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答えながら真っ赤になった少女は、頭に血が上って自分が何を言っているのかわからなくなっていた。
いつも遠くから見ているだけだった、大好きなアルフ殿下が目の前で、話しかけてくれたのだから。
自分より一つ年下の美しい王子は、今年十二歳になるはずだ。
柔らかなウェーブのかかった、肩までの黒髪。乗馬服に包まれた、ほっそりとした姿態。
過敏そうなきつい顔立ちを、黒い大きな瞳と少女のように長いまつげが和らげ、妖狐の一族の印、とがった大きな狐の耳は、手触りの良い黒い天鵞絨のように滑らかだ。
天使のように笑うと母に褒めそやされている多感な唇は、今は溢れる不満でへの字に曲がっている。
銀の髪に青い目の兄、セイレン王子の美しさを褒めたたえる者が多い中、ネネはこの黒髪の皇子に魅せられ、馬場で見かける日をいつも楽しみにしていたのだった。
言わなければ、とアルフは思った。
君が手入れしたマリンカを駄目にして、すまないと。
だが意地っ張りの王子の口から出たのは、全く違う言葉だった。
「母上は厳しい方だから、気を付けてお仕えするように」
「はいっ!」
飛び上がるように答えた少女が可笑しくて、ちょっと気分が良くなる。
相手に(特に女性に)気に入られたい、と言うのも、この王子の生来の性格だったので。
「マリンカを、一枝おくれ」
「はいっ!」
新しくネネが切ってくれた見事な一枝を受け取って、アルフはにっこりと笑いかけた。
十二歳の少年の、悩殺の一撃。
天にも昇る心地のネネを見て、守り役のローワンは後ろでため息をついた。
数年後、舞踏会で花のような美女たちに囲まれて笑いかけている姿が目に浮かぶ。
(末恐ろしい王子様だわい)




