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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー力を持った者は、戦場を選ぶ(灰港都市)ーー
109/112

109話 確認事項

――第一拠点・裏山。


森に足を踏み入れた瞬間、世界が変わる。


外界の音が遠のく。


風はある。

だが、葉は揺れない。


鳥の声も、虫の音も、どこかで途切れている。


それは静けさではない。


意図的に削られた音だった。


誰かが、ここを“戦場に変えた”痕跡。


◆◆◆


チームA。


ネロが右手を上げる。


「止まれ」


声は小さい。


だが、その一言で全員が止まる。


ラザロは岩陰へ滑り込み、

カインは踏み込んだ足を空中で止める。


リリスは一歩だけ後退する。


迷いのない動き。


後方。


そこが、自分の役割だと理解している。


そして――


ノアだけが、わずかに前にいる。


◆◆◆


ネロが地面を見る。


踏み跡。

折れた枝。

削れた土。


だが、それは不自然だった。


「……雑だな」


カインが鼻で笑う。


「バレバレじゃねぇか」


ネロが首を横に振る。


「違う」


一拍。


「見せてる」


さらに続ける。


「こいつらは“見せ方”を知ってる」


ラザロが低く言う。


「ダリオですね」


ネロが笑う。


「正解だ」


◆◆◆


ノアが静かに言う。


「誘導」


ネロが頷く。


「だが悪くない」


視線が全員を捉える。


「ここで整理する」


一拍。


「確認事項だ」


空気が締まる。


撃ち合いは、まだ始まっていない。


だが――


勝敗は、すでに動き始めている。


◆◆◆


ネロが指を一本立てる。


「カリナ」


カインが即座に言う。


「俺が行く」


ネロが頷く。


「正面から来る」


「止めろ」


カインが笑う。


「潰す」


◆◆◆


二本目。


「ダリオ」


ネロの目が細くなる。


「攪乱」


「誘導」


「思考をズラす」


撃つ前に勝負を終わらせるタイプ。


ネロが言う。


「俺が見る」


ラザロが短く言う。


「最適です」


◆◆◆


三本目。


「カサンドラ」


リリスが言う。


「分析役」


ネロ。


「目だ」


ラザロが補足する。


「位置を割られる」


ネロが頷く。


「だから――」


一拍。


「動きを読ませるな」


◆◆◆


四本目。


「ルアン」


空気が一段重くなる。


カインが言う。


「頭か」


ネロが答える。


「戦場そのものを作る」


ノアが言う。


「全体を見ている」


ネロ。


「だから」


「崩せば、全部崩れる」


◆◆◆


最後。


ネロの視線が森の奥へ向く。


「アシュレイ」


沈黙。


ラザロが言う。


「射程不明」


ネロが低く言う。


「つまり――」


「どこからでも来る」


リリスが静かに言う。


「見えない攻撃」


ネロが笑う。


「そうだ」


◆◆◆


ネロがまとめる。


「カリナ=前」


「ダリオ=混乱」


「カサンドラ=目」


「ルアン=頭」


「アシュレイ=距離」


一拍。


「全部揃ってる」


カインが笑う。


「最高だな」


ネロ。


「だから――」


低く言う。


「一気に崩す」


◆◆◆


視線がノアへ向く。


ネロが言う。


「お前が起点だ」


ノアは頷く。


「分かってる」


その目は、すでに戦場の奥を捉えている。


索敵ではない。


最短で“勝ち”に触れる動き。


ネロが続ける。


「位置を取れ」


「穴を開けろ」


ノア。


「了解」


◆◆◆


リリスが小さく言う。


「私は後方」


ネロ。


「絶対に前に出るな」


リリスは頷く。


その手には、小さな注射器。


透明な液体が揺れている。


カインがそれを見る。


「頼むぞ」


リリス。


「限界を越えたら使う」


一拍。


「越えなければ使わない」


◆◆◆


ネロが言う。


「動くぞ」


全員が散開する。


森に溶ける。


◆◆◆


一方。


チームB。


ルアンが手を上げる。


「停止」


全員が止まる。


自然と円が形成される。


カサンドラが端末を見る。


「敵、分散」


「だが統制あり」


◆◆◆


ルアンが言う。


「ネロが指揮」


ダリオが笑う。


「崩せば終わる」


カサンドラ。


「ノアは索敵」


カリナ。


「先に行く」


ルアンが即座に言う。


「無理です」


「見つかります」


◆◆◆


カサンドラ。


「ラザロは射撃支援」


ダリオ。


「動きを縛られるな」


ルアン。


「遮蔽物を使う」


◆◆◆


カリナ。


「カインは?」


ルアン。


「正面突破」


「あなたが止める」


カリナが笑う。


「任せて」


◆◆◆


そして。


アシュレイ。


ルアンが言う。


「あなたは自由」


アシュレイ。


「了解」


カサンドラ。


「位置共有はこちらで管理」


ダリオ。


「好きに撃て」


◆◆◆


ルアンがまとめる。


「ネロを崩す」


「それで終わり」


カサンドラ。


「情報支援」


ダリオ。


「攪乱」


カリナ。


「前衛」


アシュレイ。


「狙撃」


◆◆◆


ルアンが静かに言う。


「これは戦闘ではありません」


一拍。


「構造破壊です」


◆◆◆


ネオンの声。


「両チーム停止確認」


「完全に読み合ってる」


ソフィアが言う。


「いいわね」


「撃つ前に勝負が始まってる」


◆◆◆


森の中。


誰も撃っていない。


だが。


全員が理解している。


次の一手で、


戦場が動く。


◆◆◆


ネロ。


「行くぞ」


ルアン。


「開始」


◆◆◆


同時に――


二つのチームが動く。


だが。


完全な同時ではない。


わずかに。


ほんのわずかに。


最初に動いたのは――


ノアだった。


音もなく。


気配もなく。


森の奥へ消える。


その動きは、索敵ではない。


戦術でもない。


――「結果」に直行する動きだった。

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