2.どうすれば破棄できるのかな
ミリーシアはさっそく自室に戻ってからどうやったら婚約破棄出来るか考えていた。
自分から婚約破棄するとはいえ、公爵家や我が家にも影響がないように、つまり円満に破棄するのが一番良いのだがそれが難しい。
「どうすればいいのかな…」
早速うーんと行き詰まり、お茶でも飲みながら考えようかと思っていた矢先にノックの音が聞こえた。
「ミリーお嬢様、お茶をご用意しましたけれど、どうですか?」
「アリー!ありがとう!ナイスタイミング!」
お茶を持ってきてくれたのは私の専属侍女のアリーナ。
ミリーシアにとっては小さい頃からずっと一緒で姉のような存在でもあった。
侍女ではあるけれど、2人きりの時にはアリーナが言葉を少し崩して話してくれることがミリーシアにとっては嬉しいことだった。
「何かお悩みのようでしたけど、何かありました?」
「あーそれがね、円満な婚約破棄ってどうしたらいいのかな〜って。」
「え?!」
アリーナは思わず茶器を落としそうになった。
確かにアセルから良く思われていないと散々口にしていたが婚約破棄の話だなんて思いもしなかった。
「その、ミリー様?どうしてそのようなお話に…?」
「前から言っていたでしょ?アセル様から嫌われてるのよ、だから婚約破棄よ!
で、なんかいい案ない?考えてるんだけど中々思いつかなくて…」
アリーナは少し考えていた、果たしてこれでいいのかと。
「あの、その前に、本当に良いのですか?その、カウディーヤ様のことをお慕いしておりましたよね?」
「…もうね、いいの。」
ミリーシアは微笑んでいたが、アリーナにはそれが真実でないと分かっていた。
恋心は抱いていても好いた相手からずっと拒絶されるのは堪える、だから離れたい。
離れる理由が欲しいんだと、直感した。
だったら自分はミリーシアの味方なのだから、婚約破棄ように手助けをするべきだろう。
「婚約破棄、ですよね。私の考えでよければお聞きください。」
「え?!なんかあるの?何?!」
それは今日もメイド達の間で話題になっていたことだ。
「最近王太子殿下がもうすぐご成婚されますよね。それも恋愛結婚だそうで、メイド達の間でも羨ましいと話題になっております。」
「恋愛結婚ね、うん。」
今のミリーシアには心が痛い話だ。
今までの貴族社会では恋愛結婚というのは全くと言っていい程なかった。
ほとんどが政略的なもので結ばれており、もちろん仲慎ましい夫婦もいるが恋愛感情を抱くような夫婦はほぼ見受けられない。
例え政略でも結婚した以上は家族になる、仲良くする、それ以上でも以下でもない、というのが今の貴族の結婚だった。
「その王太子妃殿下が恋愛結婚を推奨しておられるそうです。」
「へぇ。」
…
「え?つまりどういうこと?アリー?」
ミリーシアは妃殿下が恋愛結婚推奨のことを知らなかった。
最近夜会にもお茶会にも顔を出していないし、情報不足だった。
「ですから、お嬢様も恋愛結婚をしたい!と言うのはどうでしょうか?妃殿下公認ですし、不誠実なことではないと思います。
確かカウディーヤ家とは婚姻にあたって特に取り引きがないのですよね?」
確かにカウディーヤ家とは取り引きがないと父から聞いている。
普通ならば何かしらお互いが利益になる取り引きがあるはずだ。
しかしそれがない、何故婚約者になったのかすらミリーシアには分からない。
「前にも話したけどそうなの。私には話せない秘密の何かがあるのかなあ?」
「私には分かりかねますが、作戦の方はどうしましょうか?」
「あ、そうだった!その恋愛結婚の作戦すごく素敵!
早速アセル様に言わなくちゃ!!!」
ミリーシアは善は急げということで早速アセルに訪問の手紙を書くことにした。読まれることも、来訪の時間を空けることすらもされないだろうが、一応礼儀というものである。
「よし!アリー!これをアセル様に届けるように出しといて!」
アリーナは手紙を受け取り部屋を出て行った。
ミリーシアはこれで婚約破棄ができるはずだと、確信した。
それを阻止されることも知らずに。




