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一章8

  朝方、シルビアさんが朝の身支度などを手伝いに来てくれた。


 ちなみに、思い出したけどこの世界に来て間もない頃、あたし付きの侍女の中に同じ名前の女性がいた。尋ねてみたら、確かにシルビアさんはあたしの侍女をしていたと打ち明けてくれたのだ。

 あたしが何者なのかを見定める為にアデル様や神官長に命じられて、侍女として王宮に入り込み、監視をしていたらしい。陛下や王妃様などに害をなさないかを判断する為もあったという。


『申し訳ありません。髪と瞳の色を魔術で変えて、変装をしてあなたにお仕えしていました』


 だますような真似をしてすみませんと謝り倒すシルビアさんにあたしは仕方がないよといって、なだめた。


『シルビアさんは陛下や他の方々に危険がないかどうかを確かめる為にあたしを見張っていたんでしょう?その判断は間違っていないと思う。むしろ、疑われていても仕方ないよ』


 そういったら、シルビアさんは泣いてしまった。


『…私などにはもったいないお言葉です。これからは誠心誠意お仕えいたします』


 あたしにそう約束をしてくれたのであった。後、九日が経ったら、シェーンに行かなければならない。

 そこに魔物たちの住むという魔界と地上を隔てる結界があるという。あたしは、その時の為に修行を頑張らなければいけないと決意を新たにした。

 アデル様への想いは封印しよう、気持ちにも蓋をしたのだった。


 月の神殿に向かう前に身支度をする。

 顔を洗って、歯磨きをした。歯磨きは木製のブラシで粉状の歯磨き粉を水に溶かして使う。

 それで磨くと意外と汚れが取れたので、重宝している。

 それらを終えて、髪をブラシで整えた。着替えもすませたら、準備はできた。


「…では行きましょうか、巫女様」


 シルビアさんに言われて、あたしは頷く。白の上下もやっと、慣れてきた。

 後、一週間の中で魔術や巫女としての基礎を学ばなくてはいけない。

 部屋を出ると、シルビアさんと二人で月の神殿に向かった。


「シルビアさん、昨日ね、魔物が出たんですよ。アデル様が来てくださったから、無事でしたけど。新月の日だとは知らなかったから、気をつけないとって思ったんです」


「…まあ、そんなことが。アデル殿下がおられてよかったですね」


 シルビアさんは心配そうに眉をしかめた。あたしは本当ですよと頷いた。


「アデル様には叱られました。月の神殿は巫女の力で守られている、魔物が入ってくるのはそなたがまだ半人前だからだって。もっと、修行を頑張らないといけませんね」


「そうですね。巫女様、いえ。セダ様はもう少し、気をつけられた方がいいですよ」


 あたしは何をとは尋ねなかった。

 シルビアさんはそれ以上話しかけてこなかった。

 二人して、黙って廊下を歩いて、神殿を目指した。


 神殿に着くと、二代前の巫女様と神官長、アーシェ様の三人がそろっていて、これには驚いた。


「…ああ、巫女殿。来られましたね」


 アーシェ様がにこやかに微笑みながら、あたしに声をかけてくる。明るい中で二代前の巫女様を見ると白いものが混じっていても背筋をしゃんと伸ばしているのがすごいなと思う。


「…おはようございます。今日はアーシェ様もそろってどうされたんですか?」


 あたしが尋ねると、アーシェ様と巫女様は顔を見合わせる。神官長は真面目な顔つきになって、咳払いをした。


「セダ様、昨日、月の神殿に魔物が現れたでしょう?あれについて、皆で話し合っていました」


「え?もしかして、他の場所でも出たんですか?」


 神官長はあたしの問いかけに重々しく頷いた。


「…実は太陽の神殿と闇の神殿にも魔物が出没したのです。そのせいで闇の神官や太陽の神官が襲われ、五人ほどが怪我をしました。そのうち、二人は大けがをして。それでなのですが、あなたに頼みがあります」


 あたしは首を少し傾げながら、続きを促した。


「月玉の巫女は治癒や浄化、鎮めの力を持ちます。その力で神官たちが受けた邪気を祓い、怪我を治してほしいのです」


 それを言われて、呆然となった。

 あたしに早速、力を使えと?


「…あの、そんな無理です!あたし、まだ初心者なのに」


 大声で拒否したら、巫女様とアーシェ様が意外な行動をしてきた。

 何と、二人は頭を下げてきたのだ。


「お願いします、セダ殿。今の私では月玉を扱うことはできません。新しい巫女でなければ、力を使うのは難しいのです」


 巫女様が真剣な口調でそう言ってくる。アーシェ様も同じように頼んできた。


「…そうです。わたくしは魔物を鎮めたり、治癒はできてもあなたのように邪気を祓うことはできませんの」


 だから、お願いしますと言われて戸惑ってしまう。

 あたしはしばし、考え込んでしまった。

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