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クロノ・レボルト〜2度目の革命〜  作者: 田坂屋台
交流会編
20/26

反転世界

 一方、会場はハンスとシャービスが居なくなり、生徒たちは魔法を壊そうと一斉に攻撃を繰り出そうとしている。


『皆さん! せーのでで行きますよ!』


 クルシュの指示でリリーはマイク越しに生徒たちに呼びかける。

「」

「クルシュさん。大丈夫なのでしょうか」


「大丈夫、ハンス君を信じればもうカウンターはないんだから、思い切って行くよ!」


 生徒たちは一斉に構える。


『行きますよ! せーの――』


 生徒たちが魔法を出す直前、一本のナイフが魔法陣に刺さる。

 すると、魔法陣にヒビが入り、まるでガラスの様に粉々に割れる。割れた魔法陣は雪の様に舞い散り、消えていった。


「えーー!」


 生徒たちは驚愕する。それもそうである。たった一本のナイフが自分達を閉じ込めていた魔法陣を破壊したのだから無理もない。


「はいちょっと退いてー。空気の読めないおじさんが通るよー」


 生徒たちの間からハンスと同じような服を着た男が割って入り、観客席から飛び降りる。

 男はルナとラグレッドの前に座り、脈をとる。


「よし、まだ間に合う。あー、ちょっと誰か運ぶの手伝ってくれないかい? あと、医療室の場所も教えて欲しいし」


「私が教えてあげるよ!」


「わ、私も!」


 クルシュが先に降り、遅れてナーシャが飛び降りる。男がラグレッド、クルシュがルナを抱えて医療室に向かって行った。


「よし、俺達は早くここから離れるぞ! 俺に続け!」


 残った生徒は、アレクサンダーを先頭に早々と外に出ていった。


「ほら、マーレイ君達も早くお逃げなさい。私達も後で向かうので」


「分かりました!」


 マーレイとリリーも外に向かう。


「――それで、どうするつもりだ?」


「とりあえず彼を待ちましょう。話はそれからです――」


 ――反転世界の中、シャービスは地面に立ち、ハンスは天井に立つという奇妙な光景が見られた。


「よし。もう完全に感覚を戻した」


 ハンスは安堵して息をつく。


「さて、ここから出るには俺を倒すしかなくなったが、どうする?」


「決まっている。貴様を倒すのみ!」


 シャービスは両手を地面につける。シャービスの影はグングン伸び、浮き彫り始める。


「シャドウハンド!」


 シャービスの影から黒い手がハンスに向かって伸びていく。

 ハンスは天井を蹴って、勢いよく落ちる。黒い手が迫る中、ハンスは黒い手に向かって手を伸ばす。


「フリーズストーム!」


 ハンスの手から冷気を帯びた風が渦巻く。黒い手は風に当たると凍りつき、ハンスは凍った手を七星剣で破壊する。


「はっ!」


 ハンスは落下の勢いをシャービスに全てぶつける。シャービスも剣を構えて防御するが、耐え切れずに膝をつく。

 ハンスはそのあと、一旦距離を取り、シャービスが態勢を整える前に別の魔法を唱える。


「フロストアヴァランチ!」


 シャービスの頭上に大量の氷塊が雪崩れ落ちる。シャービスは避けることができず、氷塊に埋もれる。


「ゴホッ……ゴホッ……これでどうだ……?」


 しかし、ハンスの期待とは裏腹に、氷塊はもぞもぞと動き、中からシャービスが飛び出す。


「はぁっ!」


 シャービスはハンスとの距離を一気に詰め、お互いの剣で鍔迫り合う。


「――っ! そこだ!」


 ハンスはシャービスの力が抜ける瞬間を狙い、一気に弾き飛ばす。弾き飛ばされたことにより、シャービスは一時的に無防備となる。


「はっ!」


 ハンスはその隙を逃さず、強烈な突きをかます。


「ぬぅぅ……!」


 シャービスは腹を抑え、痛みを感じながらも態勢を整え、次の攻撃を開始する。


「赤い荊!」


 シャービスの両手から血のツルが伸びる。シャービスはツルを器用に操り、七星剣に絡ませる。


「貴様の剣術は見事なものだ。しかし、それを封じれば攻撃のパターンは一気に下がる!」


「こんなもの……簡単に凍らせれる……!」


 ハンスはツルに冷気を集中させる。

 しかし、気づいた時にはもう遅かった。ハンスの足に血の荊の棘が刺さる。するとハンスは力が抜けた様に崩れ落ちる。


「油断したな」


 シャービスは倒れているハンスを見て笑い、手を合わせる。


「これで終わりにしよう。――紅天の空 立ち並ぶ十字 逃げ惑う生贄よ 汝を救うは生きた狩人 救済を奪え 足掻き強欲に従え――阿鼻叫喚(あびきょうかん)掌返(てのひらがえし)


 ハンスを中心に黒い液体が円状に広がる。その円はドロっと粘液質を持っており、立とうとするハンスを逃がさないかのようにへばりつく。


「まずい……!」


 ハンスは力を振り絞り脱出しようとする。

 しかし、ハンスは足を誰かに掴まれている様な感覚を覚える。下を見ると黒い手が何本もハンスに絡み付いている。


「ケテ……タス……ケテ……」


 円の奥から様々な人の声が聞こえる。


「そいつらは天に召さめる前に私が取っておいた死せる者達。今や精神が壊れ、これを使うたびにひょっこりと顔を出すとする哀れな奴らさ」


 死せる者達の手はとうとうハンスが見えなくなるほどハンスを囲む。そのまま手はハンスを取り込み、円の中に沈んでいく。


「仲良くしてやってくれよ。裏切り者さん」


 シャービスは完全に見えなくなったと確認し、高らかに笑う。


「○☆△#××□……」


 円の中からシャービスが聞いた事のない、謎の言語が聞こえる。シャービスは気づく。この空間の静けさに重みが加わり、体の内側を撫でられるような、気持ち悪さを感じた。


「#☆○+◇%△……!」


 その直後、シャービスの魔法は跡形もなく消え、ハンスの姿が現れる。

 ハンスは先程よりも極限まで集中しており、その雰囲気に不気味さすら感じる。


「ま、また貴様はぁぁぁぁ!」


 怒るシャービスを無視し、淡々と言葉を吐く。


「我らはレヴァイツ。時の反逆者なり」


 ハンスはシャービスが対応出来ないスピードでシャービスを凍らせる。


「散れ」


 ハンスは氷塊を一文字に切る。七星剣を鞘に納めると同時に氷塊にヒビが入り、まるで冬に咲いた花が風に吹かれ花弁を散らす様に粉砕される。

 ハンスは倒れたシャービスに向かい手を合わせる。


「ア……リガ……トウ……」


 自分のほかに一人しかいない筈の空間で、ハンスは二人の男女の声を聞いた。

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