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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第10章 ノロワール帝国と皇族
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皇帝陛下からの依頼

 現在、応接の間に残ったのは皇族の3人と宰相、そしてその従士達。そして俺と姫様とトニアさん。他の皆は今夜泊まる部屋へと案内されて行った。



 応接の間では、今回の首謀者の大臣2人の処罰は罪状が全て暴かれてからだと、家宅捜索と言うやつを開始している話をしていた。



「今頃は第3騎士団が張り切って奴等の住処を漁ってるだろうよ。ここでいいトコ見せれば第2や第1騎士団へ繋がるかも知れねぇから、そりゃぁ張り切るだろうさ!」


「第3騎士団は、その上に辿り着く可能性のある、いわば候補生なのですよ。他を蹴落とすような品性の無い行動は自身を貶めると理解している者達なので、純粋に悪事を暴いて懲らしめる為に動いていると思います」


「ってわけだ。結果が出るまでまだ時間がかかる。手が足りねぇんだ。だからこれは報酬を出すから、是非とも引き受けてくれねぇか?」



 トルキスでの事を詳しく説明させられてしまった。

そして見事に捕まってしまった。主に自分のせいで。


 "これ"の報酬とは、勿論隷属化解放の手伝いの件。



 いや、俺だって隷属化された人達を解放したいってのはあるけどね?でも人数が多すぎじゃないかな!?何回魔力欠乏で倒れればいいか分からないでしょ……あれ、気持ち悪いんだよなぁ。


「こっちも色々やらねばならん事が多いんだよ……まずはただの簡易鑑定珠だと偽って、全員を原典に触れさせて残党を炙りださねぇと安心出来ん。ただ、壊される事はないが盗まれたら目も当てられんからなぁ。それなりの人員を配置するしかねぇだろ?」


「それに、解放の魔道具も扱える者が極端に少ないのですよ。ただ適正と魔力が高いだけではこちらも盗まれたり良からぬ事になりかねません。そしてなにより、」


「数人が頑張っても1日1〜2人が限度、ですか……」


「そうだ。だからこそ、たった数10分で5人を解放したと言うヒバリには是非とも手伝ってもらいたい!騎士団の連中は後回しでいいが、弄ばれた者達は一刻でも早く解放してやらねぇと、早く家族の元へ帰してやらねぇと!」


 テーブルの上で握られた陛下の拳が震える。

宰相も他の皇族も姫様達も、静かに見守っていた。


 ヒバリは、トルキスの貴族の屋敷地下で発見された女性達を思い出していた。それに、やっとのことで商売の準備をしてアンリの街を訪れたのに、全てを奪われた獣人家族の事も思い出していた。


 気付くとヒバリもテーブルの下で拳を強く握っている。

深呼吸して力を抜き、拳を広げて自身の手を見る。


「……わかりました。最低でも騎士団員以外の解放は最優先で頑張ります。残りは余裕があったら手伝いましょう」


「そうか!よく引き受けてくれた。感謝する」


 またも安堵の溜息と頭を下げる皇帝陛下の姿を見せられた。もうこれで何度目だったかなぁ?分からないや。



「皇帝陛下も姫様も頭を下げ過ぎですよ。国の頂点に立つ人達なんですから、そこまでしなくてもいいです。それに、報酬ももらえますからね!」


「頂点に立つ者だからこそ、下の者がしでかした責任を取るんだよ。それが出来ないなら上に立つ資格はねぇさ。そして、自分が導いたならその結果もきっちりと責任を持たなけりゃただの独裁者だ。あいつ等みたいにな」


 あいつ等と言うのは大臣達の事だろう。 

皇帝陛下は、なんか、カッコいいな。


「独裁者にならないように歯止めをかけるのも私達の仕事です」


 確かに、2人のやり取りには信頼関係が見られる。

皇帝陛下の相棒はきっとこの宰相なんだろう。



 だけど……


 宰相さん、あなたも俺の髪に触る時一緒に暴走してましたからね?

ブレーキ役ならちゃんとあの時もすぐに止めてくださいよ!



「それとな、」


 一つ間を置いて、皇帝陛下が語る。 


「後は俺個人の話だが、獣人達は俺が冒険者になって旅をしてた時に世話になってな。その恩返しが出来たらと、獣人達が集まって作った国、ニューグロー共和国と帝国は表立って同盟も結んでいるわけだ。

 そこへ俺の部下が恩を仇で返す真似を仕出かした……一刻も早く解放して家族の元へ送ってやりたい。ただ謝りましたで済む問題じゃねぇんだよ」


 皇帝陛下……いや、昔の話みたいだから当時は皇子かな?その皇子が冒険者だったってのはちょっと突っ込み入れたいけど、それは後ででいいや。


「豹人族である私も、当時の陛下の冒険者仲間だったのですよ。この国で騎士として仕えた当初はそれはやっかみを受けたものです。特にあの天人教が活動を盛んにしてから酷いものでした」


「そんな事言ってお前、全部綺麗に返り討ちにしてたじゃねぇか」


「私だってむざむざやられたくありませんからね。力を付けてここまで来たのですから、文句はないでしょう?それに陛下は、今回のノーザリス殿下と同様に、私がこの地位まできた時も陛下に害を及ぼす輩を炙り出して徹底排除なさったではありませんか」


「それぐらいやれねぇなら皇帝は続けられねぇよ。この手の阿呆は狡猾に来やがるから、やれる時にはきっちりやらねぇとな!」


「同感ですな」


 ハハハと笑い合う2人。


「父上、サリス達を置いて会話をしていては本末転倒もよいところですわよ?」


「おお!悪かったな、そういうつもりじゃぁなかったんだが。とくかく、さっそく明日に保護した者達を集めておくから頼むぞ!」


「報酬に関しては今日中に書面にてお伝えしますので、後ほど確認して下さい。では、他の皆様と同じく用意した部屋でお寛ぎ下さい。長い時間お疲れ様でした。」



 これで難しい話は終わりとばかりに宰相が手を1つ叩いた。それを合図に部屋の扉が開かれ、各々の従士が主の前後に付いていく位置を取る。

 まずは俺を先頭に姫様達と退出、その後を皇女、皇子、皇帝が続く。何故か、宰相以外が続いてくる。俺達が先導しているみたいな形になっている……



 ちょっと待って。


 俺達の用意された部屋って、まさか、皇族の私室の近くなのか!?



 振り返るとまだ同じ方向を進む皇族一行。俺達を案内する騎士さんにそこの所を聞こうとしたら、前から美李ちゃんがてててーっと駆け寄ってきた。その勢いのまま俺の左腕を捕らえ、ぐるっと左に1回転させられた。


「ほら、走ったら危ないよ?」


「えへへ、ごめんなさーい」


 回ったことで勢いが止まり、そのまま美李ちゃんが左腕に掴まった恰好で落ち着いた。悪びれる様子はないけど、もう走らなそうだからまぁいっか。


「ヒバリおにいちゃん、あのね、今日のごはんは何にするの?さっきね、ルースさんがお寿司か和食がいい!って言ってたの。だからお姉ちゃんは和食で何がいいか聞いて来てって言われたの!」


「寿司も和食なんだけどなぁ。それに、この間も寿司だったのに、どんだけ気に入ったんだか」


「毎日お寿司だなんてご馳走だよねぇ」


「あら、私もトニアもスシは大好きですよ?ああいった食べ方は初めてでしたが、ヒバリさん達の国は美味しいものが多くて楽しいです」


 ほー。姫様も生の魚気に入ったのか。トニアさんは猫人族だから魚料理は

大好物なのかな?って勝手に思い込んじゃうけど、仕方ないよね?



「あの、少しよろしくて?」


「はい?」


「どうしました?ヴァシュリー」


 俺のすぐ後ろ、姫様の横を歩いていたヴァシュリー殿下……もう呼び方が殿下か皇女か分からなくなってきたな。姫様も殿下って呼ばれるし、これからは勝手に皇女って呼ばせてもらおう。怒られたら戻せばいいや!



「今の話から察するに、給仕はヒバリ達召喚された者達がなさっているのかしら?」


「トニアもしますが、料理を中心にほとんどをやって頂いています。特に沙里さんの固有スキルは給仕に特化しているため、ご本人が進んで行って下さってます。いつも感謝しております」


「ヒバリさんも料理や調理器具に関してかなり詳しいので、様々な品をこちらでも再現なさっています。ヴァシュリー殿下が召し上がられたパンケーキもヒバリさんから教えられました」


 皇女の問いに姫様とトニアさんが答えると、

皇女は少し考えてから提案と言うかお願いをしてきた。


「もし迷惑でないなら、先程のスシ?とおっしゃってた料理、ワタクシにも用意出来ないかしら?ヒバリ達の世界の料理、とても興味がありますわ!」


「んー……人数が増えたとしても材料は足りると思います。でも、寿司は生魚を使った料理ですけど、大丈夫ですか?抵抗ありません?」


「えっ?魚を、生で口にするのですか?」


 やっぱり帝国でもその風習はなかったか。

皇女が目を丸くして驚いていた。


「消毒の魔法を使ってから調理するので、お腹を壊す事なく安心して食べられますけど、生魚がダメと思うならお勧め出来ません」


「そうですの……迷いますわね」


「私としては是非召し上がって頂きたいです。ニホンの料理をワショクと呼ぶそうですが、繊細な味がとても品のある味ですよ」


 姫様に言われて「まぁ!」と明るい表情になった皇女だが、そこに突然大声が割って入って来た。それは、後ろにいた皇子や皇帝だったわけで。


「話は聞いた!つまり、ヒバリはこの世界でもニホンの料理を作れるって事だな!?そのワショクをこの場でも再現出来るって事だよな!?」


「え、えぇまぁ。この世界にも醤油や味噌があったのと、こちらで見つけた食材で色々と試行錯誤したので。あ、ちなみに応接間で陛下にお出ししたお茶もこっちへ来てから再現した日本茶ですよ?」


「待ってくださいヒバリ殿!わたしはそれを頂いていませんよ!?」


 いやだって、紅茶と緑茶を用意したけど、俺以外陛下が興味持ってくれただけで皆はいらないって言ったじゃん。陛下が美味しそうに飲んでくれてた横で誰も見向きもしなかったのに。


「そういった事は説明して欲しかった……」


「ってわけだ。俺にもニホンの食い物を頼む!」


「父上、今はワタクシがその話をしてましたのに、横から突然ずるいですわ!」


「わたしだって!可能であれば頼みます!」


 何故か廊下で親子喧嘩が始まってしまった。

しかもよく見れば、従士の人達も各陣営に分かれて応援してる。


 なんだこのカオスは!?



「でしたら、皆様も私達と一緒に召し上がれば良いのでは?」


 が、その争いも姫様の一声でぴたっと止んだ。

まぁ、それしかないよなぁ。分かってた結果だし。



 そこからは食べられるならと希望者が……いや、ここにいた全員が手を上げて人数を確認していた。皇族3人と各従士が2人ずつの9人分追加か。倍の人数になっちゃったよ。沙里ちゃんごめん。


「あの、ヒバリさん。勝手に話を進めて申し訳ありません。この場はこうするしか思いつかなかったもので」


 って、小声で姫様が謝ってきたけど流石に分かってた。


「皇女様が興味を持った時点でこうなるかなーって思ってたんでいいですよ。ただ、先に沙里ちゃんに説明しないとまずいかもですね」


「あ、じゃぁあたしがおねえちゃんに言ってくる!」


 まだ俺の左腕にぶら下がっていた美李ちゃんが、

来た時と同じようにだだー!っと廊下を走って行った。


 ……誰も注意しないからいっか。




 そこからは寿司は一度に大量に作れないために準備が必要だと説明したら、是非ともその調理過程も見学させてくれ!と熱望されてしまい、ついでに皇女の侍女らにも教えてあげるって事で話が進んでいた。


「あのー、確認しておきたいんですけど、俺達に用意してもらった部屋ってこの人数入り切るんですか?」


「「「…………あ」」」


 またも静かになる皇族一行。



 あ、これまったく考えてなかった顔だ!




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