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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第10章 ノロワール帝国と皇族
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軟禁の始まりと状況確認

「2人とも、なんでそんなに落ち着いてるんですか……って、皆どうしたの?」



 今更気付いたけど、さっきから俺と姫様達以外まったくしゃべってないよね?この部屋入った時なんて、絶対美李ちゃんあたりがきゃーきゃー言ってもおかしくないのに。

 沙里ちゃんと美李ちゃんとピーリィは不安げにこっちを見ていた。ユウとベラは警戒してる?緊張感がピリピリくる。


「ほんと、どうしたの……?」


 傍に寄ると、ユウが耳元で囁く。


「この周り、大丈夫?」


「周り?ちょっと待って」


 急いでレーダーマップを確認すると、2人の騎士が二重扉の前に立っている。ついでに馬車の方もみると、こちらはちゃんと馬の世話をしてくれているようだった。

 検索範囲を広げても、特にこれと言って厳重警戒されている風でもないし、どこからか兵が押し寄せる様な集団は感知出来ない。



「さっきさ、あの白い鎧の人がさ、」


 少し緊張感が和らいだユウが話し始めると、トニアさんから手で待ったがかかった。すぐに反応したユウが発言を止める。


「ヒバリさん、以前使われていたダークミストの能力に音遮断がありましたよね?自分と検証を行ったあの能力です」


「……うわ、トニアさんよく覚えてましたね。そう言えばそんなのありましたよねぇ。印を付けた人にしか聞こえない……ああ、考えてみれば、今までもそれ使えば楽だった事がいくつか」


「反省は後でお願いします。早速発動を」


「あ、ハイ……ドウゾ」


 無駄話をしてる暇はない、ってことですね。



 以前発動させた時は魔力量も今の1/10位だったから長くは維持出来なかったが、今ならかなり余裕をもって維持出来る。1秒ごとに減っていく魔力よりも自己回復量が上回っていることが多くて、その程度の消費は気にしなくなってきてしまった。

 半径数mに絞ってるから、そこだけ注意するように言っておいた。これも範囲を広げれば消費量も多いんだろうけど、今は検証してる場合じゃないので自重しよう。



「いいのかな?じゃあ……さっきの白い鎧の人がさ、無表情な人達に怒鳴ってたんだよ。なぜだー!って」


「わたしたちも聞きました。馬車から手荷物を持って中身をチェックされている時だったのでびっくりして鞄を落としそうになりました」


 だよねーとユウと沙里ちゃん、そして美李ちゃんやピーリィも頷く。

ベラは別段驚いた風はない。


「俺達には聞こえませんでしたよね?」


 御者として馬車を止めた後は姫様の荷物を持って2人の後ろに付いて一度建物の玄関の中に入ってたから、その時かな?


「あー、怒鳴ったっていっても、小声で迫る感じだったからね。でも顔は凄かったよー。それを無表情で流す人達も凄いけどね」


「……なんか、よくわかりませんね」


「少なくとも、私達をすぐどうこうするつもりがないと言う事、あちら側も一枚岩ではないと言う事でしょう。ここはどう見ても離れとしての建物です。監禁場所としては上等の部類でしょう」


 話してる間に奥の簡易キッチンでお茶を用意したトニアさんがテーブルに配る。姫様だけは直接届け、受け取った姫様はありがとうと答えて早速飲んでいた。


 毒物の心配を口にするも、トニアさんは先に飲んでみたから心配ないと言う。自分を使って毒見しなくて俺の鑑定も頼ってください!



「うーん……なんか俺だけ別荘に来たようなテンションだったから変な感じだけど、相手側が対応決めかねて揉めてるってことですよね?」


「そうでしょうね。例の派閥がここでどれほど食い込んでるか、しばらく待てばはっきりするでしょう。あら、流石に良い茶葉を使ってますね。ですが今はミリさんの作る茶葉が一番お気に入りですわ」


 突然褒められた美李ちゃんが、びっくりしたあと照れて沙里ちゃんに抱き着いていた。でも確かにあっちの方が苦味というか渋味が柔らかい気がする。好みだとうちらの茶葉だなぁ。



 茶葉の話題で少し緩くなったか、皆も座ってお茶を飲み始めた。ついでに鞄からバケットの様なパンと蜂蜜を出して皆で食べてみる。

 すでに昼は過ぎてるのだからお腹が空いていたのだと改めて思い出したように皆も次々手を出していった。


「キッチンにも食材があり身の回りの物も揃えられています。つまり、衣食住は保障してもらえるようです。そもそも、脱出するにしてもヒバリさんの協力があればいつでも出来るのですよねぇ」


 鞄から軽食になりそうなものを出してる俺を見て姫様が言う。


「全員を居住袋に入れてそれを持ったヒバリさんがハイディングで兵の影に隠れて移動すればすぐにでも可能ですね。夜なら目眩ましや音遮断で隠密行動も容易いでしょう。まさにニンジャです」


 やたらと饒舌にトニアさんが言う。


「じゃあヒバリに任せておけば寝ててもいいってことだね!」


 ついにはおにぎりも食べだすユウ。


「ヒバリがけがするの、やだよ?」


 おお!俺の心配をしてくれるのはピーリィだけか!

よしよし、と隣に座るピーリィを撫でておいた。


 それを見た美李ちゃんがずるい!と飛び込んでくるが、食べ物の前で暴れたので沙里ちゃんに怒られてしまっていた。これはしょうがないな。



「とにかく、今は状況を見守りましょう。ここで逃げ出してはやましい事があると言うようなものです。私達は堂々と待ちましょう」


「ヒバリさん!音遮断の解除を」


 姫様の言葉に頷こうとした時、トニアさんが小さく鋭く言葉を被せてきた。

レーダーマップを見ると、5人がこの離れの館へ到着するところだった。




 きちんとノックをして返事があった後扉を開けて入って来た。


 先頭は先程の白い鎧の男性騎士。続いてメイドのような女性2人、その後に護衛か部下か男性騎士が2人。白鎧の騎士以外は初見ばかりだった。

 白鎧の騎士もやっと兜を取ったため顔が見られた。短いちょっと癖のある金髪に太い眉、そして強いエメラルドの眼光が俺達を見渡す。



 メイドの2人が静かに扉を閉めた所で、

一拍の静寂の後白鎧の騎士が話し出した。



「突然このような場所にお連れした事については謝罪致します。ですが、今なおノーザリス殿下への国家転覆の企みについては真偽が判明しておらず、この状況がしばらく続くとご理解下さい」


 相変わらず名乗らないなこの人……

取りあえず白騎士とでも脳内で呼んでおこう。


 そして案の定他の4人も紹介される事はなかった。


「私としても自国を陥れる企みも、他にもやましい事など一切ありません。命を狙われる事がない限りはここで疑いが晴れるのを待ちましょう。

 但し、1週も2週も待たされては、本当に国家転覆を企む者らが成し遂げてしまうのです。ひとまず1週は大人しく留まる事を約束しますわ」


 1週……と呟く白騎士。

それに対して姫様が何かを言うことはなかった。


「承知致しました。出来れば穏便に済ませられるよう願っております」


「ああ、それと……」


 姫様はトニアさんへと首を向け、そして1通の手紙を差し出す。


「これは王国領から出る間際にニールズ子爵家の使いの者が届けたデービット王より預かった書状です。どうかこれも審議の材料としてください」


 トニアさんより書状を預かった白騎士は取り出したハンカチ?で丁寧に包んで後ろの騎士に手渡した。乱雑にしなかったのを見てちょっと心証が良くなったかも。



「確かにお預かり致しました。至急、届ける事をお約束致します。ですがその前に、」


 と、言葉を区切ってから俺を見て、


「ヒバリと言ったか。お前はこの中で唯一の男、今から別室へ移ってもらおう。ノーザリス殿下に万が一の事があってはならない、よいな?」


 ああ、そう言う事か。

まぁ……分からなくもない。


 どう見たって俺は貴族階級には見えないし、そもそも商人だと言ってその馬車もあったわけだ。そのどこの馬の骨とも思えない男が同室ってのは王族を預かる側としては問題になる、よなぁ。



「それには及びません。ヒバリは私の従者です。その判断は私が行いますので気遣いは無用です」


 どうしようかななんてほんのちょっと考えている間に、

姫様がばっさりとその話をぶった切っていた。


「ですが、」


「…………」


 食い下がる白騎士も、まったく受け入れる意思がない姫様に速攻で折れてしまっていた。早いよ!俺としては助かるけど!



「……わかりました。但し、世話係としてこの2人を付けさせて頂きたい。食事から湯浴み、衣類の事も2人に任せて頂けば、不自由な思いはさせません」


「何かあれば呼びますので、向かいの部屋で待機して頂けたら十分です。感謝致します」


「……は?失礼ですが、食事はどうなさるおつもりで?」


「食材提供して頂けるのでしょう?ならば調理はこちらでしますわ。ちょうどここに軽食の残りがあります。普段作らせているのがどういったものか召し上がって下さって結構ですよ。どうぞ?」


 そう言って俺とトニアさんを見る姫様。俺はバレないように拡張袋からおにぎりを取り出して、それをトニアさんが皿に乗せて5人に配る。

 手掴みで食べるとは思ってなかったようで、初めは困惑していたが、姫様の再度のどうぞで怪訝そうな顔で横に用意したおしぼりで手を拭いてから食べ始めた。



「むぅ……これが報告にあったゴルリ麦の新たな調理法か……」


 ん?……あ。チュイルさん、もう報告してたのか!


 て言うか、この人の地位はどれくらいなんだ?あと、チュイルさんも。確かチュイルさんは巡回騎士団の第一班班長って言ってたからそれなりにはあるはず。でも俺達は検問で少し時間を食った程度で、真っ直ぐ城へ来たはずなんだけど!?


 他の4人も感心しながら丁寧にゆっくりと食べていた。



「報告によれば、これらを作ったのはお前と言う事だが?」


 気に入らないという態度を隠すつもりのない白騎士が、

息を吐き捨てながら俺を見る。


 が、それもすぐに


「私の恩人に対してお前呼ばわり……1度目は従者として紹介したため見逃しましたが2度目ですわ。ヒバリも、そして連れの者全てが従者であると同時に彼らに命を救われ、更に危険を承知でここまで連れてきて下さった方々、これ以降見下すような態度を取るつもりなら……」


「お、恩人!?」


 これに驚いたのが白騎士どころか後ろの4人もだ。


「本来はまだ言える事ではないのですが、おそらく父上、デービット王もヒバリのおかげで難を逃れた可能性もあります。その事も考慮して呼んで御覧なさい?」




 ……あれ?

これ、姫様は怒ってる?


 よく見たら、後ろの4人は姫様の顔を見て驚いてるのか!



 そーっと俺も少し脇から姫様の顔を覗き見ようとして、

それをすーっとトニアさんに邪魔された。


 トニアさんがどいた時、姫様はいつもの笑顔だった。



「ヒバリさん、どうかなさいましたか?」


「いえ、なんでもないです……」



 また元の位置に静かに下がる。



 他の皆はまったく動かなかったけど気にならなかったのかなぁ?

見てみたかったのは俺だけだったのか?


 じーっと他の皆を見てたら、その行動がおかしかったらしく、まずユウが決壊した。


「ぶはぁ!ホント、ヒバリなにやってんのよ!あっははははは!」


「そんな目で見られると、耐えられません……ぷっ」


 次に沙里ちゃんも笑い始める。目がなんだって?

なんだこのにらめっこみたいな感じ。




「はい、そこまでにして下さいね?

……では、話は以上でいいですか?」


「あ、はい。では、御用があればいつでも扉の前の護衛2人に申し付け下さればすぐに対応いたします。侍女も隣の部屋で待機させますので、自由にお使い下さい」


 白騎士がそう言って、5人はお辞儀をして静かに退室した。



 なんか俺のせいで雰囲気ぶち壊した気がするけど、

あの5人が呆気に取られてるからまあいっか。



 ……いや、いいのか?



なんだか週1更新になってしまってますね……

やっと今週から残業1時間程度で帰れそうなので、せめて週2更新出来るよう書き進めていくつもりです。


少しずつ初期の改行の多さだけでも修正していきたいのですが、それも同時に進められたらと思っています。そんな拙作をお読み頂けたら幸いです。

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