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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第9章 越境の道
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依頼と商談

せっかくの休日を15時間寝てしまい、更新が滞っていました。


そんな拙作ですが、お読み頂けたら幸いです。

 翌朝。



 いつも通りピーリィは俺の上に陣取って寝ていた。

目が覚めて見た様子では幸せそうにしてるからなによりだ。


 代理の兄としてこれからも見守っていくつもりだし、寂しい時はちゃんと言って欲しいから甘えていいんだよって寝る前に話した時は喜んでたなぁ。

 俺の年齢的には父親と言われても否定出来ないわけだが、そこを突っ込まれなかった事がほっとしたのは内緒だ!



 とにかく、だ。昨日は最後にちょっとゴタついたけど、

結果オーライで無事に3人が仲直り出来てほんとよかったよ。


「まぁ、あの2人も優しさがちょっとずれちゃっただけだから、あまり心配はしてなかったんだけどさ。ピーリィも不安だっただけだし、ね」


 独り言を呟きながらピーリィの頭を撫でる。



 外からは朝陽が射し込み始めていた。枕元に置いた時計を手繰り寄せて時間を確認すると、今は6時過ぎのようだ。もうちょっと寝ていられるけど、何だか寝直すには勿体ないくらい今日もいい天気みたいだ。



 今日の予定は、朝のうちに市場と道具屋、そして鍛冶屋に行って折り畳みの机と椅子の骨組を作るとしたらの期間と見積もりの相談、最後に商人ギルドへ屋台や卸売りをする予定の食品のサンプルを提示ってところか。




 30分ほどそのまままったりとして、美李ちゃんが起こしに来たのでピーリィを起こして身支度を済ませ、一緒に宿へ朝食の注文に行った。


 新しい街へ来たのだから、やっぱりその街の料理も楽しまないとね!って事で今回も半分は宿注文もう半分は自前にしている。ルースさんに送る分も同じく半々にしていた。



「おはようございます!4人分のごはんください!」


「あらあら、おはようさん。今日は可愛らしいお嬢ちゃんが注文に来てくれたのねぇ。今朝はパンの燻製肉サンドか煮込みボアシチューだけど、どうするかい?」


 受付にいた体格のいい女性が、俺に抱きかかえられたピーリィの高さに合わせるために少しかがんでにこにこと聞いてくる。


「2つずつで!」


「了解。前払いだから銀銭2枚になるよ」


 俺を見上げてきたピーリィに軽く頷いて、

ポケットから銀銭2枚を女性に渡した。


「はい、確かに。じゃあ出来上がったら部屋に運ぶからちょっとの間待っておくれ」


「わかりました」「おねがいします!」


 2階の部屋に戻ろうと階段へ向かうと、ピーリィが俺の体越しに女性へ手を振っていた。帝国領は人種差別が少ないと聞いていたが、むしろ好意的に接してくれるから、余計にうれしいのかもしれないな。




 部屋に戻って居住袋の中へ行くと、今度は沙里ちゃんや姫様、そして順番に皆に抱き着いていくピーリィ。朝から物凄いアピールだ……


「じゃあ美李ちゃんとピーリィで宿屋の料理を受け取ってもらえるかな?」


「「はーい」」


 いこー!と言って2人で仲良く手を繋いで居住袋から出ていく。その後をユウとベラも続く。ここにいると匂いで余計にお腹空くから宿の部屋に行ってるそうだ。ついでにあっちで食べられるようにテーブルセッティングをお願いしておいた。


「こういう時にも折り畳みの椅子と机が欲しくなるなぁ。やっぱりああいうの便利だもんね」


「そうですよね。鍛冶屋さんですぐに作ってもらえるといいですけど」


 朝からハンバーグを作りながら沙里ちゃんとの会話。

今俺がこねている分は商人ギルドへ持って行く分なんだけどね。


 隣では沙里ちゃんがおにぎりとだし巻き卵を作っていた。


 具材は以前作っていたマスそぼろとワニそぼろ、それと道中手に入れた豚のそぼろを作って入れている。あとは自家製味噌で味噌汁だ。正直、これでもかなりの贅沢感がある。


「あ、そうだ。ヒバリさん、板海苔がだいぶ少なくなってきたのですが、また作りますか?」


「じゃあ今日の夕食の後くらいに一気に作っちゃうか。また俺がすのこで紙漉きみたいにやるから、沙里ちゃんはドライヤーの魔法で乾燥お願いね」


「はい、今回は一気にいっぱい作っちゃいましょう!」


「あ、少し残しておいて!海苔の佃煮も作るから。あれ、ご飯に乗せると美味いんだよねぇ。久しぶりに食べたくなっちゃった」


「あれ私も好きです!ご飯があるから食べたくなるの分かります!じゃあその分は別に取っておきますね」


 ささっと朝食を作り終えた沙里ちゃんが川海苔の整理を始めた。後回しにしないところがさすがだ。俺なら後回しにしてたね!




 宿の部屋で賑やかに朝食を済ませた俺達は、受付で外出する事を伝えて馬車を出して街中をなみあしで走らせた。


「いつもの市場と道具屋巡りをした後に道具屋か鍛冶屋で折り畳みの椅子と机の相談をして、出来れば昼頃に商人ギルド行って商品の売り込みというか紹介をしに行く予定だね」


 今日も俺が御者となって馬車を走らせて、後ろへ声を掛ける。


「海苔もあるといいですねぇ。ここって少し先に行けば海に出られるんですよね?でも海藻見なかった気がします。海の魚も少なかったし」


「昨日俺達が行ったのが昼過ぎだったから、今日こそそれが分かると思うよ。無かったら海沿いの町か村に交渉して商品になる事を理解してもらいたいなぁ」


 沙里ちゃんが御者台の方に顔を出して、俺に寄りかかるピーリィを撫でながら話しかけてくる。うん、完全に仲直り出来てよかった。こういう姿を見ると安心するね。



「海藻……海の植物ですか、それはあまり期待出来ないと思いますよ」


 そこへ姫様が加わってくる。


「南の海は近場で網を投げるか釣りをするくらいですし、浅瀬にも魔物がいる場合もあるので村人では対応しかねるかと」


 やっぱりネックは魔物かぁ。


「でしたら、採取はギルドを通して冒険者へ依頼してみてはいかがでしょう?それを村で加工し、商会を通して販路を作ればそこから依頼金が支払われます」


 今度はトニアさんからだった。



 なるほど、浅瀬程度ならそこにいる魔物に対応出来る冒険者に採取させれば安定するってわけか。聞けば、ゴブリンを安定して撃退出来る実力があればいけるらしいし、これも商人ギルドへ相談してみよう!




 市場は案の定海藻は無かった。生魚もそれほど豊富じゃないっていうのが、ほんとに海の近くなの?と言いたくなるほど寂しいものだった。しかし、国境街だけあって干物ならある程度あったり、穀物や野菜は活気に溢れていて、今日もせっせと買い込んでいく。


 馬車が市場通りのすぐそばに停められたから、台車を借りて往復する程度で運び込めたのもいい感じだね!勿論馬車の中では倉庫用の共有鞄に仕分けて入れてるんだけど。



 道具屋ではすのこやパンの金型や細かい道具、あとは直径10cm丸い型抜きをその場で組んでもらって購入した。簡単な加工はやってもらえたけど、さすがに椅子や机は断られてしまった。まぁこれはダメ元だったから問題ない。



 で、道具屋に紹介してもらった鍛冶屋へ行って店主代理に折り畳みの椅子と机の図案を見せて相談してみる。


「うーん……こいつを半日で2〜3台かい?椅子の方の枠は出来ても、机はちっと構造の検証が必要だわな。ちゃんと安全だと分からんと俺としても渡す事は出来んぞ」


 おそらく人族の中年男性は頭をごりごり掻いて言う。


「あ、椅子の方は出来そうですか?」


「こっちは一回り大きさの違う四角の枠を2つ作って真ん中で固定するだけだろ?布張りはそっちでやるんだから問題ないさ。安全を見るのはそっちの仕事だからな。

 幸い余ってるパイプがいくつかあるからやってみるかい?太さごとに作ってみて強度を試すのがいいと思うぞ」


「……そうですね。じゃあパイプを見せてもらって、そこからいくつか選びたいと思います」


「よっしゃ、商談成立だな。ああ、これは新人にやらせてもいいか?この程度ならいい勉強になると思うから頼むよ。ちっとまけとくからさ」


 前にも似たようなことあったな……

あれは日の形のベルト金具の時だったか。


「いいですよ。じゃあさっそくパイプを―――」




 結局、パイプの太さ3種類で注文しておいた。枠にするための溶接はどうするのかと思ったら、そこは溶かした鉄を結合部分に塗りつけてうまいこと固めるらしい。詳しくは分からないけど、そこは本職に任せておけば安心だ。



 

 そして今日最後の予定の商人ギルドだ。


「これがヒバリさんの作るハンバーグですね。そしてこれのタネ……加工肉を料理屋へ卸売りするか自身で屋台をやって販売するわけですか」


 ギルドの2階にある簡易厨房を借りて実際に焼いて見せて、その試食会を行っていた。匂いに釣られた他の職員への提供も忘れていない。ちょっと昼を過ぎてしまったが、むしろ昼交代でこれから食事するという職員が半分いたのでありがたがられていた。


 そりゃぁ腹減ったところへ焼いた匂いがいけば欲しくなるってものだよね。そういう人は余計に美味しく感じるだろうからいいアピールが出来るってもんだ。

 おかげで応接室は購買所のように軽い行列が出来ていた。沙里ちゃん達が対応してくれているので、俺はそのまま商談を続ける事にした。



「順に豚肉・ビッグボア肉・イエロークロコダイル肉・そして最後が豚肉に豆腐という豆加工品を混ぜた、他に比べて太りにくい健康志向のハンバーグ

です」


 ”太りにくい”という言葉に反応した女性陣が豆腐ハンバーグに殺到する。他の人は残りの3種をそれぞれ1つずつ取っていく。サイズは普段の半分以下だから3個食べても満腹にならないだろう。



 この世界のハンバーグはやたら挽肉が荒くワイルドな歯応えばかりだが、うちのミンサーにかかればこのとおり食べやすく肉汁も見た目的にもいい。



「これは……この豆腐というのは、ヒバリさんが作られたのですか?」


「はい。これも商会としての商品の一つですよ」


「むぅ……でしたら、レシピを譲っていただくのは……」


「あー……申し訳ありません。商品としての価値があるので」


「ですよね。そこは当然の権利だと思いますので、気を悪くされないで頂きたいです」


 対応してくれていたギルド長は、断られると分かっていても聞いておきたかっただけだからと、こちらを気遣う言葉を続けた。



「あ、その代わりといってはなんですか、1つ販路を開いて頂きたい相談があるのですが。まずはこれをどうぞ」


 そう言って、コップに注いだ湯を渡す。


「では」


 そっと口に運び、ゆっくりと一口含んで……


「美味い!なんですかこれは!?」


 くわっと目を見開いてきた。ちょっとびびったぞ!

身なりを整えた出来る男の眼光はちょっと怖いって!



「これは海にある植物、つまり海藻を乾燥させて、そこからダシと呼ばれる旨味を取り出したスープです。

 相談と言うのは、海は浅瀬でも魔物が出るって聞いたので、冒険者に採取依頼をしてこの海藻を海の浅瀬で集めてもらい、それを村で加工してギルドを通して販路を作れないか、って事なんですよ」


 鞄から麻袋に入った生と乾燥させた昆布を取り出してギルド長へ渡す。


「この植物からあのような旨味が出るというのですか……にわかには信じがたいですが……」


 そう言われては仕方ないので、実際にただの水とそこからだしを取る所を目の前で見せて、また味見をさせる。そしてまた驚くギルド長、面白いな!



「なるほど。しかし、これを自身で販路を開かない理由が分かりません。これを流通させればかなり大きな商売となるのでは?」


「自分達は目的地があるので、ここで足止めしてる時間はないんですよ。冒険者ギルド・海沿いの町か村・そして販路を開くなんて、個人でやったらいつまでかかるやら。それに、」


 ここで厨房から戻って椅子に座ってギルド長へ向き直り、


「まだ商品は色々あるんで、この海藻……昆布は個人的に食べたいので流通しててくれれば買えるから、自分としては手に入ればそれでいいんですよ」


「……まだ隠し玉があるとおっしゃいますか。わかりました、引き受けましょう。むしろこちらの利益が大きすぎて申し訳ないくらいです。して、このコンブとやらの見本は頂いてよろしいですか?」


「はい、どうぞ。1日も早く市場に並ぶのを楽しみにしています」


「私としても今日は良い話を頂いて感謝しております」


 お互い立ち上がり、握手をする。




「あー……緊張したぁ」


「お疲れ様です」


 借りていた厨房の片付けをしていた沙里ちゃんが飲み物を渡してくれる。

受け取って一気に飲み干して自分で洗っておいた。


「ありがと。営業なんてしたことないから1人で行かされた時はどうなるかと思ったけど、いつまでもひ……サリスさん達に頼ってばかりじゃだめだもんね」


「で、昆布はどうでした?」


 ……言い間違いしそうだったのはスルーしてくれたようだ。


「喜んで進めてくれるってさ」


「じゃあこれからは出回るかもしれないんですね!」


「すぐってわけにはいかないだろうけど、そうなるね」


 そんな話をしながら、お互い笑顔で片付けを済ませた。




「では、明日の昼過ぎにはラーク商会の仮登録証が出来上がりますので、受け取りにいらしてください」


「はい、例の件も含めてよろしくお願いします!」


「承りました」


 最後にギルド長へ挨拶して、ヒバリ達は馬車で宿屋へと戻って行く。






「ううむ……」


 ヒバリ達を見送った商会ギルドの長は、自室へ戻って唸り声を上げていた。


「ブリゼ様から丁重にもてなす様に仰せつかっていたが、逆にこちらが良い商談を頂いてしまいましたなぁ。これも報告せねばいけませんね」


 オールバックにしていた髪を下し厳しい顔をしていたギルド長が、

まだ残っているだし汁をちびちびと飲んではにやけていた。



 この男、だし昆布の虜になってしまったようである。



あ。


 前にみたら何故か前半の章の位置設定がずれていましたので修正しました。最近は何もしてないので、かなり前からずれていたということですね……


 まだまだ使い慣れていないようで申し訳ありません。あと、内容の間違い修正も時間が取れ次第進めたいと思います。そこももやっとしてしまう件も合わせて申し訳ありませんっ!

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