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俺の視線にフェニックスとなったシェーラは微笑みかけたように見えた。実際は表情が変わってないはずなのに目の錯覚だろうか。シェーラフェニックス、いや、シェニックスとでも呼んだ方がいいのか。彼女は波状攻撃を続けるスライムを睨みつけた。
『あれが魔神獣。私たちの世界の天敵。』
「そうだ。あいつが街を滅茶苦茶にしたんだ。」
俺の言葉にシェニックスが周囲の惨状を見渡した。絨毯爆撃と溶解液によっていたるところの建物は倒壊し、炎上していた。その様はまるで戦場のようだった。
『…酷い。平和だった街をこんなにするなんて。』
瞬間、シェニックスの身体を纏う炎が燃え上がった。シェーラの怒りに反応しているのか。普段怒るところを見ていないだけに俺はこの子が怒ることに不安を感じた。普段怒らない人を怒らせた方が怖いっていうじゃないか。それともう一つ気になっていることがある。こんな危なそうな怪鳥と融合して元の身体に戻れるのだろうか。
『大丈夫です、マスター。鑑定結果で分かりましたが、シェーラ姫は融合しているのではなく、魂が憑依しているだけのようです。痛覚などは共有するため、精神的な疲労はあるものと思われますが命を削る類のものではないようです。』
そうなのか、よかった。ホッと胸を撫でおろす俺の姿を確認した後にシェニックスは炎を燃え上がらせながらスライムへ向かって飛翔した。速い。速すぎる。単純にジェット機くらいの速度はあるのではないか。火傷こそないものの風圧と熱で目を開けていられない。
シェニックスはスライムへ一直線に飛んだ後に力任せに激突した。激突音と共にスライムの身体の一部に纏わりついた炎が燃え盛る。
『…魔神獣!これ以上はやらせません!』
そう叫びながら思い切りタックルをした後にシェニックスは再度一定の距離を取ると再び炎を燃え上がらせた。恐らくはあの炎を燃え上がらせることで攻撃の際の威力を増させているのだろう。あのタックル、相当な威力をしているようだが、どの程度か知っておきたいな。そう思った俺はインフィニティにシェニックスのステータスを鑑定してもらうように指示を出した。そこから導き出された結果は次のものだった。
シェーラ・シュタリオン➡シェニックス
年齢:16
Lv.8
種族:人間➡???
職業:王女
体力:34/34➡2200/2200
魔力:62/120
筋力:21➡442
耐久:16➡900
器用:23➡600
敏捷:14➡1200
智慧:51➡600
精神:60➡600
(シェーラ所有のスキルは使用不能)
【固有能力】
鳳翼炎上:一回の攻撃につき防御力無視の2000ダメージを相手に与える。
纏わりつく炎:敵の再生能力などを打ち消す炎。能力使用中は他の能力を使用することは不能。
リンカネーション:致死に至るダメージを受けても瞬時に蘇る。なお、一回使うごとに精神力を100消費するため、精神力切れになると顕現できなくなる。
おいおいおい!いくらなんでも強すぎるだろう。なんだよ、防御力無視の2000ダメージって。あきらかにあのスライムの天敵のような存在じゃねえか。完全に俺の出番を食われた奴だ。
自分の事を棚に置いてなんだが、少しは自重というものを知ってほしい。仕方ないので俺はシェニックスと巨大スライムの戦いに割って入る隙を伺いながら敵の鑑定を行うことにした。というのも少し気になっていることがあったからだ。
それは奴のデモンズスライム(第一形態)と書かれた表示と〈■■■■〉と表示された謎のスキルだ。恐らくは意図的に隠ぺいされたものであろうが、第一形態という以上、何か隠し玉を抱えているのは間違いない。インフィニティに確認するように依頼したところ、解析結果が出るまでにかなりの時間が掛かるということだった。解析結果が出次第、報告するという事である。大概、そういうのの遅れって取り返しのつかない事態になるんだよな。
そんなことを考えているとようやく住民の避難を終わらせた司馬さん達がやってきた。