少女は帰る
ヤイノが見とれていると、スティナの口が動いていた。
もっとよく聞こうとスティナに近づく。
ヤイノはスティナが何を語ったのかわかった。
スティナとわんわんちの姿は吸い込まれるように消えた。
「え! スティナ?」
ヤイノは池に飛び込んでいた。
そこには扉のついた四角い建造物のようなものがあった。扉は閉じられていた。スティナとわんわんちはこれを通って帰ったのだろう。
――ゲート? これが?
水の中でヤイノはスティナの言葉を思い返していた。
『ゲートの管理よろしくね』
確かにスティナはそう言っていたのだ。
* * *
「なんだ、それ……」
思わず、リューオスは乾いた笑いを浮かべていた。
実際、喉は乾いていたわけだが。
メノウの話では、父親にイチゴジャムを食べられた腹いせに家出し、獣と一緒の少女が来たゲートを潜り抜けたら地上にいたんだそうだ。
獣と一緒の少女に心当たりがあった。
そんなことより、リューオスはかつてタツキに桃を盗み食いされていたことを思い出していた。
見つけた時は頭に来たが、相手の家族に苦情を言いに行ってすごく後悔した。
メノウのしでかした行動は、かつて自分に似てるような気がした。
「親は大事にしろよ」
そんなことをつぶやいていた。
* * *
居住区の住居は、ドームと呼ばれるおわん型の建物である。
シムがドームに入ると、魔導電話が鳴った。
「あ、タツキからだ」
シムは上機嫌で電話を取る。
魔導電話は魔法で掛ける電話である。シムの場合はその魔法が誰の魔法か判別できるようだ。
アッゼは首を傾げ、シムを見る。
魔法が使えるアンドロイドもいるが、そこまで繊細で強い魔力の持ち主はそうそういない。
ふと、そこでアッゼは思い出した。
――僕の強制終了する方法を教えておくよ。万が一の時のために……
シュウとそんな会話をした。




