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65 ジェットバウンサー②

陸上での八方発泡魚の動きは非常にトリッキーだ。

うねうねと前進したり、水を噴射して飛び回ったり。だが、この甲板に上がるために消費した体内の水はかなりの量に見えた。すぐに海中に戻ってしまうだろう。


「短期決戦だ、各位炸裂機構は惜しまず使え!」


とはいえ、この4人にとっては初めて戦う相手。まずは様子を見たいと思うのが普通だろう。

と、思ったら、1人、すさまじい速度で八方発泡魚の頭部に向かって駆け、飛び上がった。アルカだ。


「死ね」


爆発音とともに、細剣の起動が加速する。

頭部に向かって振り下ろされたその剣は、鱗とヌルヌルした粘液に阻まれ、直撃には至らなかった。


「gya、iiiiiiiiii!」


しかし衝撃は伝わったのだろう、のたうち回り、俺たちは近づけなくなる。


「ナイス一番槍、妹よ!」


近づくことができないのであれば、エフテルの出番だ。

こちらも炸裂機構を作動させている。

さすがにここまで動かれては、頭部を狙うことはできない。少しでも鱗による防御が薄そうな、腹部付近に狙いを定め、針を射出する。


「刺さった!」


いや、恐らく浅い!出血を強いることはできたが、針はすぐに抜けてしまった。


「iyaou!」


八方発泡魚が水を噴射し始める。


「っ!」


全員が回避に成功したが、その推進力のまま、八方発泡魚は海に戻ってしまった。


「すまん、攻撃できなかった!」

「大丈夫、また来ると思う!」


コウチに対するエフテルの声掛けのとおり、あの程度の傷ならば、また甲板に上がってくるだろう。

そのためには、距離を離すことを良しとさせないように、しっかりと射出機による牽制を行わなければならない。


「カーリ、次来た時に攻撃できればいい。だから今は射出機に戻るんだ」

「はい、お師匠様…!」


今回はエフテル、カーリに加えて、アルカも射出機に加わる。

この船は左右に4門ずつ射出機が設置されているので、まだまだ空きはある。


「お師匠さん、俺も射出機に加わったほうがいいんじゃないか!?」


コウチがそう言うが、間もなく拒絶槍の再装填が終わるだろう。


「コウチは拒絶槍で待機で大丈夫だ。もうすぐまた使えるようになる」

「了解」


実際、そのあと数分して、拒絶槍を起動する杭がまたせりあがってきた。下のほうで再装填が完了したということだ。

その間も、ずっと射出機で狙っているものの、中々攻撃を当てることはできなかった。


「あー、いらつく!」

「そういうものだ、焦るな」


だから船上戦は難しいのだ。相手のペースに常に合わせて動かなければならない。

この船は現在、ヒシガツマ村に向かって戻るように航行している。

八方発泡魚は狩猟船に並走しながらついてきている。

戦闘が始まって、そろそろ1時間は経過しているだろうか。

休みなしで、いつ飛び出してくるか分からない八方発泡魚を警戒しているのは、神経が磨り減る。交代で休憩をとるべきだな。


「エフテル、カーリは一度船倉で休憩してくれ。万が一、船体が大きく揺れたら、戻ってきてくれればいい」

「狩りの途中ですが、良いのですの?」

「ああ、こうして俺たちを疲れさせるのも相手の作戦の1つだろうからな。エフテルとカーリの代わりに、俺が射出機に付く。アルカは申し訳ないが、俺のサポートを頼む」

「うん、分かった」


エフテルとカーリの2人が引っ込み、俺が射出機の前に立つ。

アルカには装填などを手伝ってもらう。

狙いを定めて撃つまでなら俺1人でもできるんだが。


「あ、いけるな」


俺は水面まで上がってきた八方発泡魚の体めがけて、弾を発射する。


「gyaaaaa!」


よし、背中辺りに当たったか。


「すごい、初めて当たった…!」

「なんていうか、経験だな。獣の次の行動を読むというか…って、コウチ!叩け!」

「はい!」


話しているうちに危なく突進を許すところだった。

1度でも船体への体当たりを許してしまうと、その行動が有効であると学習されてしまう。そして連発されてしまえば、こちらの拒絶槍は連発できないのでいずれ船は沈められてしまう。


「いつかは、アルカがコウチに声掛けできるくらいに成長してもらいたいもんだな」

「む、頑張るけど」

「お師匠さーん!?俺の話してる!?聞こえないんだけど悪口じゃないよな!?」

「大丈夫!コウチは今のところ100点満点の動きをしてるぞ!」


さて、これで時間は稼げている。

あとはどこでこちらの切り札である強制揚陸装置を使うか、だな。

それから、コウチとアルカが裏に引っ込み、エフテルとカーリが再び射出機の前に立った。どうせしばらく拒絶槍は使えないし、俺は少し休憩だ。


「長丁場だね」


隣にウエカ村長が来て、話しかけられる。


「申し訳ない」

「いやいや!そういうものだっていうのは聞いてたから、別に我らが狩人君を責めてるわけではないよ。単純に、狩人ってすごいなと思っただけさ」


ウエカ村長には、作戦の都合上甲板にいてもらう必要がある。狩りの序盤ならば、裏にいてもらっても良かったが、そろそろ2時間が経過する今では、待機してもらうことになる。


「しばらく相手に動きがないね」

「そうだなあ。あっちも攻めあぐねてるんだろう」


獣側が好き勝手しないよう、いかに行動制限できるかが船上戦の肝だ。


「こんなことなら、この狩猟船に荷物を積んで、君たちに護衛してもらえばよかったかな?」

「ま、単発ならそれでもありだがな」


実際、そういうケースはある。

狩猟船に積荷を載せて、それを護衛するような依頼も狩人には来る。

しかし、今回はアオマキ村とヒシガツマ村間の定期船のための依頼だ。毎回狩猟船でカートリッジを消費しつつ、狩人を配置しながら定期的に2つの村を行き来するのは、現実的ではない。


「ただ、個人的にはこれが最後の休憩時間だと思ってる。そのあとは、頼んだぞ、ウエカ村長」

「買いかぶられている気がするなあ。悪い気はしないけどもね」


射出機付近では、カーリとエフテルが当たらないだのなんだのと騒いでいる。

そろそろ時間だ。

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