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異世界に行っても袋詰め人生  作者: きつと
第9章 越境の道
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詰め所への挨拶(表)

いつもよりかなり間が空きましたが、なんとか1話書き上がりましたので投稿します。

拙作をお読み頂けたら幸いです。

 街の外壁は2層に分かれていた。


 門を1つくぐった先で検問が行われ、入国が許されたら手続きを行った後に2つ目の門を抜けて街に入る。そのため、兵の詰め所は内側の門の外と中の2つあり、街の外の巡回・内門の中と外・街中の巡回の4つを当番制で割り当てられているそうだ。


 その外壁は南北に長く、不正入国のないよう越境道を囲むように緩いカーブを描いていた。5mほどの高さの内壁より更に高く見張り櫓も完備されている。

 とはいえ、全ての侵入路を壁では覆えないので、そこは魔道具に頼っているらしい。らしいと言うのは、さすがに部外秘情報なので詳しくは教えてくれなかった。当然である。




 そんな内壁の門をくぐり抜ける俺達とパウダ達の馬車。

後にはカールらの馬車20台が街の騎士に護衛されてついてくる。


 それ以外の人族と獣人達は順番に検問を受けている最中だ。



「うわぁ……ヒバリさん!あの屋根って瓦ですよね?」


「ん?瓦……っぽいね。王国じゃ見なかったけど、こっちには瓦屋根があるのか。あ、でも3階建てだと瓦じゃないんだね」


 沙里ちゃんに言われて周りの家の屋根を見た。

和風ではないが、確かに瓦屋根の家が結構ある。


「ノロワール帝国は召喚勇者様の影響を色濃く残す国ですので、ヒバリさん達が知っている技術が多く見られるかもしれませんよ?」


「でも、王国を創った人も召喚勇者なんですよね?

それよりもこっちの方が技術が発達してるんですか?」


 情報をくれた姫様に俺が聞き返すと、

ちょっと困った顔をしながら答える。


「初代国王は、元々大陸を統べていた帝国領のうちの、蛇の道山々があるせいで統治しづらかった西側を頂いたのです。そして、立ち上がったばかりの国を存続させることで手一杯で、大きな技術革新に精を出す余力がなかったと伝えられています。

 それになにより、鍛冶技術の得意なドワーフ族を抱える帝国領と同じ事をやれる者もいなかったのです。ここから北にある山と湖には資源が豊富ですので、ドワーフ族の方々は今も好んでその地に住んでいるのです」


「へー……じゃあ、王都やアイリンにいたドワーフの人って珍しかったんですね。どおりで他ではあまり見かけなかったわけだ」


「王国としてもそういった方々には便宜を図っているのです。例えば……仕事をしないのは許されませんが、受ける受けないは個人の裁量に任されています。位の高い者だと言って無理強いした者は罰せられます」


 うーん……?


 俺の感覚だと無理強いしても罰せられない人がいる方がおかしいんだが、

それはこっちの世界じゃ言っても無駄なんだろうなぁ。


「あ、そうか。じゃあ俺が依頼してた道具や装備は問題なかったから受けてもらえてたってことですね?」


「ええ。王都のランブ殿はいたく気に入られてましたよ」


 おお、それならよかった。

ランブさんには色々よくしてもらってたもんなぁ。


 ……元気にしてるのかな?


「っと、今はおいといて。つまりは、技術面では帝国が圧倒的に進んでいるってことですね?あー、時計を作ってるのはこっちの人だと思うと納得出来るか」


「そうですね」



 今現在、トニア・ユウ・ベラの3人が馬車の後ろに続く人族を警戒し、俺と姫様が難しい話をしてると思った美李ちゃんとピーリィは、街を見る方が楽しいと判断してキョロキョロしてる。沙里ちゃんは俺と姫様の話をじっと聞いていた。




「我が国を褒めて頂けるのは大変ありがたいのだが、

そろそろ馬車を止めてもらえないと我がゼスティラ騎士団本部を通り過ぎてしまうのだが」


 俺達の会話が途切れたのを見計らって、夕べ顔合わせをした副隊長のペストリーが斜め後ろから馬を並走しつつ声を掛けてきた。


「ああ、すみません。帝国は初めて入国したのでつい盛り上がっちゃってました。俺達の馬車はどこに止めたらいいですかね?」


 後ろを見たら、すでにカールらは別の場所へ移されるらしく、左手の建物の前に馬車を並べ始めていた。俺達は先頭だったのでもっと進んでしまっているので見えなくなった。それを確認した後ろの3人も警戒を緩めていた。

 パウダと数名の獣人も俺達と同じくこれから事情聴取のために騎士団の詰め所へ行くために付いてきている。


「私に付いて参られよ!貴公らの馬車であれば、正面に停めても問題あるまい。ああそうだ、さすがに武器の携帯は遠慮願いたい」


 カール達が見えなくなってから2つ分くらい大きな建物を通り過ぎ、一際目立つ建物の門を潜る。その門には他の騎士達や街の人達がひっきりなしに出入りしていた。朝早くなのに賑やかなことだ。


 天井の高さに余裕のある3階建てで、出入り口に門番はいるものの街の人と親し気に挨拶を交わしている。詰め所というか市役所みたいな所だな、と周りを見ながら言われた場所に馬車を停めた。


 ペストリー副隊長に続いて正面の入り口から建物に入る。その際門番や巡回の騎士達が立ち止まり敬礼していく。それを片手を少し上げて制しては進んでいく。


 先頭を副隊長と2人の騎士、後方は2人の騎士が俺達を挟むような形だが、決して警戒や束縛、ましてや強制で歩かせる事なく穏やかな雰囲気で統一された行動だ。よく訓練されている証でもある。



 こう、イケメンの副隊長がやると様になる仕草に、すれ違う女性達が溜息をこぼして立ち止まるわけで。ガラの悪い連中がいないから余計に爽やかさが損なわれない雰囲気が保たれている。

 おかげで、冒険者姿の俺達の方はそれほど好奇の目を向けられずに済んでいる。もしかして、そういう効果も考慮した行動なのかもしれないなぁ。



 吹き抜けの1階ロビー。その左奥にあった階段を上がり、2階へ着いた正面の扉前で待つように言われた。振り返ると、1階のロビーから正面入り口まで一望できる。手摺に近づいてそれを眺めていると、ピーリィが背中に飛び乗って俺越しに同じ風景を眺めた。


「ひといっぱいだね」


「そうだね、これだけいて揉め事がないのすごいねぇ」


 誰もが忙しそうにしているが、決して罵声や怒号はない。

時折人を呼ぶのに多少大きめの声が飛ぶ程度だ。


「あたしもみたい!」


 手摺に肘をついていたら、その下で美李ちゃんが手を伸ばしてくる。子供の身長だとジャンプしないと手摺を越えられないみたいだ。120cmほどの高さじゃ無理もないか。


「はい。よっと」


 脇を持ち上げようとしたら首に巻き付かれてしまったので、抱える所を変えてお姫様抱っこの形で落ち着いた。当のお姫様はご満悦のようだ。



「お待たせしました。全員こちらの部屋へどうぞ」


 扉の前に控えていた2人の騎士が声を掛けて、同時に扉を押し開く。



 俺達はトニアさんを先頭にして順次入室して、最後にユウとベラが入った後ゆっくりと扉が閉じられた。




 会議室のような応接室は派手な装飾はないものの壁は飴色で統一され、一定間隔に燭台がつけてある。その部屋の中に1つ1m位の机が8つ。口の字のように中央を囲い、それぞれに並ぶ椅子も全て木製でつやのある安物じゃないと一目でわかるもの。この世界に来て折り畳みのパイプ椅子を見たことがないから当然ないし、このような場所だとただの丸太椅子もなかった。

 騎士団ともなれば金属のブーツを装着しているためか、さすがに床に絨毯はなかった。あってもすぐボロボロになるだけなのだろう。その代わり、壁には帝国と騎士団のシンボルらしき絨毯が掛けられている。


 席に案内されるが、まずは奥に座る人物に合わせてその正面中央に姫様と沙里ちゃん、そしてパウダ達獣人3人を座らせた。


 残りの俺達は後ろに立つためにそれぞれが動く。

まだ美李ちゃんを抱きかかえたままだったので降ろそうとすると、


「そのままでよい。堅苦しい者がおるわけでもないのでな、落ち着けるのであれば自由で構わんよ」


 副団長を横に立たせ、部屋の奥中央に座る女性が声を掛ける。



 いや、俺が落ち着けないんだけど……

なんだか降ろしにくい雰囲気作られちゃったなぁ。



「まずは自己紹介をさせていただこう。私がこのゼスティラの街の防衛騎士団団長のブリゼだ。話は粗方聞いているが、当事者らに直接聞いておきたかったので呼び出させてもらった。応じてもらい、感謝する」


 目の前に座る姫様がこちらを振り返り見上げてくる。

そっか、一応代表は俺って事になってるんだっけ。


「こんな格好で申し訳ありません。私がこのパーティのリーダーのヒバリです。今は冒険者として登録していますが、この先の商売のために商会ギルドの登録をしたくこの度越境してきました。無事立ち上げられた際にはこちらでもお世話になる事もあるでしょうし、よろしくお願いします」



 ……ん?


 俺の挨拶が終わり軽く頭を下げて周りを見ると、

室内にいた騎士達もパウダ達も何故か驚いた顔で固まっていた。


「す、すまんヒバリ殿。貴公らは商人希望なのか?」


「はい、そうです。食材食品関連の商売を、」


「ここの者ら全員で?」


 質問してきた副団長のペストリーが食い気味で質問を続ける。


「どうなるかは分かりませんが、出来たら全員でそうしたいと思ってます」


 うーん、と唸って副団長の質問が終わった。

すると次は団長のブリゼからも質問を受ける。


「貴公らは我が国に仕官する為に国を越えてきたのではないのだな?」


「はい。当面の資金稼ぎに冒険者として動くことはあっても、目標はあくまで商売をする事ですね」


「悪辣なる男らを捕らえ獣人らを守り、更に行く手を阻む魔物を蹴散らしてきたと聞いているが?」


「まぁ、成り行きでそうなりました。獣人だからと虐げる行為に苛ついたのも事実ですけどね」


 抱き着くのに疲れたピーリィは、今は肩車状態だ。

そして何故か今は俺の頭を撫でている。


「ふむ……報告にあるほどの実力者となるとおしいが、本人達が望まぬのなら強制もしない。が、仕官する気になったらいつでも言って欲しい」


 そう言って団長さんが微笑む。



 よく見るとこの団長……ブリゼもかなりの美人だ。騎士団で統一された防具に、団長と副団長だけ色違いのマントを付けている。

 銀よりもさらに白い長髪で、所々に黒が混じっているようだ。白髪に流れるような黒髪を見て習字の筆を思い出していた。


「……ん?ああ、この髪か?斑で醜いかもしれんが、こうして外に出しておかんと痛むとうるさくてな。我慢してくれ」


 俺の視線に気づいたブリゼが笑顔を苦笑に変えて言う。


「いえ、醜いって思ったんじゃないです。俺の国……えっと、故郷に水墨画っていう綺麗な絵があって、それを思い出してただけです。ジロジロ見ちゃってすみません」


 プリゼにとって髪はコンプレックスだったと悟って慌てて頭を下げる。意外だったのか驚く団長と副団長、俺の髪や腕を引っ張るピーリィと美李ちゃん。座っている面々の顔は見えないのでよく分からないけど、


「ちょ、まってなんで!?2人とも痛いから!」




 俺の犠牲(?)で話は戻り、カールの行動や隷属の魔道具所持の事情聴取が始まった。パウダ達も嘘偽りなく証言すると誓い、当時の状況を語る。


 ここでは姫様をメインに話を進めてもらって少し下がって休ませてもらった。途中で何故かペストリーから水墨画の事を詳しく教えてほしいと迫られた。

 なんで?と聞き返すと白い肌の顔を真っ赤にして慌てるイケメンが出来上がってしまった。近くの騎士からも「私からもお願いします」と言われ、気の抜けた返事だが了承してしまった俺がいた。


 結果としては、俺より習字に通った経験のある沙里ちゃんの方が詳しく、この世界には墨汁はないけど大まかな作り方と、インクを薄めて少し青みがかった水墨画っぽい簡単な絵を描いてまとめてペストリーに渡してた。


 熱心にそれを読む副団長。やり遂げた感のある沙里ちゃん。

2人ともこんな熱いキャラだったのか?




「もう!ヒバリさんてば鈍すぎます!」


 1時間後に無事解放された俺達は応接室を出て来た。

そこから俺は沙里ちゃんに叱られている。



「そっかぁ……副団長さんは団長さんの事が好きなのか」


「あれだけアピールしてたら分かります!あ、副団長さんに墨汁作成で使うかもと思ってゼラチンを分けてあげましたけどいいですよね?」


 いいもなにも事後報告だし……いいんだけどね。


「全然構わないよ。てか、よくそんな事知ってたねぇ」


「わたしも詳しくはないんですけど、材料だけは印象に残ってたおかげで覚えてたんですよ。それに、墨汁が作れなくても炭でも絵は描けるって言ってありますよ」


 色々考えてるんだなー。

そして女の子を前に色恋話はやっぱすごいわ。


「なんにせよ、あの2人がくっついたらお似合いだよね。

それこそ美男美女ってやつだ」


「ですよね!あぁ……結婚式はどんな服を着るんでしょうねぇ」


 それから沙里ちゃんはユウやベラ、美李ちゃんとピーリィと共に花嫁衣裳の話で盛り上がっていた。

 俺としてはカールの所属していたドルエス商会もきちんと捜査すると約束してくれたから、そっちは騎士団に任せておけばいいと思うと肩の荷が下りるってものだ。





「ヒバリさん、ちょっとよろしいですか?」


 後ろを歩いていた姫様とトニアさん。

さっきから何か考え事をしてるのは分かってたけど。


「もう一度ブリゼ様に面会します。付いてきてくださいますか?」


 その後真剣な顔をした彼女が、その理由を告げた。




 騎士団長ブリゼとは帝都で皇帝一族と顔合わせをする時に、皇女の護衛見習いとして後ろに控えていたそうだ。ブリゼの方が年上ではあったものの年も近い事もあり、数日共に過ごした経験がある。

 そのブリゼに自身がノーザリスであると明かして、これから帝都へ向かうと伝言を頼めないか相談したいらしい。


「ここで明かすのはまだ早いと思いますけど、知り合いとなればむしろ安全かもしれないってことですか……うーん」


「私もしばし悩みましたが、何の連絡もなく訪れるよりは前触れをしておいていただけば、その分事が運びやすいと判断しました」


 トニアさんは姫様の決断に従うスタンスか。


「もう結論が出てるのなら、それでいきましょう」


「もし裏切られれば、帝都に付く前に囲まれるかもしれませんよ?」


「何もなく油断して進むより、罠があるものと思って進んだ方が安心できますよ。俺の世界には”石橋を叩いて渡る”って言葉があるんです。待ち伏せしてきたなら、それを避ければ敵の数が減るって話ですよ。俺も訓練がてらにレーダーマップの範囲をもっと広く保てるようにやってみますよ!」


 あとは団長と帝国側の出方次第ってところかな?

王国と同じくおかしな宗教団体がどこまで食い込んでいるやら……



「ありがとうございます。では、急ぎ取り次ぎをして参ります」


 トニアさんと姫様が詰め所に引き返し、俺も他の皆に馬車で待っててもらうように言ってからパウダ達に別れの挨拶をして2人を追いかける様に詰め所へと戻って行った。



 さて、昼飯前にはけりをつけちゃいますかね!




仕事後に医者に行き、薬を飲んで寝てました。


寝起きで一気に書き上げたので何か間違いがないといいのですが……

あとで見直せたらと思ってます。

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