知らない人物
* * *
天空岩――。
桃畑の中に誰かがいた。
翼のない人物。
その人物は、魔導エレベータの周囲をぐるりと周り、中を覗き込んだり、外側をこんこん叩いてみたり。
タツキは、最初、リューオスがいると思っていた。
だが、リューオスにしては行動が妙だ。タツキは訝し気に近づく。
「誰?」
タツキが声をかける。
「ああ、こんにちは。クロンカイトってんだけど。――ここに住んでる子?」
「そうだけど」
タツキは緊張した。
天空岩に知らない顔はいないはずなのだ。
そのタツキが知らない人物が、今、目の前にいる。
「そう、警戒しないで。怪しい者じゃないから」
クロンカイトは両手を上げて見せる。
よく降参する時のジェスチャーだが、タツキにはその意味はわからないだろう。
タツキはクロンカイトの後ろに回り、背中を見た。
翼はない。
「坊やの名前、教えてほしいな」
クロンカイトは極力、愛想よく振舞った。
「坊やじゃない。タツキだ」
タツキは飛びながら、クロンカイトの周りを回る。
「翼がないけど、竜人なの? どっから来たの?」
「俺は人間だよ」
タツキの脳裏に地上にいた時、出会った人のよさそうな男が思い浮かぶ。
赤毛の気のよさそうな男…… 名前はなんだったか。
「ゲートでやってきたの?」
「いや、テッドの舟に乗ってやってきた」
「それって地上に行ったんじゃないの?」
「天空岩にドッキングしてるよ。しばらくは滞在する予定だから仲良くし……」
「見たい!」
さっきまでの警戒心は嘘のように、タツキの目は好奇心でキラキラしていた。
「ああ、じゃあ、一緒に行こうか?」
クロンカイトの言葉にタツキは強く頷くのだった。
*
「ありゃ?」
クロンカイトとタツキは鉄柵の前にいた。
その向こうに、テッドの舟が天空岩と隣接するように停泊していた。
「この柵はなんだ?」
クロンカイトは予想外と言わんばかり。
そんなクロンカイトに、タツキは疑いの目を向けた。
「あの舟から来たんなら当然この柵を超えて来たんだよね」
「いや、魔導エレベータで来た。坊……タツキは翼があるからあのエレベータ乗れないから案内したのに、肝心の俺が通れないのか」




