移動手段
「竜人の子ってヤイノって子のこと?」
「その弟のタツキくんの方」
シュミットは、タツキには会ってなかった。
「居住区か? 全……」
シュミットは口をつぐんだ。全滅という言葉を使うのははばかられたからだ。
居住区は火山の直撃を受けて全滅したと聞いていた。
大噴火の日、なんとかテッドの舟で竜の大地に近付き、魔導エレベータで最後の一人を回収できたのだ。
「最後に生き残ったのがアッゼだったよな? アッゼは?」
「今、居住区にいってるよ。そろそろ戻ると思うんだが。かつての自分の住んでた街が廃墟になってたら色々思うこともあるだろう……」
* * *
空を見上げたシムは、アッゼに向きなおる。
「アッゼは何で来たの?」
「救難信号が出てたから」
シムは苦笑した。それはさっき聞いた。
「……理由じゃなくて、移動手段」
「魔導エレベータ」
シムは首を傾げる。
リューオスが魔導エレベータで居住区に来たことがあるが、それなら目の前のアッゼも天空岩から来たことになる……?
そのシムの表情で、アッゼはシムの疑問を察したんだろう。
「テッドの舟にも魔導エレベータがあるんだ。あまり遠い距離だと使えないけど、ここの空にいるくらいの距離なら魔導エレベータで来れた」
「へえ……」
シムは感心した。
居住区に住んでいたが、魔導エレベータに関してはよく知らなかった。
たまたまタツキが座り込んだ段差が、魔導エレベータだった。
魔導機械。
魔法と科学の技術を融合した機械。
魔力を原動力にしているから、魔法が使えるシムも魔導エレベータは使えるはずだった。
何度か行ってみようとも思ったのだが、説明のできない恐怖のような嫌な予感が沸き起こる。
結果として、シムは魔導エレベータを使ったことはなかった――
「今日のとこは帰る。また明日にでも来るから」
と、アッゼは言った。
「うん。歓迎するよ」
魔導エレベータで帰るアッゼを、シムは笑顔で見送った。




