第605話
今回は『汎用魔法』で有害金属を除去したけれど、研磨時に濡らしていい鉱石の場合なら水洗いし専用容器に洗浄水を貯める方法も有りでした。その代わり平ヤスリを完全に乾かさないと錆びが浮くので注意だけどな。
赤い岩塩の表面を木賊で整えたので、緑の岩塩を研磨する前に表面のコーティングについて確認する事にした。一つずつ処理するのか、纏めて処理するものなのか。
「はい、お疲れさま。岩塩のコーティングだけど何種類かある。一番簡単なのは仮漆を塗って乾かす。岩塩ランプなんかでよく使う手法だね。次によく使う手法は別の岩塩で覆い『塩対応』で圧着する。一種のダブレット加工だね。他にも薄い魔導ガラスで覆う方法や、【水母シート】を沿わせるとか、魔漆を塗るとか、まぁ様々だね」
「凄く多いんですね」
「目的によるからね。今回はコカコッコの食糧って事だから透明な岩塩でコーティングするのが一番だ思うよ。そして可能ならコカコッコに岩塩を石化処理してもらう……と」
「頼まなくても石化しそうですけどね」
「じゃあ、一回コーティング処理をしてみせるよ。工具の【挟尺】か『汎用魔法』もしくは空間魔法の『副尺測定』で対象物を測定し、その結果を元に上に被せる部分を作る。実際に小型刃物で彫り込んでもいいし、『彫り執刀』というスキルで作成してもいい。再生岩塩とコーティング用岩塩がピッタリ合わず少し隙間が空いても『塩対応』で圧着するから大丈夫だからね」
【挟尺】という工具はノギスの事でした。という事は『副尺測定』という魔法はノギス魔法って事か。スキルや魔法が使えなくても工具さえあれば手作業でいけるっていうのは良いな。
「今回はパパっと『彫り執刀』で作成する。これ、コーティングを掛けたい岩塩本体が同じサイズだったらスキルでコーティング部分を量産出来るんだよね」
「スキルならではですね」
「大量生産する時は便利だけどね。まぁ……ね」
何にその歯切れの悪さ。何を伝えたかったのか気になるじゃないか。
「流石にボクにその辺りのスキルは無いので手彫りします」
「それなら、青い岩塩を使って説明するよ。コーティング部分に収まる様に再生岩塩に対して『彫り執刀』を使ってもいいし、『彫りの鬼』で整形してもいい」
スキルの力であっという間にカボッションカットに変化する青色の再生岩塩。底板に透明な再生岩塩、整形済みの青色の再生岩塩、透明な再生岩塩のコーティングドーム。この順番で重ねられた再生岩塩にザン=ギュラー先生が『塩対応』を掛けるとあっという間に三つの岩塩が一体化した。見た目は極小の水まんじゅうみたいだ。
「まぁ、こんな感じだよ。後は外側を木賊で整えてあげれば完成。削りすぎて折角封じ込めた青色の岩塩を露出させない様に注意してね」
「凄い……。とても岩塩には見えないですね」
「練習するには削りやすさだと岩塩だけど、扱いやすさだと【スライムの死核】の方が上かな。ただ、【スライムの死核】のコーティング剤は魔導ガラスになるから少しコストがかかるね」
そして、有害物質を含む再生岩塩の研磨は工具を使わず集塵の魔道具の傍でスキル処理した方が衛生的で安全でしたわ。
流石に、色付き岩塩とコーティング用岩塩を一気に研磨……とはいかないので今日は危険な色付き岩塩の研磨だけをすることにした。安全な岩塩なら何個失敗しても構わないし。
「ザン=ギュラー先生、安全な岩塩部分を研磨する時の注意点は有りますか?」
「そうだね……、付着した微粉末の塩を落とさないまま家畜に会いに行かない事かな」
「家畜ですか?」
「高確率でペロペロされちゃうよ。特に山羊」
前世の洋画で鳥に囲まれるのがあったな。それの山羊版かよ。かなりホラーだ。きっと知らない街に配達されるに違いない。
ザン=ギュラー先生作の圧着トリプレット岩塩はタッキーに見せて石化をお願いしてみよう。直ぐに食べられちゃうんだろうけどな。
岩塩の内側をくり抜く工具はぶっちゃけ彫刻刀の丸刀だった。使用後に塩分を除去して油を塗っておけば良し。なので作業前には拭き草で丸刀に塗ってある油を拭き取る事が必要不可欠だ。油まみれの岩塩とか嫌だしな。勿論、手作業なら土台に固定しないと手汗が悪さをする。大きい岩塩だったら【水母シート】越しに掴めば問題ないし、魔蛸の吸盤で固定する方法も有る。傷は付くけどクラーケンの吸盤の内側の爪で押さえる事も可能だった。
そしてフッと思い付いたんだけど、何色かの色付き再生岩塩をスライスし安全な透明岩塩の上にモザイク状に並べ、その上に透明な岩塩を乗せて圧着したらモザイクオパール風にならない? 底面を黒い岩塩にしたり、色付き岩塩を半透明の物にしたり、部分的に重ねたりして色に深みを出したりしてもいいな。そして最終的に石化処理。石化処理しなくてもトリプレット・モザイク岩塩って面白と思わない? それを上手く組み立てればステンドグラスみたいに出来るかもしれない。いや、ステンドソルトだな。
まて、それって【スライムの死核】でも同じ事が出来そうなんだけど、作っている人が居ないって事は無理ゲーなのか? それとも未知の技法?
試す価値はありそうだ。
そしてザン=ギュラー先生が大量生産に対して歯切れが悪かったのは単に “ スキルで大量生産するのって所詮はツマラナイんだよね…… ” って意味だったよ。




