竜繭の中で
* * *
「あなたに会いに来たの」
ようやくでかい犬から解放されたタツキに、スティナはそんなことを言った。
その言葉にヤイノは衝撃を受ける。こんなかわいい子が、ごくごく平凡な弟にそんなことを言うなんて。
「翼が治ったんだね。本当によかった」
だが、でっかい犬に怖い思いをさせられたタツキは迷惑そうにため息をつく。
「俺?」
恨みがましい気持ちで、タツキはスティナを見る。
その顔、どっかで見たような……
「あっ! エルフの!」
「そう!」
タツキは思い出した。
地上で薬草をくれたエルフの女の子だ。
「……えっとー? 薬草ありがとね」
そういえば、あの時の薬草はどうしたんだっけ?
そうだ。シムが傷口に塗ってくれたんだった。
シムと過ごした時間は楽しかったなー、なんてタツキは自然と笑顔になった。
「あの時の猫ちゃんは元気?」
「うん。元気だよ。ごまちゃんと同じこと聞くのね」
「……ごまちゃん?」
「あ、シムのことね。私、ごまちゃんって呼ぶことにしたの」
それを聞いて、タツキは胸の奥がちくりと傷むような感覚を覚えた。
シムと、このエルフの少女がいつの間に仲良くなってたんだろう?
「今日はごまちゃん、いないの?」
どうも、スティナは天空岩と竜の大地の簡単に行き来できると思ってるようだ。
ヤイノはここぞとばかりに。天空岩と竜の大地と魔導エレベータの関係を説明した。
スティナは首を傾げていたが、どうにか自分なりに納得させたようだ。
* * *
「どうだった?」
リューオスは、腕の中のシズクにそんなことを聞いた。
「不思議な感覚…… 竜繭の中にいるの初めて」
シズクはうっとりした顔でリューオスを見ていた。
「その……? リューオスはどうだった?」
「……よかったよ。そのシズクは? 痛くない?」
リューオスの問いに、シズクはにっこり笑顔になって胸に顔をうずめてきた。
シズクは機械だ。それは充分承知している。




