92 専属狩人決定戦③
「第2競技は宝探しだー!」
司会が大きな声で叫んだ。
「うぉおおおおおおおおおお!!」
観衆は盛り上がっているが、余所者はルールを知らない。こそっとロンタウに訊ねてみる。
「ああ、これはこのヒシガツマ村に住む住民が、丸い玉を隠すんだ…ほら、今審判が掲げてる、ちっちゃい10cmくらいの玉な。あれを街中と、外の砂漠から探してくるって種目だよ」
なるほど、腕っぷしのチェックの後は、採取の練習ってわけか。
「ちなみに、こんなに住民が盛り上がっているのは、自分が隠した宝が最後まで見つからなければ、金一封がもらえるからだ」
「ほえー、なるほどな。金かかってるなあ…」
「何を言う。この専属狩人決定戦、優勝者には賞金が出るんだぞ。ホントに村を挙げての祭りだ。だから、余所者なんかにヒシガツマ村の金を渡すわけにいかないって、皆躍起になってるぞ」
確かに他の参加者からの視線が痛い気がする。
「賞金出るの!?くっそ!こんなことならアルカに負けてあげるんじゃなかった!」
「負けてあげた?実力で負けたんでしょ」
「なにをー!」
姉妹はいつも通り騒いでいる。
しかし、この第ニ競技、あまりにも余所者が不利すぎる。土地勘もないのに、どうやって探せというんだ。
「不利だ、そう思っただろ」
「実際不利だろ」
俺はロンタウに言い返す。
「まあ、多少は不利だが、そこまで変わらんと思うぞ。宝の数は100個を超えるし、村人も自分のために隠し場所は言わない。ちょっと探せば、1つは見つかるさ」
「諦める気はない。頑張るか…」
多少不利なのは当たり前だ。そこで不貞腐れていては何も始まらない。
「それに面白いルールもある」
ロンタウがニヤッと笑うとともに、各員に赤い筒が配られた。
もともと50人ほどいた参加者は、既に半数ほどまで減っている。実際、うちのカーリも怪我の影響で第2競技への出場は認められていない。
「で?この赤い筒は?」
「狩人なら見覚えがあるだろう」
ロンタウに言われてみれば、構造が救難信号を出す道具にそっくりだ。
なるほど、この紐を引くと、信号弾が飛び出すと。七色剣山戦で使ったものと同じようなものだろう。
「その信号を打ち上げると、審判がやってくる。そして、他の参加者に勝負を仕掛けることができるんだ」
「勝負。また殴り合いか…?」
「おいおい指導役、一応祭りだぞ。そんな野蛮じゃない」
さっきまで思いっきり野蛮だったんですが。
「祭りの出し物で勝負をする。それで、負けた方は勝った方に持っている宝を渡すんだ」
「なるほど、横取りチャンスってわけな」
祭りの出し物とは、エフテルと午前中に遊んだような、的当て等だろう。
「って、ロンタウからじゃなくて審判の話を聞けよな」
「悪い悪い、ありがとな」
ロンタウの言う通りだ。ちょうど審判はその勝負について話をしている。
「勝負は基本的には合意の上行われるが、宝の所持数が自分より少ない人間に勝負を挑まれた場合は勝負を断ることができない。そこだけ注意!」
なるほど、逆転のチャンスとしての取組なのね。
「それと、その信号弾…もとい勝負弾は、1人1つ。何度も使えるものではないから、そこも注意!」
まあ、それも妥当だろう。何回も使えるのであれば、延々と勝負だけで粘ることができてしまう。それを避けるためのルールだろう。
「参加者のお前ら!そろそろルールはいいか!今回はアオマキ村からの客もいるから細かく説明したが、ぶっちゃけ去年までと同じだ!宝を探し、祭りで奪い合え!以上!解散!」
司会の合図で、一斉に参加者が散っていく。
その場に残されたのは、俺と覆面マッチョと、ロンタウ、それと四極の面子だ。
「じゃ、今度こそ負けないぞ。じゃな!」
ロンタウは走っていく。
「宝って言ったって…なあ…」
コウチはすでに戦意喪失しているようだ。
「コウチー!見つけられなくても、多く持っている人間から奪えば良いのですわよー!」
今競技は欠場となっているカーリから、コウチに野蛮な声援が飛ぶ。
そ、そうか!と何かに閃いた様子のコウチは、意気揚々と走り去っていった。
「1つ見っけ!」
エフテルは司会が立っていた台をひっくり返して、小さな玉を拾っていた。司会が悔しそうにしているところを見ると、あれはあの男が隠した宝だったのだろう。
にしてもなかなか鋭いな、エフテル。
「案外この競技もあたしら向きかもね、アルカ」
「そうだね。隠されたものを見つけるのは得意…じゃ、お先するよ」
「あ、こら!抜け駆け厳禁!」
こうしてその場に残されたのは、俺と覆面マッチョ。
「で?村長がこんなとこにいていいのか?」
俺は覆面マッチョに話しかける。
「ナンノコトカナ?」
片言で話されると、逆に出会った当初を思い出して、より確信が持てた。
俺の言葉が鎌かけなどではなく、最早分かっているということが伝わったのか、覆面マッチョは観念した。
「流石我らが狩人君は鋭いね」
「声で分かる。筋肉で分かる。それと、第一競技で棄権したことで決定だ。いつの間にこの村に来てたのやら…」
「それは昨日の連絡船でだよ。その時から覆面で来たからね。シタコさえも俺が祭りに参加していることは知らないだろう」
「そこまでしてなんで…?」
ウエカ村長が忙しいのはよく知っている。村を簡単にあけられる人間でもない。
「この目で実際に若者たちを見ておきたくてさ。この村の、専属狩人決定戦の厳しさは知っていたからね。ぜひ近くで見て、状況によっては俺があの子らの壁になってみたかったんだよ」
「なるほどな…」
でも第一競技のときは壁になる前にチキったよな。とは言わないでおいてやろう。
まあでも、ウエカ村長にとっても、“四極”は大切な存在だ。アオマキ村の要ともいえる。
その活躍を直で見てみたいと思うのも無理はない。
「分かった。じゃあ、俺に考えがあるんだが…」
「なんだい?」
俺は覆面マッチョに耳打ちした。
前回の第一競技ではアルカとエフテルが勝った。
しかし、このまま調子に乗らせるわけはいかない。ここは1つ、大人の汚いところを見せるとしよう。
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