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第7話「溢れる泥」

固体になった炎のように島を焼いていた。昴は火消しに飛び回っていた。あちこちの発掘施設から噴出し始めた、“アレ”に集束爆弾を投下、薙ぎ払った。同じ戦空を殺しあった中の敵戦闘機が飛んでいても、暗黙の了解で見なかったことにしていた。モスキートが同じ双発で後継のホーネットに負けず劣らずの活躍で襲撃を繰り返していた。機首下の57mm砲が撃たれる度に、地上は戦車に襲われたようになった。だが、それだけだ。「未央ちゃん、これ無理だ」「……敵集団はさらに北進。止めないと、後退してる部隊が襲われるよ」「機銃掃射に入るから、援護お願い」「大人しく待ってるから、突っ込んでこい」友軍だったものの群れに機関砲弾を撃ち込む。天板を貫いた砲弾で装甲車が沈黙し、“それ”の四肢が千切れ飛ぶ。だがそれだけだ、封じ込めに失敗していた。陸軍の封鎖線と近接支援する航空爆撃は効果はあっても目的を失った。際限のない群れの物量が鉄量を上回ったからだ。今はまだ海岸線を主な防衛線に、緊急で到着した戦艦群の主砲が食い止めていた。1t爆弾に匹敵する戦艦の榴弾が、島の地形を削り土砂を巻き上げていた。


「次は昴が援護するから未央ちゃんがーー」昴は雲の切れ間に何かがよぎるのを見て「ーーなんてこと!二式大艇!二式大艇!」空中戦艦の渾名を持つ四発の怪物が四機、単座戦闘機の四式に挑んできた。二式大艇の顔であるコクピットに大きな膨らみがある。遺跡由来技術で開発された熱線兵装装備機だ。二式大艇の背中の目玉ーー熱線照射砲塔ーーがぐるりと回り、焦点を合わせてくる。「雲に隠れて熱を拡散させる、ついてきて未央ちゃん」「しっかり付いてるよ」風防のアクリルを透過した熱が、昴の肌を焼いた。真夏に肌を晒しているような熱が、人と機械の温度を上げた。「熱線の出力が上がってる?」と昴は眉をしかめ「アチチ!」と肩を揺すった。雲に大穴が開けられたが、昴と四式はさらに深く雲に潜り身を隠した。


白い世界。視界の全てを雲が流れていく。翼が雲を纏っているのが見える。視界ゼロ、から唐突に陽の光に差し込まれる。雲を出た。「未央ちゃん」「後ろにいる」頼もしい、と昴は勇気を燃やした。「酷い空っス」雲から出たそこには変わらない戦空が出来上がっていた。ジェットとプロペラが入り乱れ、遺跡由来技術の得体の知れないものが飛び交い、誘導ロケットが戦闘機を追い回した。「重爆隊の進入はまだかな」「まだ見えない」爆撃でコモンウエルス最大の発掘施設を吹き飛ばし、遺跡の縦坑に戦闘機隊が飛び込む手筈だ。狂気だが地上部隊を送り込むのは不可能だ。動力炉を破壊した時の脱出ができない。「ッ!誘導ロケットだ……未央ちゃんを狙ってる!」白煙が昇り、ラダーを小刻みに動かし軌道を変える誘導ロケットの頭は、未央の四式を狙っていた。「どっちだ!?」あるいは両方か、未央が翼を翻す。電波か熱か、追尾している装置を見極める必要があった。逆電波探知機が警報をだし、レーダーが照射されていた。四式のコンピュータは波長を解析し、対抗波長の電波を当てることで誘導ロケットの追尾を切った。「機械に助けられたっスね」「……複雑な気分」

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