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 KⅠNGの右目~死んだらゲームのラスボスの側近キャラになっていた~  作者: 黒勇
 第1章 未来は変わるが、過去の事象は変わらない
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 第七話 喰らう人と喰らわれた人


 時々、頭の中で、ある疑問が度々浮かんでは不安を煽る事がある。


 どれだけ剣を振るっても、どれだけ体を鍛えても、あの時よりも成長した実感があれど、それは完全に消え去ってはくれない。無くなったとしても、それは一瞬のことで、次の瞬間にはそれらは、また俺の不安を煽る。


 自分がこのまま生きていて良いのか?自分がどうして生きているのか?何でここに立っているのか?色々な言葉が脳髄から溢れ出てくるように感じてしまう。

 


 何で彼女が死んだのか、何故死んだのか。答えは簡単なはずだ。けれど、何故かその理由がはっきりしない。


 簡単だ。■前が■かっ■のだ。


 頭の中でそれに対しての結論が出たと思えば、すぐにそれが霧散する。消えて言葉が纏まらない。それがどうしようもなく気持ち悪くて吐き気がする。なのに、それを知りたがる自分がいて、それを知りたくないと思う自分がいる。その自分でも把握できない感情に、自己嫌悪する。

 

 思考がはっきりとしない。何もかもが薄く感じられ、記憶があやふやだ。何かを考えても、何かを思い出そうとしても、次の瞬間には消えて無くなっている。

 


 『その通りだよ。簡単なこと。それこそシンプルで単純なことなんだ。君はそれを理解できて、把握できている。

 ―――後は一つだけで良い。それで君は、本当の君自身に完成(・・)する』



 居場所がはっきりしなかった、どこにいるのか、そもそも壁や天井すらないと思っていた。この場所が急速に形を持つ。

 いつの間にか、横に白い壁ができ、足が付ける床ができ、天井が出来た。だが、この部屋のような場所の奥行きだけは先程と変わらず、光りに包まれ果てが見えない。


 そこから声が聞こえてくる。幻聴のような、けれど、それにしてはしっかりと頭に響く綺麗な声。

 誰が話しているのだろうか?疑問を持って奥行きに目を凝らすと、そこには金色のモヤが出来た・・・。先程まで確実になかった物がそこには存在する。声はそこから聞こえてくる。


 普段であればありえないと思うはずの出来事だ。けれど、その時の俺はそれに違和感を感じない。ただ、当然のように返答をする。


 教えてくれ、と。

 俺の答えに対して、そのモヤは少し驚いたかのように体?と言えばよいのだろうか?を波のように一度振動すると答えた。



 『答えを知りたいのかい?もうすぐ知れるのに?』



 少し笑いながら、それに俺をからかうかのように金色のモヤは声を発した。


 もうすぐ知れるという意味はわからなかったが、それに対しても俺は同じように答えを返す。

 頼む。教えてくれ。

 

 俺の懇願にモヤは、聞き分けのない子供に言い聞かせる大人のようにさらりと答える。



 『すぐに分かるさ。楽しみは最後まで取っておくべきだろう?すぐにネタバラシすることほど重い罪はない。―――そうだろう?』



 その返事に対して、異様なまでに心がざわつく。知りたい。こいつが俺の知りたいことを知っている。俺の知るべきことを理解している。隠し持っている。

 そんな考えが推量でしかないはずなのに、まるで確信があるかのように事実のように思えてしまう。けれど、それを目の前の存在はそれを俺に教えてくれないだろうという事も確信を抱く。だが、それでも願ってしまう。他力本願だとしても願わざる終えないのだ。


 だから懇願する。答えを教えてくれ、答えてくれ、と。



 『………今はだめだ。それに僕が嫌だ』


 駄目だ。今だ。今必要なんだ。もう奪われないように、あのときの苦しみが繰り返されないように。


 はて、俺が思う苦しみとは、何の苦しみだったのか?記憶が薄れいく中で唯これだけは言わないといけないという強迫観念が俺を襲う。それに対して俺は反抗することはなく、従うように言葉を発した。


 『本当に欲しいのかい?』


 その言葉に心が火山の噴火した岩漿の如く、目の前の一向に俺の頼みを聞かない存在に対しての殺意と怒りが爆発した。

 心が思う。願う。希求する。俺の心が体の形を作リ出す、赤い腕を!求めるための腕を!誰かから何かを奪う原初の道具を!

 

 【ああ、もう焦らすのは良いだろう?教えろ早く!よこせ!答えを!ああ、もう何でも良い。よこせ!お前をよこせ!何なのだ貴様は何故、我の知らないものを知っている?巫山戯るな!この世全ては我の所有物!

 まさか貴様がやったのか?ああ、嗚呼そうだろうな。ならば、話に納得がいく。貴様が持っているのだろう我等の知らない我等のことを!】


 立っていたはずの床が崩れ落ちる。それに足を取られ、俺の体はその先が見えない奈落へと落ちていく。けれど、目の前のモヤは変わらずそのままの場所でこちらを見下ろしている。


 『…すまない、けれど、今の君では足りないんだ。後、もう少しなんだ。後少しで何もかもがうまくいく。今度、プレゼントを送るよ。楽しみにしてくれたまえ』


 

 その言葉が聞こえるとモヤが晴れた。吹き飛ばされたモヤが霧のようになり、俺の体を通り抜けていく。それで、視界が一瞬白に染まると、目の前にいた人物が明らかになる。


 ーーー今はお休み。またね僕の●●


 その言葉を聞いた次の瞬間。先程まであったはずの体の感覚が薄れていく。先程まで抱えていた思いも、願いも、欲望も何もかもが泡のように消えていく。無くなり、戻りまた消える。そこにあって欲しいと思ったら消えていき、忘れてしまえば思い出す。



 そんな事を繰り返す中、急に体が浮き上がって行くように感じた。無くなった光が目の前に広がり、また手足の感覚が戻って来る。


 「―――お前は、一体誰なんだ?」


 何も失っていないはずなのに。何もなくしてないはずなのに。俺の朝は喪失感とともに始まった。



◇◆◇








 俺の今目の前にあるのは、白い皿の上にある黒いパン。その横に置かれている木の器にはお世辞にも余り具材が入っていない底が簡単に見えるスープ。そして飲み物として置かれているコップに入った一杯の水。

 そして、それらの食事の下に敷いてあるがテーブルクロス代わりの布が手の甲に風で少し揺れながら当たる。


 今生が始まってから何度も見た風景に俺は未だ慣れることができないでいる。いや、慣れると言うより、其れよりもこの光景に自分の記憶が違和感を感じてしまう。

 目の前にある食事は前世の日本であるのならどんな不健康児でも遥かに栄養価の高い物を食っているであろう間食とも呼べない質素な、と言うよりは貧相な食事。

 いや、栄養は悪くないと思うが、圧倒的に量とカロリーが足りない。

 それが横に3個。反対側に一つ。それらの前に座る三人の子供と一人のシスター。



 別に、これは俺達が虐められているとか、不公平な状況の中にいる等では無い。この世界ではこれがポピュラーな食事だ。

 俺が拾われた孤児院、と言うよりもこの世界では『聖神教』と言う前世の一神教に少しだけ似た宗教が一般的に流れている。


 そして、その教えの一つによって朝食を軽視。いや、どちらかと言えば取らないことが健康と信仰に良いと考えられている。

 俺の世界とは丸っきり真逆だ。


 なぜならば、人々の休息の月の日は最も聖神の寵愛が人々に降り注ぐ日であり、逆に食べ過ぎては聖神の寵愛に背くことになるから、だったと思う。

 一応。『聖神教』の孤児院なため説法や、聖書等を朗読したりするが俺は最初の頃に少し聴いてから、ほとんど無視して修行していた為詳しく知らない。


 前世、現代日本の健康番組で朝に朝食をちゃんと食べないのは体に悪いと耳が痛くなるほど聞かされて来ていた俺からすれば、逆に寵愛どころか不健康になると思うのだが。



 まあ、ルールはルールなのだから仕方ない。一応俺はこの孤児院で面倒を見てもらっているし、別にそれが悪習だとも、良い習慣だとも思っていない。それに、確かに月の日にはあまり腹が減らなかったり、怪我の治りが早かったり、聖神の寵愛と言われるのを体験しているので、もしかしたら、この世界の神様は生きているのかもしれない。

 しいて言うのであれば、流石に足りないので後で作っておいた非常食でも食べようかなぐらいの感情しかもっていない。




 はっきり言えば、どうだっていいのだ。それよりも早く食いたい。そして修行するか、遊ぶ(修行)か、森に行く(修行)かしたいのだ。


 【結局、全部修行ではないか】



 だが、そうは簡単にはいかない。

 もしここが、ごく一般的な日本の過程であるのならば、みんなで集まり、手と手を合わせて『いただきます』と言う形式だけの感謝の言葉を言えばそれで終了。食事の始まり。

 出された簡素ながらも手を掛けられた朝食に舌鼓を打ちながらテレビをつけてニュースを見るなり、新聞に目を通すなり、家族との会話を楽しむのだろう。


 【ん?主の記憶では最近の家庭ではあまり新聞自体を取らなくなっているらしいが?】


 うるさい。例えだ。例え。


 だが、ここは日本のよくある家庭でも無ければ、テーブルの先に黒い鮮やかな板も無く、新聞なんて貴重な紙を使った情報誌もどこにもなくて。話せるような状況ではない。

 あるとすれば、先ほども言った現代日本の価値観からすれば世にも奇妙な朝食と、何年も使い古したかのような小さな傷だらけのテーブルに、その上にある皺だらけの小さな布。


 それは当然だ。何故ならここは先程から俺が例えで出した“現代日本”とは似ても似つかない場所なのだから。違う場所の常識をさもすべての方かのように持ち出してくるのはナンセンスだろう。かっこよくない。


 そして先程から俺たちは何をしているのか。目の前には食事があり、腹をすかした俺たちがいる。

 その後に起こる事など、熟しきったリンゴが木の枝から落ちるほどには決まっている。


 だが、今起こっている事は違う。


 まるで、俺達は敬虔な信徒かのように目を伏せ、両手で祈り、前にいるシスターの言葉を聞いているのだ。

 それも十分間を超えている。


 「………故に主よ。我らが創造主たる聖神よ。この日、この時日々を生きる糧を得られたことに感謝します」

 「「「感謝します」」」


 俺たち三人は目の前で祈りと言葉を紡いでいるシスターの最後の言葉に合わせて、祈りの言葉を復唱する。




 そんな俺たちを先程まで目を閉じていたシスターが薄目を開けて確認するとこちらに向けて少しはにかみながら口を開く。


 「はいじゃあ、綺麗に食べてくださーい。そして、食べ終わったらちゃんとお皿を洗い場まで持ってくること。わかってますか?」

 「はーい。早く食べ終わったら勝手に行ったやつらを追いかけて、ぶっ潰します!」

 「………やっと食べれる。祈りの言葉長すぎ」

 「朝食はいらないので素振りしてきて良いですか?」


 そして、シスターマネからやっとかけられた食事の合図に俺たちは思い思いに目の前の物を口に運びだす。

 ユウはパンから、マオはスープ。俺は、朝から元の場所に返し忘れていた剣をそれぞれ手に取りながら話し出す。


 「ユウさん。女の子が潰すとか言ってはいけません。誰から習ったんですか?マオさん。祈りの言葉は日々生きれていることに聖神様に感謝するためなので必要です。ジーク君。神の御加護があるとしても朝食は食べないといけませんよ?

 ―――それとも、私の料理が食べれないという気ですか?ぶっ潰しますよ」

 「シスターマネ!女の子が潰すとか言ったらだめ、じゃないの?」

 「私は大人の女の子ですから。潰すと言っても良いのです」

 「じゃあ!私も大人になる!」



 大人の女の子?意味はよく分からなかったが、まあ、そういうものも世の中には存在しているのだろうと無理やり自分の中で納得させて話を横に流す。

 確かに食事中に剣とかを出すのは、行儀が悪い。これから気を付けよう。


 そう思いながら俺は剣を取り出した時と同じように()()()()仕舞うと、そのまま目の前にあるスープのお椀を手に取り口に運ぶ。

 先ほども思った通り、余り具材が入ったスープとかでは無い為、見た目としては少し、黄色いお湯に野菜が少し浮いているように見えるだけだ。

 だが、味自体は野菜や素材が自然の中で育ったからなのかどうなのかはわからないが、別に悪くない。だが、そこまで良くもない。

 今まで食べて来た物でランキングにするのであればこの料理達は下から数えて直ぐだろう。


 確かに、前世のインスタントスープや、食品の方が圧倒的に美味いが、今世から朝食にはこんな感じの料理しか口にしていないのでそんなに拒否感は余り無い。


 それにこんな料理が出るのは決まって朝食の時だけで、昼食や夕食の時は意外と味が濃い物とかも出るので不満も無い。

 だが、あえて不満があるとするのであれば、やっぱり、前世が生粋の日本人である俺としては、たまにどうしても米が食いたくなることがある。


 今世の生まれた場所的に、主食がパンオンリーなので米を探すのであればデカい都市や、国の首都か。それこそ前世の日本的な立ち位置にある国に行くしかない。

 今の俺ならば炊き立ての白米をおかずに白米を食べられるだろう。


 

 だが、そんな料理でも俺と違う感想を持つ奴はいる。


 【やはり、ここの料理は意外と美味いな。吾輩が生きていた時に喰らった者の中でも比較的に上位に存在するぞ!】


 噓だろマイハート。え?いや、この料理マズくは無いけれど別に普通ってわけでは無いと思うんだけど。と言うよりも、ぶっちゃけ薄過ぎて味がそこまであるかわからん。


 

 【いや、吾輩が喰らってきた者の中には、かみ砕いたのに腹の中で再生して突き破って来た者や、喰らった瞬間爆発する者。さらに片方の腕を差し出して封印してくる者等や、自分を食わせようとする腐ったさつもいもがいた。そのような者達に比べれば、十分旨い!そいつらは一つの例外なく不味かったからな……】


 いや、お前が例で出した物が普通じゃないんだよ。と言うよりも、そんなものを普通食うか?見た目である程度分かるだろうにそんな物。明らかに危険だろう。


 【だからこそだ。長生きの秘訣は好奇心と探究心を無くさないことだ。未知のものに恐怖し、頭を垂れた者から時代に潰され死んでいくのだよ】


 俺は声に対して少し呆れ、返事を返しながらも、飲み切ったお椀をテーブルに置きパンに手を付ける。


 「ほら!早くマオも食べなさい!早くしないと追いつけなくなるわ!」

 「いや、もう良いでしょ。てか、追いついても疲れて遊べないって。今日は三人で遊ぼうよー」


 俺と同じくスープを飲み切ったマオが、完食してユウ引っ張っているユウに対して両手をだらりとテーブルに乗せながらきだる気に応える。


 「はーい。遊んでるだけはだめですからね。今日は朝食の後、居ない人達の分も畑の世話と勉強をしますから」

 「………あ、そうだった。くそぅ、あいつら私に仕事をぶん投げるために起こさなかったのね!こうなったら意地でも追いついてやるわ!ほら、速くしなさい!」 

 「……ちょ、ユウ、喉に、詰まるからパン口に突っ込むのは止めて!アグッ!」


 【いや、吾輩も流石にダメかなー、と思ったのだがな。探究心が抑えられなかったのだよ】


 俺が、パンを食べ終わり水を飲んでいると。横では食べ終わったユウがマオの小さな口に黒くて長いパンをぶち込んでいる最中だった。

 先程から、無理矢理口に乾いたパンをぶち込まれているせいか、心なしか顔が青く、白目をむいて、助けを求めて両手を天に突き上げているように見える。 これを見て、わぁ百合だー!と思える奴は角膜と脳みそを取り換えてもらった方が良い。


 と言うよりも本当にやばそうだ。そろそろ誰か止めてあげたほうが良いだろう。

 ………俺?俺は目が見えないから。まあ、気配で分かったと言ったら大丈夫だろうけど。泡吹きかけてるし。


 「ちょっと、ユウさん。マオさんが苦しそうだからやめてあげなさい」

 「え?あ、本当だ。マオごめん!大丈夫?」

 「ガホッ、ゴホッ………あんまり悪く、違った。クルシカッタナー。ツラカッタナー。コレジャアキョウノシゴトデキナイナー。あ、ジーク水取って」


 はいよ、と俺はマオに向けて水を渡す。受け取ったコップに口をつけると乾ききったのどを潤す。ゴクリッ、と良い音が喉からなっている。それはまるで肉体労働が終わった後の最高の一杯を飲み干す地下労働者の様に。

 だが、実情は友達にパンを喉にパンッされた只のロリである。そこにドラマも何も無い。


 そして、コップの中の水をすぐに飲み切ったマオに心配そうな顔をしてユウが声をかける。


 「だ、大丈夫だった?マオ?ごめんね。私力加減出来てなくて………」

 「………大丈夫だよ。ユウ。タダ、サッキノデ、ノドガヤラレチャッタカラ。ピクニックには一緒にいけなさそうなんだ。代わりにジークがついて行ってくれるから安心して?」

 「そんな、大丈夫よ!ジークが付いてくるの初めから決まってたから!」

 「え?」

 

 初耳なことを言われて声が漏れてしまった。俺そんなこと聞いてない。


 「けど。私はキョウハムリダカラ。二人で楽しんでねー。じゃあ、私寝ておくから」

 「なら、あたしも看病する!」

 「いや、良いよ。遠慮しないでマオの分も楽しんできてね」

 「気を使わなくて良いのよ。ピクニックはいつでも行けるから」 


 思いっきり噓にしか見えないマオの言葉だが、ユウは普通に信じているようだ。

 その青い瞳に疑惑の心はありやしない。そこには、単純に自分がしたことに対しての償いとして目の前の友人を看病しようとする考えしか浮かんでいない。


 その友人が自分の誘いを断るためにのどに詰まったことを利用しようとしていることなど一切考えていないだろう。けど、彼女は友人が嘘をついているとわかっても、それを疑わないだろう。彼女はそういう人間だ。


 けれど、最初だ。最初だけは疑わなくても、少女がどれだけ純粋だとしてもそれは所詮噓にすぎない。噓はいつか暴かれ、真実の意味が少女に伝わった時。友人はどうなるか?

 それに、彼女は感が良い。俺が嘘をついた時の的中率は驚異の100%を誇る(まあ、そこからごまかせれば何の問題もないが)。


 結果は簡単だ。噓が嫌いな俺の友人は、怒りながら俺のもう一人の友人でもある銀の少女を外に連れ出されるだろう。………俺も連れられて。

 それは避けておきたい。


 そんなことになればせっかくピクニックをサボった意味がなくなる。ならば俺はどうするか?決まっている。今日の予定よりも少し早いが、予定を進めるだけだろう。


 俺は、あと半分ほど残っていたパンを噛み千切ると、口に入れ、舌を使って胃へと送り出す。喉の真ん中あたりから腹部辺りにそれが移動し、体に少し熱が宿った様な感覚を確認した後。俺は座っていた椅子から立ち上がると右人差し指を彼女たちの前に見せてこう言った。

 彼女たちに効果抜群なある一言を。

 




 「鬼ごっこする人この指とまれ」

 「「乗った!」」


 俺の声にすぐさま反応してきた二人は、俺の立てた指に自分の手を重ねて来た。

 


 「次こそ勝ってやるわよ!ジーク覚悟しておきなさい!」

 「………今度は勝つ!」


 そう言いながら、食べ終わった食器を持っていく彼女たちの背中からは怒りに似たやけっぱちのようなものを感じた。

 まあ、それにしてもピクニックに行かないで済んでよかった。なら、俺は先に向かっておこうか。


 そう思いながら、彼女達とは反対の方向へと俺は歩を進める。



 さあ、鬼ごっこ(修行)の時間だ。



 「ジーク君。遊びに行くのは良いですが、後片付けはしっかりしましょうか」

 「………」

 【ブッフゥーーー!!!アヒヒッヒャヒャ!た、確かに片付けはしっかりしないといけないなぁ、ックフッフ!】


 あ、すみませんでした………。

 俺は自分の食器を持って、彼女達と同じ場所に向かって歩き始めた。



 外への扉はまだ開く時ではなかったのだろう。巡り合わせが悪かったのだ。俺はそう考えて心の平穏を保った。

 


 


・モヤ

 只のモヤ


・黒いパン

 黒パン。この世界では一般的なパンの種類。貴族など余裕がある暮らしをしている人間は白パンを食べるが、聖神教では基本的にどの役職の者でも黒パンを食べている。


・聖神の寵愛

 信仰すれば、お腹があまり減らなかったり、怪我が治りやすくなったり、疲れが取れやすくなったりする。狂気的に信仰すればその分恩恵をくれるが、別に心から進行してなかったり上っ面だけの進行の場合一番効果が強くなる月の日に少し感じる程度。


200年前

 『最近ー、なんかー、信仰足りない気がするんですよねー。私のこと実在しない存在だとか世迷言言う奴らも出てくるしー、何?これ以上寵愛を与えないでください?人が腐り落ちてしまいます?このままだと、無信仰者が増えてしまいます?………マジ?』


・鬼ごっこ

 転生者を百人同じ世界に投入し、制限期限まで新界からの視覚達から生き残れたら、其の者に永遠の名誉と報奨を与える、今神世界で最もホットな番組。


 駄文


 遅れてすみませんでした。本当にすみませんでした。言い訳をすると、実生活が何かと忙しく山に登らされたり、京都に二週連続でいくことになったり、パソコンを変えたり、A●exが楽しかったり、読書が楽しかったりで忙しく新しい話を書く時間がありませんでした。すみません。あ、感想ありがとうございました(気づいたの結構後ですみません)。すごいモチベと自信にも繋がるので(特に作者を褒めるコメント)ドンドン書いてください。

  では、また次の話で。

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