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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第9章 越境の道
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街での予定消化

出勤前になんとか書き上がりました。

かなり空いてしまいましたが、今回も拙作をお読み頂けたら幸いです。

 商人ギルドから早めに宿へ帰っていつも通りの仕込みや晩ご飯、

宿への晩ご飯注文と明日出発する旨を伝えた。





 朝起きてからの身支度と朝ご飯と宿への挨拶をして、まずは騎士団の詰め所へ向かう。街を出て帝都へ向かう前には必ず声を掛けて欲しいと言われていたのだ。流石にこれは無視出来ない。



 宿を出る時に前に声を掛けた人が女将さんだったと知り、挨拶したらピーリィと美李ちゃんがやたらと可愛がられていたが、子供好きだから勘弁してやってくれという宿の主人の言葉にそのまま見守っておいた。



「良い方達でしたね」


「こっちはほんと差別が少ないんですね……あっ!すみません」


 馬車を走らせていたら後ろの姫様に話しかけられて、

素直に心情を話してしまった。失敗したなぁ、王国非難だった。


「気になさらないで下さい。我が国もああいった差別のない国にするための努力は惜しまないつもりです」


 姫様の目を見て、これ以上謝るのはやめた。


 姫様とトニアさんの関係を間近で見てきた俺には、心配よりも姫様"達"が変えていけるって、どこかに期待する気持ちがあるんだよね。


 一緒に旅をしてきて、素直にそう思うことができる。


「サリスさん達なら出来ますよ!」


「……ありがとうございます」


「そのためにもまずは、」 


「自国の憂いを断ちましょう」




 大して距離がないため、姫様と話している間には詰め所についてしまった。朝8時は早すぎたかと思ったが、停留所には馬車が、入り口は用のある者と行き交う騎士達で賑わっていた。


「俺は馬車を停めてきますから、皆は先に受付を済ませておいてね」


 皆を入り口前のターミナルで降ろして近くの停留所へ誘導してもらって馬を繋ぐ。結構な混雑だったから20分程度並ぶとは思わなかった。

 案内してくれた騎士の男性に聞いたら、国境街だけあって街の門が開く朝に合わせて登録事や手紙などの郵送依頼の受付に訪れる人が多いため、こうして大勢が詰めかけてしまうそうだ。


 騎士団の街道巡回に郵送という副業があるのは初めて知ったぞ。

ただ移動するよりそこに利益を発生させるとは……やるなぁ。


 勿論従来の商人の郵送も行っている。こちらは高いが配送先を細かく指定出来る。騎士団の方はあくまでついでであって、商人ほど細かな配送先指定は出来ないそうだ。その分安いから、これはどちらも一長一短があって面白い。


 もっとも、国としての重要な書簡や情報などは、鳩と同じ習性を持つ鳥がいるらしく、トップの者達はそちらを使っているという話だ。



 なんて話し込んでいたらさらに10分以上経っていたようで、

どうやら俺達との面会を優先してくれた騎士団長のブリゼさんが待っているようだ。


「ヒバリおにいちゃんおそーい!」


「ごめんごめん、かなりな順番待ちだったんだよ」


 なんて言い訳してみたが、美李ちゃんは許してくれなかった。


「えーっと……誘導されてた騎士さんとおしゃべりしてるの、見られてましたよ」


 苦笑しながら沙里ちゃんが俺達の馬車を指差す。


 しまった。詰め所の入り口からだと駐車場が見えてたのか。っていうか、丁度空いた場所が結構手前の方だったからここからだとかなり見やすいって今気づいたわ……


「はい、ごめんなさい」


「もう、しょうがないなー」


 腰に手を当てて溜息をつく美李ちゃん。

素直に頭を下げて謝ったから許してくれるそうだ。


自分が悪いと思ったら謝る、大事だね!




 係の人に案内されながら2階へ向かう時、待たせた原因である雑談を皆にも話してみた。巡回騎士による郵便は最近運営されたようで、姫様も知らなかったと感心していた。自国が落ち着いたら検討したいと言っていた。



「こちらの頼みで態々寄らせてしまい申し訳ない。そして、来訪に感謝する」


「さ、どうぞ席にお着き下さい」


 前回と同じ会議室へ通され、すでに待機していたらしい騎士団長のブリゼと副騎士団長のペストリーが揃って挨拶をしてくる。

 俺達は揃って座るが、トニアさんと副団長とここへ案内してくれた係の3人はそのまま立っているようだ。


 ていうか、部屋の外に2人ほどいる以外、室内に3人だけって少なくないか?普通もっと引き連れてるんじゃないかなぁ?まぁ、この世界に来て日の浅い俺が言う普通ってのも当てはまるか分からないけどさ。



「……ん?ああ、ここにいる者は皆ノ……ゴホン。失礼、サリス殿らの事情を知る、あるいは知っても問題ない者しかいないのだよ。だから安心して欲しい」


 きょろきょろと辺りを見ていた俺に気付いたブリゼさんが、

察したように説明してくれた。


 いや、信用してくれるのはありがたいが警備上はいいのかなって。

まぁ、いいんだろうなぁ。



「では、時間を無駄に出来んのでさっそく本題に入ろう。まず――」




 この街に入ってから俺達は監視と言うより護衛の意味で常に騎士達が周りにいたらしい。よく巡回してるな、程度に思っていたが、あれって俺達のためだったのか……。


 そして、街に入る前に騒動を起こしたドルエス商会の手の者を炙り出すために、騎士の格好をしてない者を宿付近に配置し、案の定やって来た怪しい人物を捕らえる事に成功したそうだ。

 俺達はいつの間にか囮捜査に協力してたって事だが、これは姫様とブリゼさんが連絡を取り合ってトニアさんが様子を見ていたとか。

 勝手に話を進めてごめんなさいと謝っていたけど、元々騒動に巻き込まれに行ったのは俺達だし、不穏分子を排除してくれたんだから、むしろ感謝で返した。


 ドルエス商会に関しては、すでに帝都へ連絡が走っているらしい。ただ、隷属の魔道具の運搬はかなり危険なので、これはあとで今回の主犯であるカールらの移送も含めてブリゼが直接届けに行くと言っていた。

 ここ最近でかなり幅を利かせ始めた商会なので、すぐには無理だが必ず報いを受けさせると意気込んでいた。



 余談ではあるが、俺達が紹介されて泊まった宿は、この部屋へ案内して後ろに立っている係の人の実家だそうだ。宿屋の主人も女将さんも元騎士だったとか。


 どうりで物腰の柔らかい対応だったわけだ。

この街の騎士らの接し方はずっと守られてきたんだろうなぁ。




「――以上となる。貴公らは帝都へ向けて発つわけだが、ここから帝都まで馬車で4日ほど。道中は騎士の巡回頻度も多く、視界も開けているのでそう心配もないだろう。


 ……そして殿下、無事使命を果たされるようお祈り致しております」


 一度立ち上がり、片膝をついて敬礼するブリゼに他の2人も倣う。



「こちらこそ感謝します。これからも王国と帝国がよき隣人としてあるよう、共に手を取り歩みましょう。その為にも此度の件、身内の恥を晒す事になろうとも食い止めます」


 姫様も誓いの言葉のように返す。

自身に発破をかけているのもあるのかもしれない。




 と、真面目な話はこれで終わった。


 この後は軽くお茶で雑談をしてからブリゼとの面会を終え、

甘い物を手土産に渡して、俺達は詰め所を後にした。



 まぁそのお茶会で、ブリゼさんが美李ちゃんとピーリィを抱きしめたいと言い出して、本人の許可が出てしばらく頬ずりするくらい堪能していたんだが。

 なんでも宿屋の女将さんが宿を出る時に抱きしめたのを自慢したらしく、それに感化されての行動、と。


 お茶のついでって事でこちらで作り置きのプリンと、ピーリィの大好きな蜂の子ソースを提供してみた。ブリゼさんはソースをつけたパンをピーリィに食べさせて、あげるほうも食べる方もどちらも喜んでいた。

 美李ちゃんは蜂の子ソースを見て沙里ちゃんの元へ逃げてしまったが、そこはご愛敬ってことで。美李ちゃんの分はベラが食べていた。それはもう美味しそうに、時折無言で目を瞑って味わってくれてた。


 プリンの方は宿屋の息子さんがえらく気に入ったようで、宿で作り方を教えてほしいとせがまれた。さすがに時間がないので手書きのレシピを渡すだけにして、あとは頑張れって言っておいた。

 過去に召喚された勇者が似たようなのを作っていたらしいんだがレシピとして残ってなかったそうで、このレシピはいくらで売ってくれるのかと話が面倒な方向へ行きそうになったので、世話になったお礼にここの詰め所で適当に作ってくれと言って逃げた。


 ええ、逃げましたとも。

ここから商談だなんて面倒だよ!





「よし、それじゃあそろそろ出発しよう!」



 詰め所を出る所まではブリゼらに見送られ、

後はそのまま大通りを真っ直ぐ東へ進んで商人ギルドへ立ち寄る。


 ここでラーク商会の登録証と沙里ちゃん図案の看板を2枚受け取る。それと昨日話した昆布の販路は、これからだがギルド長が先頭に立って進めると言っていたので安心かな?早く市場に並ぶのを期待しよう!


 話も終わり、その間に馬車に看板を取り付けてもらったので商人ギルドを後にした。お次は鍛冶屋だ。っと、先に市場近くの屋台で昼ご飯を買って移動しながら食べておく。


 結構時間かかってるなぁ。



 鍛冶屋では昨日頼んでおいた折り畳み椅子の骨組は完成していたが、大小の四角枠を真ん中で固定してもらっただけなので職人さんが不思議がっていた。内側の枠をくるくる回して遊ぶ始末だ。なにやってんの……



「これはこうして皮を張ってですね―――」


 ここでいつもの袋を使って見せるわけにはいかないので、

別に用意した皮を仮止めして座る場所を作る。


「なるほどなぁ……これならどこでも開くだけで座れるってわけか。

はー、仕組みは単純なのによく出来てる」


「大きい椅子としては使えませんが、野営みたいな持ち込みの椅子としては十分なんですよ。あ、今は仮止めなんで座らないでくださいね?」


 ちょっと目を離した隙に他の職人が座ろうとしてた。

コントとしてはおいしいけど、それで壊されたらやだよ!



 ここでも利権だなんだと言い始めたので、面倒だから騎士団に話をしてもらうよう言って逃げてしまった。ブリゼさんかペストリーさんかは分からないけど、あと頼みます!



 簡単な仕組みだったので、大中小の3種を5個ずつ作ってくれていたのを全て買い取ってから鍛冶屋を出た。もう後は知らん。これ以上時間をかけたら出発が明日になっちゃうよ……





 そして時計の針が13時半を差す頃に、東門の検問所へ到着した。


 と言っても昼過ぎでは大した混雑もなく、検問は挨拶と身分証提示のみですぐに通された。話は通っていると聞いていたけどあっけないな。



 門を潜って街を出る。ここからは帝国領だ。

いや、街の中も帝国領だったが。


 今日はこのままずっと俺が御者をする予定だ。

一度馬車を道の端に寄せて、幌の中へ振り向く。



「じゃあ今度こそ帝都に向けて出発だ!

明日の内には帝都に到着するぞー!」


 おー!と美李ちゃんとユウが拳を上げて返事をすると、

他の皆も真似てもう一度おー!と言ってくれた。




 よし、まずは夜まで気を抜かずに御者を頑張ろう!



 時間がかかってしまったが、こうして帝国領内での馬車旅が始まった。

もっとも、帝都までは今までと比べればかなり近いのだが。


事情徴収に現場検証、諸々がやっと落ち着き始めました。

数日に1話ずつ更新していけたらと思います。



詳しく……いえ、かなりぼかしてますが、活動報告にて書いています。一応、グロ耐性の無い方はご注意ください。それでも動かさないといけない年中無休業ってこういう時特につらいですねぇ。


皆さんも事故怪我のないようお気を付けください。

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