第一章 異世界転生17 オーク砦⑧
久々に更新できました。なかなかに書きたい話がまとまらなかったのと、読むほうに専念してました。仕事も多忙だったのもありますが、話の途中なので、頑張って更新します。
アビーがベレムに従って部屋に入る。大きな部屋に入ってからしばらくして、べレムが振り返る。
それに合わせてアビーも足を止め、お互いに向き合う。距離は10mほど、いきなり襲い掛かっても互いに向かい撃てるだけの距離を置いて、正対する。
ハイオークのべレムが斧と盾を両手で重ねもち、体の正面に置く。体の真ん中足元の位置に立てかけるような位置で臨戦態勢ではない意思表示をしてくる。
「ハイランダーの女戦士よ、名を改めて聞こう。」
「私はアビー、ハイランドの戦士団の一員だ。ハイランドには女戦士などの区別はない。ハイランドにて武器をふるうもの、皆等しく戦士だ。」
「そうか・・・俺はベレム。独鬼さまの副官を務めている。ハイオークの戦士だ。ハイランドの戦士は大盾と大剣を振るうのを常とする。見るに大盾は持っていないようだが、盾は装備しないのか?」
「オークである貴様に言われることではないが、ハイランドの戦士は戦いに使えるものは何でも使う。敵を倒し、手に入れた物が優れた物であれば、それを身に着け、それも使う。この2本の剣は、私が旅の中で手に入れた剣だ。ハイランドの戦士として帯びるに何の不都合もない。」
アビーは言い放つと、両手に剣を抜き放つ。
1本は片刃の直刀、刃先は先端が膨らみ弧を描く、峰の側は直線、仄かに魔法の光を帯びる、北の民が好むファルシオン、もう1本はルーンが刻まれた長剣、こちらもルーンが仄かに光を放つ。
対峙するベレムは盾と斧を構え直す。
アビーが速さと手数で勝負をかけ、ベレムが迎え受ける。そんな構図が描かれる。
「準備はいいのか?アビー。神への祈りを捧げるのなら、それも待ってやろう。『ディアナ』に祈りを捧げるがいい。」
「ディアナへの祈りはもう済ませてある。後は勝利の報告を捧げるのみだ。遠慮はしない、先制させてもらうとしよう。」
言葉と同時に踏み込むアビー。右手のファルシオンを叩きつけ、反対の手で長剣を切り上げる。
ベレムはファルシオンを盾で受け止め、長剣を斧で切り払う。
アビーが攻撃し、ベレムが防ぐ。ベレムは自分から攻め込まず、アビーの攻撃を受け流し、受け止める。
互いに距離をとる。
「ベレム、なぜ攻めてこないんだ?私じゃ、相手にもならないということか?」
「誇り高いなハイランダーのアビーよ。ここでの勝負は本当の生死を分かつものではない。お前が望むなら負けてやっても良い。」
「可笑しなことを言う。なぜだベレム、ハイオークといえど、戦士であってわざと負けるのをよしとするとは思えない。何を考えている?」
「お前に話すつもりはない、ただハイランドの戦士には縁があるのだ。」
「生死がかからないというのであるならば、なおのこと全力を出すのが礼儀ではないのか?ハイオークのベレムよ。」
「ならば全力での戦いを望むのか?ハイランドのアビー。」
「この戦いは子供らを助けるために必要なもの、子供たちは我らハイランドの者にとっての未来。ならばこの戦いは『ディアナ』にも捧げるものだ、それがまやかしの物であってはならない。結果がまやかしであるのならば、その思考は誠実なものでなければならない。それゆえに私は私の全力で貴様に挑む。」
「いいだろう、アビー。お前がそれを望むなら、我らは我らの神に戦いを捧げるのみ。すまないなハイランドの戦士、アビーよ、お前に詫びよう。そして現世に帰れ、この戦いで何かをつかむことを願う。」
ベレムが斧と盾を体の前に構え持つと同時に体からオーラが上がり、両足の靴底が軽く地面にめり込む。存在感が増し、アビーには強く威圧されるように感じた。
「かかって来い!お前が望んだ全力を味わって見るがいい。」
アビーはその声を受け、ベレムに向かって駆け出す。
まるで声に誘われるかのように。
右手のファルシオンが大きく弧を描く、走りこんだ速度と振りかざした重量を乗せて、先ほどと同じく、ベレムの盾に打ち込まれる。
『ガキン!』
ファルシオンは盾の手前の空間で受け止められていた、そこに見えない盾があるかのように。
アビーはファルシオンを引き、体を大きく回して、左手の長剣でも打ち付ける。
が、これもベレムの前の空間で刃は受け止められた。
『ガキ!キン!ガキーン!キン!』
その場でベレムを支点にするかのように弧を描きながら、何度も何度も打ち付ける。が、いずれもベレムの体を覆うオーラに阻まれるようだ。
およそ、全力で20合。両手に握る鉄剣を振り続け、目に見えない壁に打ち付ける。
目に見えない壁に弾かれる衝撃は、そのままアビーの体内に反射する。
戦闘そのものはもう少しだけ続きます。この戦闘の後で、逃げた子供たちのほうに話は飛ぶ予定です。生暖かい目で見守ってください。




