90 専属狩人決定戦①
更新再開です
さて、そろそろ祭りのメインイベントである、専属狩人決定戦が始まる。
俺とアルカは、そのまま2人で受付に向かった。
几帳面な性格のカーリとコウチは、早めに受付を済ませていたようだ。
「あれ、コウチ、あの大量の荷物は?」
「あれはロンタウ姐さんの家に預けてきた。流石にそのへんに放置しとくのもな」
「そりゃそうだよな」
ということで、全員身軽な恰好で、準備は万端だ。
狩人武器は持ち込んでいない。イベントの名前が名前なだけに、そこは事前に確認しておいた。結果、持ち込み禁止と。
「って、全員揃ったと思ってたが…」
「お姉ちゃんがいないね。はぁ…」
アルカは、軽くため息を吐いた。この程度は慣れっこというところか。
「受付終わっちまうよ」
周辺には、明らかに腕自慢といったような風貌の男たちや、少数の女性もいる。お、ロンタウもいる。
「ごめんごめーん!あたしも参加しまーす!」
そんな中、やっとやってきたエフテルは景品まみれだった。
「…はあ。とりあえず、荷物は持っててやるから、受付してこい」
「え、師匠ありがとう!行ってくる!」
ガチャガチャと仮面やら木彫りの像やらなんかよく分からない金色の輪っかなどを俺に預けて、エフテルは急いで受付に向かう。
無事に受付できたようで、エフテルがトコトコ戻ってきた。
「間に合ったー!」
「おう、お疲れ様。で、この大量の戦利品はどうする?」
「ああ、その辺にまとめておいてよ」
「雑だな…」
「そういうのって、取る過程に意味があるのであって、手元に残った現物にはあんまり思い入れはないんだよね」
ちょっと分かるな…。
やや共感しつつ、とりあえず部屋の隅っこにまとめて置いておいた。どうせほぼ玩具や記念品であって、高価なものなどは何もない。最悪盗まれても別に、という感じだ。
俺達は今、この村の集会所…、まあ、とりあえず人が集まるときに使われる大きな建物に集まっていた。
受付を済ませた人間は、各々思いをはせている。全部で50人いるかどうかくらいだな。
「そろそろ始まるな」
コウチが言う。
確かに会場がざわめき始めた。
「よく集まった、専属狩人候補の諸君!これから厳しい戦いを繰
り広げてもらうことになるが、覚悟はいいか!」
「おぉおおおお!!」
あれが司会か。
ちなみに俺はこういう勢いは苦手だ。今呼応していたのはアルカ以外の弟子3人。
「今更知らないやつはいないと思うが、専属狩人決定戦のルールを説明するぞ!」
おお、知らんから助かる。
「これから、全部で3つ、専属狩人の資質を試す競技が行われる!その総合成績で、今年の専属狩人が決まるわけだ!」
今年の専属狩人ってなんだよ。そんなに軽いものではないぞ、と思うが、あくまで祭りでの便宜上の優勝者の称号としてのものだ。そこに口をはさむほど野暮ではない。
「何師匠むすっとしてるの?」
「してない」
顔に出ていたらしい。
「では、早速場所を移して1つ目の競技と行こう。全員、ついてこーい!」
司会に言われるがままに、ぞろぞろと集会所を後にする人々。俺達は最後尾付近を歩く。
「ちゃんと逃げずにきたか」
ロンタウも俺達に合流してくる。
「素晴らしい賞品が待っているからな。逃げるわけないだろ」
「そ、そか…」
ロンタウは俺が言っていることを理解し、照れていた。
この祭りでロンタウに勝てば、ロンタウと大人の時間を過ごすことができる。俺はそのためにここにいる。
さて、案内されたのは、村の外だった。村の外にも関わらず、既に見物客が大勢いる。
「1つ目の競技は、強さを競う。受付順番で番号を振って、こちらで適当に決めた組み合わせで、喧嘩をしろぉ!」
うぉぉおおおおおおお!という地響きのような歓声が上がった。
え、こんな野蛮な祭りの行事があっていいの?
あれよあれよという間に、俺の対戦相手が目の前にやってきた。
しかも、審判もちゃんと付くようだ。
弟子たちも、それぞれが屈強な男たちと…あ、コウチだけ対戦相手が女だ!あいつ明らかに動揺してやがる…。
「何きょろきょろしてんだ。怪我人が参加していい催しじゃねえぜ!」
俺の目の前に立つ男が叫ぶ。
挑発かな。
筋骨隆々だが、アオマキ村にいるようなムキムキには及ばないな。
「始めの合図とか、あるのか?」
「特にない、両者合意のうえ、始めてくれ」
審判に確認したところ、そうらしいので、俺は対戦相手に、
「こっちはいつでもいいぞ」
と言った。
別に調子に乗っているわけではないが、数えきれないほどの獣や魔物を討伐している俺に、人間など今更脅威ではない。
「なら…いくぜぇええ!…え?」
大振りな相手のパンチに合わせて軽く拳を相手に打ち込む。それだけで力自慢の男は地面に倒れ伏した。
「見事なカウンター!」
審判にとりあえず勝利判定をもらったので、周りを見渡す。
アルカとエフテルはもう勝ったようだ。対人戦闘が得意だといつか言っていたような気がする。
カーリは、真正面からの殴り合いをしている。ありゃきついな。体格で負けている相手とまともに付き合っていたら体がもたない。
コウチは…
「くっ、どこを攻撃すりゃいいんだ!」
女体に触れるのを躊躇い、攻撃できずにいる。
あれも負けだな。
ロンタウは…、お、ロンタウも勝ったか。
かくして、1つ目の競技は終わりを迎えた。と思った。
「では、次の組み合わせも運営が決めたぜ!敗者の皆さんは存分に休むか、今のうちに棄権するように!」
げ、勝ち抜き式かよ。
「お師匠さん、お嬢、それにみんな頑張れー!」
案の定コウチは負け。
カーリはボロボロだが、なんとか勝ったらしい。本当に根性だけは誰にも負けないお嬢様だ。
「って、まじかよ」
「ふふふ、これも何かの巡りあわせですわね…!」
俺の次の対戦相手はカーリに決まったようだ。
他の面々はそれぞれ面識のない村人と戦っている。
「じゃあ、2回戦、はじめ!」
「行きますわよ!」
審判の声掛けと共にカーリが突っ込んでくる。
見るからにボロボロで、これ以上の怪我はしてほしくない。
ということで、俺は傷つけず、速攻で勝負を決めることにした。
敢えてカーリの間合いに入り、拳を誘発。その腕を取って関節技をキメた。
「うぎぎ…!動けませんわ!」
「審判、勝負ありだろ」
腕を固めたまま、地面にうつぶせに倒して、その上に乗る。これで完全に動けないはずだ。
「勝負あり!」
「うえ~ん…」
カーリはコウチの隣に泣きながら歩いていった。よしよし、よく頑張ったよ。
「って、アルカとエフテルはまた勝ちか」
試合の内容を見る前に、勝負がついてしまっていた。どれだけ強いんだ。
ロンタウはまだ戦っている。
得意の目を活かして、敵の攻撃を全て避けている。そして、先ほどのお俺のように、相手の大振りの攻撃にカウンターを合わせて勝利。綺麗な勝ちだ。
さて、50名ほどいた参加者も、残り10人以下。勝者であっても怪我がひどく、棄権や審判に続行不可能を言い渡されたりしている。
あくまでお祭りだ。大事にはならないような配慮はされているようで安心した。
観客は大盛り上がりだ。血の気の多い村だなあ。
さて、次は運よく全員知らない人間と当たり、全員顔見知りは勝利。
遂に残ったのは5人。
俺、エフテル、アルカ、ロンタウ、知らない覆面マッチョ。
1つ目の競技の第4回戦が始まる。
「俺、棄権スル」
突然、覆面のマッチョマンが妙に片言でそう宣言した。
「あ?」
今の声聞いたことあるぞ。
「ここで覆面の棄権宣言!次の種目への体力温存のためかー!?」
観客からは少しブーイングが出たが、審判は棄権を認めた。このあと2つの競技がある。ここまでの好成績を残せたのであれば、下手な怪我をする前に棄権するのもあり、というのが一般的な考えだろう。
だが、あのマッチョ、俺の予想では中身はあの人だ。そうなると、棄権した理由も分かる。なんなら、今の俺の気持ちと同じだったんじゃなかろうか。
「じゃあ、次の組み合わせは、こうだ!」
審判に案内されて、俺の前にやってきたのはエフテルだった。
「おや、師匠か」
「エフテルかぁ…」
「え!?なにそのリアクションは!!」
エフテルとも、アルカとも、可愛い弟子と殴り合いなんてしたいわけがない。
「おい指導役、相手が弟子だからって負けるなよ。ちょうどいい、最後にこのロンタウと勝負だ!」
ロンタウは意気揚々とアルカに向かっていく。
アルカはため息を吐きつつ、構えた。
そうして、第一競技の準決勝が始まる。
今後は、月水金の週3更新を目指します
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