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第9話「もっとも熱い氷」

紅茶の氷山なら氷山空母は紅茶空母になるのだろうか、と考えていたルーナ・シャインナイツの思考が現実に戻ってきた。「ポップペップバーン大変だ、紅茶党と珈琲党だったら、どっちの党に入るべきなんだと思う!?」「私は無糖派ですので」「逃げるなポップペップバーン!」水上艦や爆撃機や攻撃機などにとって、機銃座というものは防御兵器だ。襲われることが前提で、守る為に存在している。だから基本的には、機銃座につく者たちは見送ることしかできない。「どこに行くんだろう?」シャインナイツが次々に空へと吸い込まれていく飛行機械の群れを帽子を振りながら呟く。「わからない」知らなくてよいことは、知らされはしない。攻撃目標はーー防御兵器に入っている連中には不要な情報なのだという。だから……見送る飛行機たちがどこに飛んだのか、ポップペップバーンも、そしてシャインナイツも知らないことだ。


「帰ってくるとき、減ってないといいな」「……そうだね」ポップペップバーンは頷くしかできない。だから「お菓子食べる?」「ポップペップバーン、ちょっと食べ過ぎだよ!」軽くて退屈な冗談をかけた。ポケットの中から、こっそり貰ったビスケットを取り出し、シャインナイツに一個だけあげる。お菓子は心を豊かにするのだ。「あーん」と食べようとしたが、その菓子は既に氷になっていた。「あんがー!?」「あー、あー……」爆弾の降る夜を恐れなくても、歯を襲う氷の刺激は恐ろしいと思う、ポップペップバーンだった。


木箱から183mm砲弾を取り出しては、空になった弾倉に載せていく。砲弾を持ち上げるたびに、鍛えられた筋が膨れ熱をもつ。鋼で鍛えられた臓器が、大口径砲弾を飲み込んでは消していく。警報が鳴ったのはそんな時、「空襲、空襲、対空配置につけ、隔壁閉鎖」予備弾薬装填の為の機構、その蓋が閉まる。ポップペップバーンとシャインナイツの二人は、影が広がるのを見上げていた。ハッチが閉まるほど、空はより小さくなり、二人の顔に夜が手を伸ばす。それでも、ハボクック直上に落ちた爆弾かロケットか、ヴォイドシールドと衝突して輪形の稲妻がほとばしる様子が見えた。空爆だ。未完成だろうが、完成していようが、爆弾はいつでも降ってくる。やるべきことも変わらない。


ポップペップバーンは残していたクッキーを全て口の中へと押し込む。もしゃもしゃとカケラをこぼしながら、持ち場へと走った。シャインナイツも後に続く。例えそれが、死へと向き合う場所であったとしても、向ける足に迷いはなかった。

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