犬と美少女
* * *
ヤイノとスティナとわんわんちは池に着いた。
池の畔には二人の男がいた。
二人とも釣りをしている。
異様な雰囲気だ。
二人は目も合わさず、一定の距離を開け、黙々と釣りをしていた。
片方が何か釣れると、もう片方が敵意むきだしの目を向ける。
一人はよく池で見かける竜人のホウセンカ。
もう一人は……? ヤイノは見たことなのない青い髪の男だった。
「ほら、あの人、エルフ」
スティナが指さす。
「誰?」
ヤイノは思わず、見知らぬ人物に尋ねていた。
「しー。魚が逃げる」
と青い髪の男が言い終えた時だった。
わんわんちが吠え始めた。
ホウセンカと青い髪の男二人同時に睨みつける。
だが、スティナは意に解すでもなく、
「え? ここなの?」
わんわんちは池の中央に向かって吠えていた。
そちらの方向に何かあるのかと三人は目を凝らす。
「うんうん、わかった」
スティナは何かわんわんちと会話してるようだ。
「ぬれちゃうけどしょうがないね。ちょっと怖いけど信じてるよ、わんわんち」
スティナはわんわんちに跨り、体を密着させ、頭をなでなでした。
何かわんわんちの耳元でささやいているようだが、その内容は聞こえなかった。
そんなスティナだがふと身を起こし、ヤイノに向きなおる。
「ヤイノ、案内してくれてありがとう。タツキの無事も知れたから帰るね」
「え? 帰る?」
ヤイノは思わず聞き返した。
確か、スティナは『帰る』と言った。
スティナを乗せたわんわんちは池の中へと飛び込む。
「え!? ちょっと!」
ヤイノは止めようと思ったが間に合わなかった。
スティナが溺れると思ったヤイノは、飛んで追いかけた。
池の深さは三メートルくらいか。
わんわんちは池の底を猛スピードで走っている。
スティナは平然とした様子でその背に跨っていた。
ふと、スティナはヤイノを方を見上げた。
水の反射だろうか。黒だと思っていたスティナの髪が赤紫に光っていた。
水面に揺られ、この世とは思えないくらい神秘的で美しい姿だった。




