第602話
岩塩を鑑定したら、三個全てが鉄を含んでおり、青と緑には銅も含まれていた。そして他に微量の有害金属も含まれていると出たけど、何なのかまでは不明。配合比率も不明。全てが食用不可と出ているのでコカコッコ用にしかならないよなぁ。これ、多分だけど『汎用魔法』の『有害金属除去』を掛けたら一粒で相当の魔力を持っていかれる予感がする。
まぁ、表面をコーティングする技法が有るとのことなので、その処理をすれば湿気対策と危険物対策が出来る。コーティング技術を学ぶのに丁度いい素材を手に入れたという事で。前世でも脆い鉱石の上に水晶を貼り付けてから研磨するダブレット加工というものがあったからそんな感じだろうか? それとも樹脂コーティング風だろうか?
そのコーティング技法って【スライムの死核】にも使えるよね? あれも脆いし溶けるから。
岩塩を研磨して、ホタテビキニを完成させたら速攻でアリさんのガーネットを研磨して納品。それからアンディーから貰った石を研磨してピアスにするのと、ウォーター・ゴブリンの石と皿を研磨する。アリサお姉ちゃんから依頼されている強化石とジョンノ=レーンさんから渡された石の研磨。
それと同時にハギレの縁かがりの手習いと刺し子の練習。文様の勉強をしながらホタテの貝殻の透かし作業の研究だな。あと【魔ボヤ】の研磨!! それと一番大事な自宅の設計図作りだよ。草案を出さないといつまでたっても家が建たない。
マツタケなんか取りに行ってる場合じゃなかったよ……。
そして早いところナメコを処理しないと、偽装工作で借りた保管庫代を延々と支払う羽目になるからな。どこで試作するのがいいか……商業ギルドだと監視というかホーク=エーツさんが同席してきそうだよね。職校だと手狭だし、そうなると学園だな。実は薬草を煮出ししたりする為に使う実験棟があるからな。そこの使用を申請しよう。目的は【スライム茸】の研究って書けば授業に数回しか出てなくても許可してくれないかなぁ……。薬草類は一切使わない約束で。十の日は休校日なんだから、今日申請してきて二の週・一の日以降で日程を調整してもらおう。
ムキュウ ムキュウ
「アンディー、お喋りしたい? それとも念話にする?」
(「ねてるの ちずかに ちたいの」)
肩口というか枕の脇の方でカトリーヌがスヤスヤと寝息を立てていて、短い四肢の隙間にコカちゃんが挟まって寝ていた。前世だったら禁忌だよなぁ、豚と鶏の同棲。サイズのせいでヌイグルミに見えなくもない。白熱灯色の魔導ランプに照らされると特徴的なコカちゃんの羽毛の色も落ち着いて見える。
(「ますたー ばーば ねこみけを おうまさん ぶたさん とりさん こうもり くるらほーん おでかけ ちたいの」)
(「ファミリーだ。皆とお出掛けって楽しそうだね」)
(「ちゅみやきやま おでかけ ちたいの」)
(「お弁当を持って行こう」)
(「あたち くっきー」)
(「ラパンに二人乗って、ワギュに一人…かな」)
(「あたち はこ いい」)
(「箱? あっ、馬車か」)
(「おでかけ ちたい〜」))
(「お出掛けしよう。オロール先生と三毛皇閣下に打診するからね。あっ、アルチュールさんにもだね」)
(「おでかけ こうもり くるくる ちたいの」)
出先でカミチスイホイホイするの? ガジェットは関係なく、あのグラスで赤ワインをクルクルして飲んではみたいけどね。しかし、外でお酒を飲んだら馬車は動かせないぞ、捕まる。となると状態回復薬を飲む、いや最終兵器があるぞ。コカコッコの成鳥の突き攻撃。タッキーとチャーモが付いて来てくれるかが謎だが。それより飲兵衛共を突いてくれるかどうか…だけどね。
(「皆でお出掛けの計画を立てようね」)
(「かみさま かみさま」)
(「神様? 神様も誘うの?」)
(「こえの かみさま いっちょ」))
ヤーデさん!! 折角なので色んな神様にお供え物をすればいいんだよ。紅葉はないけど紅葉狩りピクニックって事で。春になったらお花見もいいな。
(「少し寒いけど、今年のうちに出掛けようね」)
(「ちろいの ちらちら ちろいの ぱらぱら」)
えっ……、それって初雪!? 雪のチラつく中で酒盛りって嫌なんだけど……。喜ぶのはオロール先生だけだろ、それ。
(「コカちゃんのパパ達に【ホヤッキー】をプレゼントして、アリさんの石を磨いたら、アンディーから貰った石を磨くからね。ピアスにしてここに着けるよ」)
キュゥ〜ン
(「ますたー いっちょ いち いっちょ」)
よく見たらアンディーの額から【カーバンクル石】が少しだけ姿を現していた。あれからまた生えてきたんだな。
(「ボク達、お揃いだね」)
(「ぶたさん ますたー いち あげる いってた」)
(「そうなの?」)
(「ひみちゅ ひみちゅ ぶたさん ひみちゅ」)
(「そっか、秘密だったんだね」)
(「ひみちゅ わちゅれて」)
(「うん。約束するよ」)
カトリーヌも何かしらの石を俺に渡そうとしてるのか。無理しなくていいんだけどなぁ。でも、どんな石なのか気になる。
「アンディー、寝ようか」
ムキュウ ムキュウ
◇◇◇◇◇
ガチャガチャ ガチャガチャ
「わい、なして開がねの。鍵っこ開がねー!!」
(訳:おいおい、どうして開かない? 鍵が開かないよ!!)
ホカホカの冬毛を堪能していたらドアガチャ音で覚醒した。オロール先生が部屋を間違って俺の所でドアガチャしてるよ。
「参ったじゃ。へば…… “ 鍵だ鍵だ どさ鍵いっだ スィンテラー町の豚小屋だ 豚の鼻コさ鍵いたじゃ ” ほれ開いた」
(訳:参ったね。どれ…… “ 鍵だ鍵だ どこに鍵はある スィンテラー町の豚小屋の 豚の鼻に鍵が刺さっていたよ ” ほら、開いたよ)
ガチャリ。
「わい、ミーシャの部屋だじゃ!!」
(あらまぁ、ミーシャの部屋だよ!!)
うっわー、起きていかなかったら謎の呪文で鍵開けられてるし。どうする……このまま寝たフリか???
「へば、オレは帰るはんでな。 “ なーもなも なーもなもなも なーもなも ”」
(訳:それなら私は帰るからね。 “ 何も無い 何も無い無い 何も無い ”)
ガチャリ。オロール先生が出ていくと鍵の掛かる音がした。証拠隠滅!?
酔っ払った闖入者のせいで目が覚めてしまったのは言うまでもない。




