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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第11章 帝国と天人教
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再度、商談と買い物

申し訳ありませんが、ちょっと忙しく時間が取れず更新が遅れています。


今回も拙作をお読み頂けたら幸いです。

 その朝は正座から始まって……は、いなかった。



 夕べ遅くまで色々作っていたため、早朝では魔力が回復しきらなかったのだ。寝ている状態が一番回復効率がいいので、一度起こされたけど居住袋の中に移動してすぐ寝かしつけられたのだ。


 お説教は、この後のお楽しみと言われている。とにかく急いで作っておいた物を近くにいたパルミエさんを呼んで説明しながら手渡して、すぐに布団に戻って大人しくしておいた。


 このあと説教だなんて、考えると怖いのでさっさと二度寝したわ!




 午前中は申し訳ないが隷属開放を休ませてもらって、まずは厨房で沙里ちゃんとトニアさんが中心になって炊飯やだし取りのおさらいと、夕べも作った親子丼を教えていたらしい。

 元々醤油や味噌、マヨネーズなどはあったのだから、そこにだしを使ってちょっとだけ方向の違う料理になるだけだ。料理人達も厨房を任されたプロ集団だけあってすぐにものにしていったそうだ。


 俺はピーリィの見張りと言う名の添い寝で、ずっと寝ていただけだ。お陰様で昼前には動けるようになり、当初の予定通り午後はまた商人ギルドへ向かっている。

 今日は皇女様一行はおらず、ユウとベラを含めたパーティフルメンバーで帝都の中馬車を走らせていた。昨日の件を教訓に、今日はトニア・ベラ・ピーリィの3人にはカモフラージュで獣人の姿は見せないようにしてある。



 まだ寝ているピーリィを抱きかかえてダイニングキッチンのソファへ移動して、沙里ちゃんに貰ったお茶を飲んでまた寝ころんでいた。

 それからピーリィも起きたので居住袋から馬車に出て、そこで姫様のお説教がをしっかり受けた。謝罪もした。それがやっと終わったと思ったけど、まだ許してくれてないみたいだ。


「もしフィーネさんの旦那さんが今日来てたなら悪い事したなぁ。何とか戻ったらそっちに回りたいね」


「体調次第では許可しますから、まずは大人しくしっかりと回復なさって下さいね?次に忠告も聞かずに倒れられても知りませんからね」



 うーん……姫様、まだ機嫌悪そうだ。


「そりゃぁヒバリに無理させないって約束取り付けたのに、当の本人が勝手に無茶して倒れてるんだもん。怒るのも当然だよ。もっとちゃんと謝っておかないとまずいよ〜?」


 でも気遣って馬車じゃなく居住袋の中に戻らせてるから大丈夫だよ、とユウが俺の身元でこっそり呟く。そうだったらいいんだけど。




 そうこうしているうちに商人ギルドに到着し、馬車は看板取り付けのために車庫へ移動して欲しいと言われてトニアさんがそのまま動かして行った。

 俺達は先に案内人に声を掛けると受付を通さずに昨日と同じ奥の商談室へ案内された。ここでも大きな声を出さないでそっと連れて行ってくれるのは助かる配慮だ。 


 ちなみに、ここに到着する直前に3人のカモフラージュは解いてある。ここなら色んな種族がいても誰も気にしないし、トニアさんとピーリィは昨日も来てるから急に変装なんてしていたら不自然過ぎるしね。


 商談室に入ると、昨日と同じくタイラット副長とキュイッシュ補佐が立って出迎えられ、今回も他の人は入れないでくれていた。


「本日もようこそお越しくださいました。おや、今日はまた別の方をお連れでしたか」


「え、ええまぁ」


「そう何度も皇女様を連れまわすわけには参りませんから。それと、早速看板の修理と取り付けをして頂き、ありがとうございます」


 ピーリィには大人しくしてもらうように言ってあるけど、看板の修理と聞いた途端ありがとー!騒いでしまい、仕方なく俺の上に座らせて、せめて動き回らせない方向で落ち着かせる。


「すみません、ちょっとこの後の予定が押してるので、さっそく商談に移ってもいいですか?」


「はいはい。私としてもすぐに始めたいと思っておりました。時間は有限ですからね!」



 ここからは美李ちゃんとピーリィには子守唄になるであろう商談が始まる。昨日の匙やレードルの前向きな返答をもらい、それに合わせただしのレシピをいくつか渡しておいた。

 それと寸胴も同規格品にして内側に目盛りを彫り込んでもらい、食堂や大所帯用としてレードルで量らなくてもいい物の開発もお願いした。

 それに合わせてこれからカロナードから送られてくる乾燥昆布も1本もの・20L用・10L用・5L用の大きさで予め加工してしてもらってはどうか?と提案し、1本もの以外の大きさの目安の型紙を渡してみた。


 その後、城の厨房ではゴルリ麦の炊き方、だしの取り方、豆腐の作り方を教えていて、見ながらじゃないと難しいがレシピだけ先に渡しておく。

 あとは城とギルド紹介の料理人で勉強会を開いてもらって広めて欲しいと言ったら、これらの調理技術やレシピは幾らで売ってもらえるのかと聞かれてきょとんとしてしまった。


「いえ、ですから、これらは新たな商売になるわけですよ。そのやり方だけ教えて報酬がなかったら、ラーク商会は何を売って儲けるつもりなのですか?」 


「あー……カロナードでも言ったんですけど、自分で昆布を調達するのも面倒だから市場に出てくれればいいなと思ったのが発端なんです。ゴルリ麦も美味しい食べ方が分かったらもっと大々的に市場に出回るでしょう?現状はかき集めるだけでも大変なんです」


「それに、だしや炊飯などのレシピは陛下が報酬を下さいますし、帝都どころかこの大陸に普及させて欲しいと言われております」


 あ、そうだった。陛下から報酬貰えるんだったな。そっちの方はすっかり忘れてたよ。スキル袋の道具も合わせてどれくらい貰えるんだろうなぁ?


 そんな風に姫様のフォローを受けながらも商談は続く。看板の取り付けを見届けたトニアさんが合流し、ユウがベラに寄りかかって寝てしまっても商談を続けた。




「よし、これで他にも欲しい物が出来た!ブレンダーが魔道具であるなら、同じく魔道具で精米機や粉末を作るミルが欲しい!まぁミルは最悪石臼でもいいんだけど、茶葉だけじゃなくて煮干しや昆布も粉末にしたいから魔道具で欲しいなぁ」


 商人ギルドを出た後は忘れないうちに獣人3人にカモフラージュを掛けて、帰りは道を覚えたユウとベラが御者台に座って馬車を走らせている。

 出発前にピーリィが直った看板を見て大はしゃぎだったのはまぁ仕方ないだろう。そんなにあの鳥の絵が気に入ったのか。



「魔道具となると、また工房を探さねばなりませんね。ここは帝都ですから良い職人もいるでしょうし、どなたかに紹介してもらいましょう」


「となりますと、皇族の方々か商人ギルドからでしょうか」


「あ、それならさっき聞いておけばよかったか。失敗した」


「しょうがないですよ。今から引き返していたら日が暮れちゃいます」


 美李ちゃんとピーリィが畑仕事をしに行っている間、俺と沙里ちゃんはせっせと食材加工のストックを増やしていた。特に最近は魚の消費が激しかったから、捌いて切り身や寿司ネタにして保存していく。


 今日はこの後市場に行ってみる予定なので、商業区と一般居住区の間にある市場は商人ギルドから近い。実際、行き帰りの道から少し西にずれるだけだ。昨日は東にずれて危ない橋を渡っちゃったけど。




「おー!夕方前だからどうかな?って思ったけど、結構賑やかだな!」


「屋台も多いですね!」


「おいしそーなにおいがするー」


「あたしもお腹空いたかも」


「この時間は家の者が晩の食材を買いに来るので、一般家庭向きの商品が多いようですね。店用の卸売りもありますので、そういった店を探してみましょう」


「みてみて!総菜コーナーみたいのもあるよ!」


「量り売りの、美味しそう」


 途中のトニアさんの説明聞いてたかな?

まずは俺達のストックを増やすために卸売りの店探すんだよ?



 なんて言いつつも、結局匂いに負けて皆で屋台の串焼きを頬張る。ああいう焼いた匂いはずるいよ!絶対気になるじゃん!


「この焼き鳥、ちょっと味が濃いかなぁ。砂糖と醤油の組み合わせはいいのに勿体無い。ああそうだ、キャベツと一緒に食べよう」


 鞄から野菜炒め用にカットしてあるキャベツを取り出して焼き鳥と一緒にもしゃもしゃと食べる。うん、これくらいで丁度いいな。皆も欲しがったので、どんどん串に刺してあげるともしゃもしゃと食べていた。



「って、そうじゃなくて。食材を買い込みに来たんだった!」


 散々色々食べ過ぎたせいで今日の晩ご飯はかなり少なめでいいんじゃ?って思えるくらいお腹が満たされている。3件はしごはやり過ぎたな……


「食材店の位置は聞いておきましたので、そろそろ向かいましょう」


 俺達が食べ歩いている間にトニアさんが聞き込みをしていたそうだ。

いつの間にと思うと同時に一緒に騒いで目的忘れててすみませんでした!




 結局日持ちのする穀物やこの時期収穫されるため大量にあった野菜を購入しまくって、相変わらず馬車に運んでは中で居住袋内の倉庫直通収納袋に人海戦術で押し込みまくった。

 まあ、未だに生魚はそこまで出回ってない上にこの時間では干物も含めてすべて売り切れていた。どうしても魚介類が欲しいなら、直接カロナードへ買い付けに行った方がいいかもしれない。そこはこれからカロナードの町の勢い次第ではもっと流通するのかな?


「あまり売れないらしいからゴルリ麦が手に入るのはいいけど、やっぱり大分古い物が多いなぁ。まだ収穫時期じゃないらしいから、今言っても仕方ないか」



 この大陸でも大幅な気温差は無いものの四季はある。その中でも今は初夏に当たるわけで、これから徐々に気温が上がってきている。

 ゴルリ麦というか米の収穫は秋だから、まだやっと田植えが終わった辺りになるんだろう。さっきの八百屋もトマトがこれからで、大豆になる前の枝豆や胡瓜が出回り始めたと言っていた。

 ただ、この世界のボートフォート大陸には四季があると言っても年の変わる季節は冬ではなく秋。大量に収穫のある秋を新年として讃えて大地へ感謝をし、盛大に騒ぐそうだ。


 季節としては6月だが、秋を新年と考えるここでは今は9月になる。なんて考えるとなんだかややこしいな……ここは、その場所に従って9月だと理解しておけばいいか。



 そんなわけで、思ったよりも野菜が買えたのは嬉しい誤算だったが、魚介類は陛下から今回の諸々の報酬の中に入れて貰った方が早いかもしれない。


 なんてちょっと思考が脱線しかけてたけど、買った物を全て積み込んだ辺りで現実に意識が戻った時には店の従業員達が並んでいた。一気に買い漁ったせいか、帰る時はその全員が元気よく送り出してくれてちょっと恥ずかしかった……道行く人達もこっち見てたし!


 ……流石に大量に買い過ぎたかな?でも、越境中も城でも色々使い過ぎて不安だったから仕方ない。仕舞っておけば劣化しないからどうしても抱え込んじゃうんだよなぁ。


「職場でこんな事やったら始末書モノだな」


 なんて、御者台で1人にやついて呟いていたら、

隣のトニアさんから訝し気な視線が向けられてる。


「いやえっと、必要な分を必要なだけ仕入れて余分な在庫をほぼ持たないっていう管理方式の職場だったんで、こうやってやたらと抱え込むのは厳禁だったんですよ。それが今じゃこれだし」


 ト○タ生産方式なんてこっちにはないだろうなぁ……


「それが可笑しかった、と。普通はそういった管理が必要なのでしょうね。ヒバリさんですと場所も取らない食材が腐らないとなれば……こうなるでしょう。それでしたら、こちらは自分に任せて頂いて構いませんので、沙里さんの手伝いをされてはいかがですか?彼女1人に整理させるのは少々酷かと思います」


 この世界に来てからだと4人の異世界人の中では俺が一番力弱いんだけど、そういう問題じゃない、よねぇ。俺もいた方が追加で袋を用意するのも位置決めもやり易くなるはずだし。


「じゃあすみませんが運転お願いします」


「はい、お任せ下さい」




 その後は沙里ちゃんと2人で食材ごとの収納を増やしたり容量の少ない袋を入れ替えたりとなんだかんだで結構な時間をかけて整理していたため、終わる前に城に着いてしまった。


「残りは晩ご飯の後にしよっか」


「そうですね。ほら、美李もピーリィも起きて」


 今日も畑仕事をしていた2人は、戻って来てからダイニングのソファで休んでいたけど、そのまま仲良く寄り添って眠っていた。途中で気付いた沙里ちゃんが毛布を掛けてあげたら2人して見事に包まって蓑虫が出来上がりだ。



 そんな起こされた2人はまだぼーっとしたまま毛布から出ようとしないので、結局そのまま抱きかかえて馬車から顔を出して、何とか入城確認をしてもらった。



 力が弱いと言っても、俺だって多少はあるから余裕なんだよ?


 って、誰に言ってるか分からないな。





 さて、今日の晩ご飯は俺達の分だけ作ればいいのかな?それとも、

また皇族の方々が来るのかな?出来れば作る前に連絡が来るといいなぁ。



 あ、それよりも先に隷属化された人達の解放をしなくちゃだった!やっと体調も良くなったしどうせ魔力は休めば回復するものなんだから、少しでも早く解放してあげないと!





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