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聖夜の幼女収穫祭 前半

この話は前半後半に分けて投稿します。

それと来週と再来週は新章を執筆するので投稿はしないです。

あ、でも今月の31日と来年の1日は番外編的なものを投稿します。


迷宮都市で迷宮を攻略したことを報告しに行って二週間ほどがたった。

外を見れば冬の支度をしている店が並ぶ。

この家は迷宮を攻略したことを話したらギルドマスターが特別報酬で貰った家だ。庭付きの一軒家だが豪邸というほど大きなものではなく、普通の民家くらいのサイズだ。


「やばい!今年もこの時期がやって来た!」


事の始まりはナツキのこの一言だった。

迷宮都市で幼女たちがはしゃいで回っているのを見ていて日本の風景が目に浮かんだ。



「ふぇ?なんかあったっけ?」


「クリスマスだろクリスマス!エリシアも親からプレゼント……いや、ごめんな……」


エリシアの親については語らないことにしていたがついクリスマスの話をすると出てしまう。

ナツキが謝ると慌てて椅子から立ち上がる。


「そんな!気にしてないからいいよ!それにお母さんがいなかっても私にはナツキくんとソラちゃんやルナちゃんもいるから寂しくなんてないよ!」


そう言い膝に座らせていたルナをむぎゅーっと抱きしめた。


「おねーちゃん、くるじぃ〜よ〜!」


抱きしめたせいでルナの頭にエリシアの巨大な山に呑み込まれる。


「わわっ!ごめんねルナちゃん!」


「何をやっとるんじゃお主たちは……ほれ、今日の夕餉じゃ。ささっ、冷めぬうちに早く食べるのじゃ」


そう言いナツキとエリシアとルナが座る机に寒い時期にはぴったりな鍋を運んできた。

その鍋は黒々としたスープがぐつぐつと煮えている。

そしてなぜか鍋の中で飛び跳ねている生物らしき食材。


「ねえ…これって何鍋なの?」


エリシアはお玉で鍋をかき混ぜながら呟く。

ルナにいたってはエリシアの膝の上で涙目で鍋を見つめている。前にもソラがご飯の準備をしたときにルナがおいしそうな匂いに釣られて味見をしたときに痙攣を起こして気絶したことがあった。それ以来ソラにご飯の支度はさせてなかったが最近は料理をするのが好きになったらしくよく作るようになった。

毎回なぜか色がおかしかったりするが香り、味ともに問題は無かった。だからナツキたちも作ることを許しているがルナは決して食べようとしないから別でエリシアかナツキがルナのご飯の支度をしていた。


「これはダンジョン飯とでも思ってくれ。迷宮から持ってきた食材で作った物じゃ。今回もしっかりと味見をしたから色以外は問題なしじゃな!」


それを聞いて誰一人と安心することは無かった。

ダンジョンで主立って狩っていたモンスターは………あのスライムだ。


ナツキが鍋を持って外に投げ捨てようとするが窓の前にはソラが立っていた。


「ナツキ!お主、その鍋をどうするつもりじゃ!!」


「どうするも何も捨てるに決まってるだろうが!」


「なにぃ!?我がせっかく作った夕餉に手をつけることなく捨てるじゃとぉ?」


「当たり前だ!何がうれしくてまたあのスライムなんかを食わないといけないんだ!」


ナツキとソラの言い合いがどんどんヒートアップしていき鍋を机に置きなおして二人は言い合いを続ける。

それを宥めようとナツキとソラの間に割ってはいるのはいつもエリシアの役目だ。

そしてその横でかごに入った果実を食べているルナが鍋の方を向いて声を上げた。


「お兄ちゃんおねーちゃん!お鍋が逃げてる!」


その声で机に置いていた鍋に目を向けるがそこには何もない。

出入り口のドアの前にいた。

その鍋は黒い触手を六本だして四本は足のように地面に這わせ、残りの二本を手を使うように器用にドアノブを開けていた。


ギィーガチャ。


すたたたたっ。


ギィーパタン。



鍋に逃げられた瞬間、静寂が訪れた。

それはまるで嵐の前の静けさ………。


「ちょ、ちょっと二人とも!言い争ってる場合じゃなくなったよ!?早くあの鍋を見つけないと大変なことになっちゃうよ!」


冒険者がたくさんいる街とは言えあの鍋は恐らくA級モンスター以上の素材が使われているはずだ。ナツキは台所で変な食材の鳴き声を聞いたが見て見ぬ振りをしていたためにこうなってしまった。

そして恐らく触手があると言うことはもちろんスライムが入っている。

スライムは他の生物の死体もしくは素材から新しい武器や肉体を作り出す性質を持っている。

あの時止めていればと少し後悔した。


「やばい…!やばいぞ!これはやばいことになったのじゃ!」


「確かに。これはやばいよな……スライムだもんな……それで?なんの素材使ったんだ?」


「キマイラにスライムにナツキの髪の毛と爪にフェアリーの涙とフェニックスの肉に………それと、我の愛情じゃ」


「待て待て!今なんて言った?俺の髪に爪!?なんてもんを入れたんだよ!?」


ナツキは一抹の不安が思考をよぎっていつもの冒険時に着用する装備をフル装備で扉から飛び出して行った。


「まてまて、我の愛情についてはスルーなのか!?」


ナツキにスルーされたのがなんとも言われなかったことに腹立たしげに叫ぶがナツキは帰ってこない。


無視され硬直しているソラの背中にエリシアとルナがぽんぽんと励ますように撫でた。


「まぁ、誰にでも失敗はあるけど、食べ物に髪とか爪とかこれから入れるんだったらソラちゃんには一生ご飯を作らせたりしないからね?」


励ましではなく怒られていることに気がつくのはエリシアが背中を思いっきり抓った頃だった。エリシアは銀狼族の怪力を発揮して肉が取れるんじゃないかと言うくらい抓った。


「ごめんなのじゃ!痛い痛い!我はこれでも元神なんじゃ!もっと丁寧に扱ってくれんかの!?」


その言葉にエリシアは手を離してくれたものの何も言わず那月と同じように装備をつけて飛び出して行った。


だがまだソラの背中には小さな手が当てられていることに気がつく。

振り返ると万遍の笑みを浮かべているルナが笑顔のまま言い放った。


「ソラちゃんはやっぱりばかでへんたいなんだよね〜!でもそんなところが好きだっておにーちゃんいっつも言ってたから気にしないでね!ルナもソラちゃんのちょっと抜けてるところだーいすき!」


そう言いルナは小さな龍の羽を出して那月とエリシアを追いかけるために出て言った。

三人を追いかけるためにしっかりと戸締りをして家を出た。

……もう馬鹿と言われないように言動に気をつけよう。


ーーーーーーーーーーーーーー


ナツキが町中を駆け回るが鍋の行方が分からなかったため、ギルドに向かい鍋捜索の依頼を出すことにした。


「あれ?ナツキさんまた何か用ですか?」


猫耳の受付嬢が那月を呼び止めた。


「ん?またってどう言うことだ?」


「はい?何言ってるのかよく分からないですけどナツキさんさっき変な依頼出して言ったじゃないですか」


そう言って受付嬢はカウンターの下の紙の束から依頼書を取り出してナツキに手渡した。


ーーーーーーー【聖夜の幼女収穫祭】ーーーーーー


とにかく幼女を集めてSランク冒険者のナツキに連れてくる。

連れて来た人には幼女1人につき白金貨一枚を報酬として出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ね?」


「いや、ね?じゃねぇーよ!どう考えてもこんな依頼おかしいだろ!?つーか、こんな依頼だすなんてどこの変態だよ!」


ナツキがギルド中に響くように声を張り上げた。

するとギルドにいたものはすべてがナツキに視線を寄せていた。

まるで「あれ?お前って変態だったよな?」とでも言いたげな視線を……。


「ナツキさんって変態ですよね?あれ?私の勘違いでしたっけ?」


キョトンとした表情でナツキに問いかける猫耳の受付嬢。


「あぁ、そうだよ!変態だよ!幼女愛好家ロリコンだよ!ペドフェリアだよ!」


「ぺどふぇ……え?何ですかそれ?とにかく、ギルド内ではナツキさんは変態って呼ばれてるから今更こんな依頼が出ただけじゃ誰も何とも思いませんよ」


ちくしょうっ!今までの行いがここに来たのかよっ!


「その以来キャンセルしてくれ!俺の偽物だ!またあの馬鹿ソラが変な料理作りやがったんだよ!」


ナツキがそう言うと受付嬢はサーッと顔からどんどん血の気が引いていく。


この受付嬢も犠牲者なかまだったようだ。


「こ、今度はあの人何作ったんですか?」


「スライムをベースにフェニックスの肉とキマイラとフェアリーの涙に俺の髪の毛と爪とか入れてる謎な鍋だ」


「え?今なんて?スライムは置いといてナツキさんの髪に爪って言いましたか?……それは大問題ですよっ」


「まぁ、その反応は当然だよな……ん?スライムがどうでも良くて俺の髪の毛と爪が問題だって?」


「はい。スライムは何万年も前に薬剤として使われることもありました。そのスライムを使って誰かのクローンを作ったりしていたと言う文献が残っていましたけどその作り方は大昔のギルドマスターが破って燃やしたから作り方は出回ってないはずです。その複製された人間はオリジナルの強さの半分くらいしか力を発揮しないんですけど、そのオリジナルにナツキさんが使われたとなれば……あぁ…これは不味いですよ!すぐに放送で避難勧告をしないといけません!」


「まて!ちょっと待ってくれ……それってもしかして知能も半分くらい残ってるんだよな?」


「えぇ、そうなりますね。それがどうかしたんですか?」


ナツキは顎に手を添えて考え込む。

例えナツキの半分くらいの力と知能ならナツキは余裕で倒すことができるはずだ。

でもその引き継ぐものは決めることができない……。

もしもあの鍋ナツキが自分のアウトな部分を引き継いでいたとしたら……。

そう考えるとゾッと悪寒がする。

その予想を外れて欲しいとは思っていたがその予想は鍋ナツキが出した依頼を見るからに……その予想は的中していた。


「ナツキさん!」


「あぁ、悪い。これは俺の身内が引き起こしたんだ。ちゃんと後始末は俺がやる。だから避難勧告は出さなくていい。それに知能が残ってるなら避難勧告をした所で何も変わらない。俺からの……鍋ナツキからの依頼はキャンセルにしてこの依頼を受けた人には詫びを入れにいくから名前を書き出しといてくれ」


「あ、はい!頑張ってください!」


そしてナツキはギルドの外で待っていたエリシアとルナとソラを見てから呟くように言った。


「今日は十二月二十四日。イブなんだ。この世界にそんな風習が無かろうと俺は幼女たちのクリスマスを守りきってみせるっ!みんな力を貸してくれるか?」


ナツキがいつものように馬鹿げた話をしていると三人は思ったが声のトーンが真面目な時のトーンだったせいか頷く。

頷いたのに満足したのかナツキは「そうか…やってくれるか」と呟いて魔法袋に手を入れ赤と白の袋に入った衣服を三人に渡した。

そしてすぐにナツキも赤色の帽子をかぶり赤と白の衣服に身を包み黒色の長靴を装備した。

同じように渡した袋を持ってギルドの更衣室を借りて着替えて来た三人を見てナツキは満足そうに笑みを浮かべる。


「これって防御力が低い気がする…それにスカートなんてあんまり履かないからスースーするっ!けどこの服かわいいね!」


ナツキと同じタイプの赤と白の衣服だがズボンがミニスカートに変わり、黒色の長靴も茶色のロングブーツになっていた。……可愛い。



「おにーちゃん!この服あったかいね〜!」


ルナはモコモコの雪だるまの着ぐるみを身につけていた。ロリはあえて肌の露出を隠すから美味しそうに見える。……この件が済んだら美味しくいただこう。そして愛らしい。


ルナとエリシアはきゃっきゃきゃっきゃとはしゃいでいたが1人だけ沈んでいる人がいた。


「なんじゃナツキ!こんなの可愛くないぞ!我もエリシアみたいなのが良かったのじゃー!」


そう。ソラだ。

ソラは茶色の全身タイツに顔だしのトナカイ被り物を被っている。

あまり凹凸がないとはいえ何と無くエロい。 まぁ、全身タイツがエロく感じるのは男としては当然だよな。

でも被り物があるから何かの罰ゲームみたいになっていた。


「まぁ、可愛いと思うぞ?」


「そ、そうかの?なら良いんじゃよ」


ナツキは棒読みで言ったにも関わらずソラは体をクネクネさせながら歓喜に震えていた。


……この場合は放置に限る。


「それよりも鍋ナツキは面白いこと考えるな。【聖夜の幼女収穫祭】…か。面白いな……」


誰に聞こえるように言うわけでもなく、独り言のようにつぶやきニンマリと笑みを浮かべ、真っ赤な戦闘服サンタコスで聖夜を彩った。





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