訪問者
とある青年が、地上の居住区にやってきた。
名前はアッゼ・ランカード。
アッゼは、迷うことなく居住区を中を進んで行く。
まず中央の一番大きなドームへ。
メインドームと呼ばれ、地下システムや、この居住区全体の温度や酸素の管理をするコンピュータが置かれている。
アッゼがメインドームに入ろうとして、鍵がかかってることに気づいた。
鍵がかかっているということは、ここは誰かが管理している。
アッゼは居住区の中を歩いてみた。
――システムが復旧している。
そう確信したアッゼは上機嫌だった。
今度はとあるドームへ足を運んだ。
やはりそこも鍵がかかっていた。
なんとか入れないかと思ったが……
そこにシムが来た。
「そこは空き家だよ」
アッゼは振り返り、シムを見た。
シムは妙な感じがした。
「……そうか? 前にここに住んでたんだ」
と、アッゼは言う。
シムは首を傾げた。
――ここに住んでた?
シムがここに来て以来、住んでた者はいただろうか?
誰かを泊めたことはあったけど。
「坊主は竜人? 天空岩から竜人の子どもが落ちたそうで救難信号が来たんだけど? 坊主のことじゃないよな?」
坊主呼ばわりだれたことをいささか憤慨したシムだったが、そんなのはおくびにも出さず説明した。
*
「帰った? 自力で!?」
アッゼは驚愕して、上を見上げた。
灰色の雲に覆われ、今日は天空岩は見えない。
つまりそれだけ距離があるのだ。到底、一人の竜人が飛んで帰れる距離とは思えない。
アッゼはしばらく空を見上げていた。
しばらく、そのまま。
やがて、大きくはあっと息を漏らした。
「すごい子どもがいたもんだ」
*
「本当にすごいよ。きっと、今頃、天空岩で立派にやってると思う」
とシム。
「そうだな」
感心していたアッゼはシムに尋ねる。
「名前は? 俺はアッゼ・ランカード」
「シム。アッゼさんはどこから来たの?」
「アッゼでいいよ」
と言いながら、アッゼは上を指さした。
「テッドの舟から来たんだ」
それを聞いて、シムは上を見上げた。
残念ながら、空は雲に覆われ、その上は見れなかった。




