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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第10章 ノロワール帝国と皇族
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離れへの襲撃

お盆週間も後半戦に入りました。

生き残りたい……!

 今はまた離れの部屋に戻っている。



 そして侍女2人は沙里ちゃんが米…ゴルリ麦の炊飯を教えているのでキッチンへ。俺も何かしようとしたけど、美李ちゃんとピーリィを加えた3人が疲れただろうから休めと気を遣われ追い出されてしまった。

 多分さっきの皇女様達の態度の事を言ってるんだろう。むしろ、一番きつかったのは女性陣の受け答えだったんだけど。蒸し返したくないから絶対言わないけどさ!



「皇女様に袋の拡張とかは言わなくてよかったんですか?」


「まだ切り札はひとつでも多く持っていた方がいいですから、あの場では明かさなくてよいと判断させて頂きました。本当でしたら、魔法の方も明かすつもりは無かったのですが、私が未熟なせいで……」


「俺もあの皇女様はこちらに危害を加えるとは思えなかったんでいいですよ。だから袋の事ももっと教えるのかなーって」


「姫様の仰る通り、これ以上の情報公開は行き過ぎです。例えヴァシュリー殿下は信用出来ても、周り全てが味方するとは限りません。もし殿下が口を滑らせても切り抜けられる隠し玉は必要です」


 俺の希望で冷たい緑茶を用意してくれたトニアさんも、

相変わらず座らなかったけど俺と姫様の会話に加わった。



「今回の面会は概ね成功と見ていいでしょう。ただ、ヴァシュリーも言ってましたが、どうやらここも不穏な雰囲気があります。これをご覧下さい」


 姫様の話に合わせてトニアさんが小さな紙をテーブルに広げる。

そこには幾人かの名前と第5騎士団と書かれていた。


「ここへ戻る際にビルモント卿を通じてヴァシュリーから受け取った物です。この名前に警戒しなさいとおっしゃっていたそうなので、ヒバリ様に覚えて頂き、近づく人物が当て嵌まった場合は知らせて頂きたいのです」


 すっとこちらにメモ紙を差し出してきた。

受け取って改めて内容を見る。



   フェルデン・サントノレア公爵 外交大臣

   メルバ・パーター侯爵 商務大臣


 ……結構なお偉いさんじゃないか!?

どっちがどう偉いか分からないけど、男爵や子爵よりは上だったはず。



「これ、こうしゃくってどれくらい偉い人なんですかね?」


 聞くのは嫌だったけど、一応聞いてみた。


「大臣は皇帝、宰相に次ぐ重鎮です。公爵と侯爵も同じですね。皇族に次ぐ上位に就く家で、公爵のすぐ下が侯爵になります。余談になりますが、侯爵から下が伯爵・子爵・男爵が大まかな順位になります」


 トニアさんに言われ、やっぱりとんでもなく偉い立場の人って事だけは分かった。正直関わりたくないけど、それを言ったら姫様や皇女様はそのトップに君臨する人達なんだから今更かぁ。


「その紙は鑑定が出来るヒバリ様がお持ち下さい」


「えーっと、分かりました」


 袋付与をしてある腰のポケットにメモを仕舞い、この話はここまでと言って姫様は手を合わせる。じゃあ俺も晩ご飯の支度の手伝いをしてくると言って席を立った。


 皿を並べるくらいしかやることなかったけど。


 ユウとベラはソファーで仲良く寝ていたのでトニアさんが起こし、侍女2人には部屋の外で見張ってくれてる2人に交代で食べられるように世話をしてもらった。

 今回は寿司だから、手を拭いてもらえば素手で食べられるからいいかな?なんて思ってたけど、まずは帝国でも生魚を食べる習慣がほぼない事が少し苦労した。どうしてもダメな人は焼いて出す事にしていざ食べ始めれば、結局は追加をねだられて、今日だけ特別と念を押して食べさせた。


 次は侍女2人が絶対に覚えたいと言って沙里ちゃんに炊飯と酢飯を何度か教わっていたから、ついでとばかりに食材ストックとさせてもらった。

 勿論ルースさんに送る分も忘れてない。あの人寿司好きになっちゃったし、俺達が今日食べたのに送らないで知られた日には怖いからね!



 途中で侍女たちから皇女様にも食べさせたいから袋に詰めて欲しいと土下座する勢いで懇願され、これも今回だけだと言って2人の魔力に触れさせてもらって、俺達以外は2人にしか開閉出来ない袋だと説明した上で、酢飯と消毒して寿司ネタに切った刺身の袋を渡した。醤油はこの世界でもあるし、それくらいは自分達で用意してもらおう。




 食事も終わり侍女2人も隣の部屋へ行った。女性陣は交代で居住袋の中の風呂へ、俺は備え付けの1人用の浴槽を使わせてもらった。ピーリィ達に乱入される前にさっさと出たので今回は何事もなく済んだ。


「ぴゅぃ〜」


 沙里ちゃんのドライヤー魔法で乾かしてもらったピーリィを、今度は俺が手櫛で梳く。ちょくちょくやらせてもらってるから、今は引っ掛けて痛めるような事態にはならない。ベッドの上で胡坐をかいた俺の上に座るピーリィは、気持ちよさそうに背中を預けてきた。

 美李ちゃんも沙里ちゃんのドライヤーが気持ちいいのか、段々と瞼が落ちそうになっていた。こちらもピーリィが同じ状態だ。可哀想だしこのまま全員の入浴が終わるまでは寝かせておこう。



 全員で居間に集まって、風呂上りのアイスティを飲みまったりと寛ぐ。


「では、今日の夜番を決めてしまいましょう」


「あ、それなんだけど、今日はボクもベラも寝ておいたから、ボク達で交代してあたるからいいよ!」


 あれってただ眠くて寝てたんじゃないのか!まさかそんな理由があったとは……だらけてると思っててごめんなさい。


「ではお任せします」


 話を切り出したトニアさんだったが、2人の理由にも納得してすぐに〆た。



 夜番の2人と俺はこのまま居間と寝室で、残りのメンバーは居住袋の中で寝る事にして、そのまま眠りにつく。夜は何事もなく朝を迎え、身動きが取り辛い感覚に目を開けると、案の定ピーリィが俺の上で丸くなって寝ていた。


「……結局こうなってたか。まぁいいや」


 まだ明るくなり始めたばかりの窓の外の空をぼんやり眺めながらピーリィの頭を撫でようと手を持ち上げかけた時、


「ヒバリ!外、何か来る!」


 開けっ放しの扉の方からベラがそう叫んできた。



 ベラには居住袋の中の皆を起こしてもらい、俺もピーリィとユウを起こしてから扉の外の見張りに事情を説明する。昨日レーダーマップの説明を聞いていた人達だったのであっさりと信用してくれた。


 そう、今この離れに第5騎士団が押しかけてきていたのだ。




「数は80人位で、その騎士団所属の人以外はいないですね。例の名前も出ません。あと、副団長はいますが団長はいないみたいです」


「あそこの団長は来ないと思いますよ。下にやらせて自分は手を汚さない人ですからね。きっと今頃どこかでお偉いさんと祝杯でもあげてるんじゃないですかね?それにしても、80人って第5騎士団のほとんどじゃないですか。呆れますね」


 見張りの1人が肩をすくめながらそんなことを言う。そこまで分かってても放置なの?あ、そのお偉いさんが後ろにいるから余裕でいられるのか。


「なるべくなら誰も被害は出したくありませんが、身を守るためには致し方ありません。ですが、私達から手を出すのは立場上あまりよろしくないですね……」


「ヴァシュリー様の元に1人走らせてますので、いずれ助けに来て頂けると思いますが、この離れの距離と夜明け前の時間ともなりますとすぐには無理かと」


「じゃあやっぱりここで立て籠もって待つしかないですか……」


「ここは皇族所有の館なので火を放つ事は無いと思います。ですが、2階のバルコニーは上り易く、鎧を脱げば侵入は容易く危険です」


「では、バルコニーにはヒバリ様に落とし穴を設置して頂きましょう。それと、―――」



 各自が素早く自身の装備を身に付ける。どこから出したのか驚く侍女たちは今は無視してとにかく急いだ。


 縦3m横5mの大きさのバルコニーの床には透明な大きな袋をブルーシートのように大きく広げて、4方を紐状の透明袋で固定し開いておく。

 2階の部屋の外は目の前の廊下からしか入って来れない構造なので、建物前にいる見張りの騎士も中に避難してもらった。

 人が3人構えられる程度の幅しかないこの廊下にも絨毯の様に落とし穴を設置した上に、ピーリィに手伝ってもらって左右の柱釘を打ち紐を張って、そこに大きな袋をカーテンのように垂れ下げておいた。


「落とし穴はどちらも5m以上深くなってるので、間違って落ちないように気を付けてください。それと、この袋をマントやストールみたいに体に巻いて下さい。かなり強い攻撃力でなければ剣も魔法耐えてくれます。ただ、衝撃だけは抜けてくるので気を付けて下さい」


 そう言って次々に袋を配る。俺達みたいなちゃんとしたベージュ色のローブの形を作る時間は無かったので、ただの透明袋だけど気にしていられない。


「まさか朝ご飯準備の暇もない時間に来るとは思わなかったなぁ。てっきり夜襲でもしてくるかと警戒はしてもらってたけどさ」


「あの者らには大義名分があると思っておるのでしょう。とにかく今は耐えきってヴァシュリー様の助けを待つしかありません」



「ああーーー!あいつらッ!」


 袋の羽織り方を面倒見ながら騎士達と話していたら、

急にユウが大声を上げて指差した。


 示す先には、遠くに見える俺達の荷馬車から荷物を降ろしている騎士達が、まるで蟻のように次々と運び出している。商会の看板は外され投げ捨てられていた。


「好き勝手やってくれるじゃないか……あとで覚えてろよ?」


 ユウが拳を握って唸った。スキル発動寸前で怖いわ!


「安物はしょうがないけど、食材は全部袋に入れてあるから開けられないよ。それに、俺の袋に入ってる限りはレーダーマップ使えば探し出せるからさ、あとで取り返そう」


「絶対だよ?」


「分かってる。俺だってこのままじゃ悔しい。それと、もし荷馬車を壊したら、俺も自重しないでいいよね?すでに商会の看板壊されたし許す気はない!」


「その時は声かけてよね?」


 今も荷物を運び出されるのを見ながら、なんとか堪えていた。どうせ押収だとか言うんだろ?ただの略奪じゃねーか!


「あれが同じ騎士団の姿だと思うと反吐が出ますな。彼らは普段城壁の外回りをしているはずが、こうして許可なく堂々と皇族の領域へ踏み込んだ……これは軽い罪ではないですよ」


 様子を見に来た騎士の1人が苦虫を噛み潰したような顔で遠くの行為を見る。馬車はいじられなかったものの、荷物は全て持って行かれたようだ。




「ついに来ますね。では皆さん、怪我なく守り切りましょう。決してこちらから仕掛けず、攻撃されたら構いません各自防衛を行ってください。では、各自配置に就いて下さい!」



 姫様の号令で全員が配置に就いた。



 俺とピーリィとトニアさんはバルコニーを見張り、沙里ちゃんと美李ちゃんが姫様に付き、侍女達はある程度戦闘訓練を受けているからと自分の身は守れると言って部屋の扉前で騎士1人と一緒に守る。

 部屋の外には騎士3人とユウとベラだ。こちらは完全に防御を重視でお願いしてある。落とし穴手前の防衛線だ。


 俺も盾の前面の袋を開け、飛び道具を吸い込む準備をしておく。


「ほんと、好き勝手やってくれるよ」


「うま、だいじょうぶ?」


「馬車から離れた場所の小屋にいるから大丈夫だよ」


「よかったぁ」


 ピーリィの頭を撫でて安心させる。実際にレーダーマップの範囲を広げて馬のいる場所を教えると、そこに人が訪れていない事がすぐに分かった。



「まずはあの者らが何を言ってここを攻めてくるか、ですね」


「どんな大義名分を上げてきますかねぇ」


「一部は想像出来るんじゃないですか?」


「俺の闇の適合者……言われるんでしょうね」


「このタイミングですから、それもあるでしょう。後は姫様に関わる事と予想出来ます。どの道ろくなものではないでしょう」


 トニアさんも少し苛立つように言い捨てて集まってくる騎士を見ていた。見た所弓兵も盾兵も少ないから、完全に脅して捕縛ですぐ終わると思っているんだろう。




 バーンッ!!!


 誰も守っていない玄関扉が乱暴に開け放たれた。



「我らはノロワール帝国第5騎士団である!ここにいる闇の適合者の引き渡し及び、シルベスタ王国の転覆を企てた第3王女のノーザリス・シルベスタの投降を申し立てる!

 なお、素直に従った場合は決して粗雑に扱わないことを約束しよう。さあ、己の立場を悪くせぬよう応じられよ!」



 ……姫様が国家転覆って、それどこ情報よ?



「私がノーザリスです。この私が国家転覆を企てたですって?王族にあらぬ疑いを向ける罪、軽くはないですよ?それに、あなたは名乗りもせず誰からの指示かも明らかにしない。そんな者の言葉を信じる愚か者などいませんよ。早々に出直して、そのような妄言を垂れ流す者をこの場に連れて来なさい!」


 部屋から出た姫様は、ユウとベラを連れて一旦閉じておいた落とし穴の上を通って階段の最上段に立って堂々と言う。


「余り手荒な真似はしたくはなかったのですがね。仕方ありません」


 そう言って副団長が手を上げると、騎士達が隊列を成してゆっくりと階段に歩いてきた。副団長は建物の外へ出ていく。そして姫様達が部屋まで戻って来たので、落とし穴の袋を開いて袋カーテンの後ろへ戻る。



 鑑定ですでに分かっているが、さっき喋ってたやつが副団長だ。それ以外はただの騎士団員だが、どれもあまり感情の無い顔をしていた。鑑定スキルで覗いてみたら、ほとんどが催眠状態、一部が隷属状態になっていた。


 失敗した……始めて見た時に状態をしっかり確認してればその時に気付けたはずなのに!



 それを全員に報告しておくと、


「なっ!?騎士団を、その騎士を隷属ですと!?」


「催眠とは聞いたことはないですが、同じものですか?」


「精神を操ると言う意味では似たようなものです。団員には話は通じないと思ってください。あの男の命令で動いたから、今はあの男が操ってるみたいですね」


「くそっ!そんな事なら後ろに隠れる前にあいつだけ撃てばよかったか……」


 同じ騎士である男達が全員驚愕と怒りで乱れていた。

そこへ姫様が手を突き出して制し、一旦鎮める。


「罪もない者らを傷つけたくないですね。やはり落とし穴に入れて気絶させる方向でいきましょう。ヒバリ様、お願いします」


「じゃあ俺は両方の落とし穴を行き来していきます。あと姫様、そろそろ俺の事は様つけなくていいですよ?昨日からなってたから気になってたんです」


「分かりました。ヒバリさん、お願いします」


 くすっと笑った姫様が言い直してくれた。


 しかし俺達のパーティではない他の人達には、何故俺が気絶させる役なのか疑問を持ったようだが、あの落とし穴の件もあって誰も追及しないでくれていた。



「では皆さん、始めてください。ご武運を!」


 おお!と掛け声を上げて、全員が動き出した。




 さぁて、


 防衛どころか全員捕らえてやるつもりでやってみますか。

あのおっさんには馬車を荒らした罪を後悔させてやる!



内容が落ち着くところまでなるべく早めに更新出来るように書いてます。

次回も拙作をお読み頂けたら幸いです。

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