたら穴を掘って埋めて貰えば後は自然と土に還るってわけですね」


「じゃあ間違って閉じちゃったらもう使わない方がいい?」


「開いた状態にしておけばカウントが止まるから大丈夫。閉じた状態で12時間経ったら消えるようにしてるだけだよ。まぁこれは団長さんとユウとベラが知っていれば大丈夫でしょ」


「ああ、そういうことか!へぇ〜面白いね」


 ユウが袋を見て感心している。

試しに開けて閉じたらカウンターが見えてびっくりしていた。


「浴槽や予備の袋の管理はユウとベラ専用の鞄に入れるから、しっかり管理しといてね。この鞄は2人にしか開閉出来ないよ」


「うん、わかった!」


「わかった」


 2人に再度説明してそれぞれの道具を袋に入れる。浴槽は一度大きな袋に収納して、それを丸めて鞄に入れた。これなら鞄の口を広げる必要がないから簡単だ。



「あの、ヒバリ。よろしくて?」


「はい、なんでしょう?」


「ワタクシの鞄はいつ作ってもらえるのかしら?」


 高圧的にならないように気を付かってか、おずおずと皇女様が聞いてくる。

そういえばまだ陛下と宰相さんの分しか作ってなかったか。


「お待たせして申し訳ありません。それでしたら明日2人の出発を見届けてからお作りしましょうか。それと、皇子様と皇后様にも約束してますので、お二方の御都合もお聞き頂けると助かります」


「分かりましたわ!では、明日はまずワタクシの鞄を頼みましたわよ!」


「はい、必ず」


「では姫様、我々も戻りましょう。この後の面会予定は伯爵家令嬢の――」


 皇女様は満足したのかビルモントさんの話に頷きながらも機嫌良さげに退室していった。護衛団団長はこちらにきっちりと頭を下げてきびきびとした動きで退室していく。 





 堅苦しい話が終わった所で隣の寝室にいた沙里ちゃんと美李ちゃんとピーリィを呼んで、新しくお茶を淹れ直してから皆に声を掛けた。



「さて、じゃあここからはお楽しみの新しい機能の発表をしたいと思います!どんな物かは一部さっき見せちゃったけど、ここでちゃんと報告するよ!」




 一応ルースさんにも伝言メモ入れておいたけど、今はまだ反応がない。話しているうちに通話出来るといいなと思いながら、袋詰めスキルのレベルアップの発表を話した。



予定では次話かその次辺りでこの章を〆ます。

引き続き拙作をお読み頂けたら幸いです!

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