第一話 敗戦?
うーん、いまいち、まだ使い慣れません……。
誤字脱字などありましたら申し訳ありません。
ウィル達は、それほどたいした問題はなく、バックスの街に無事到着した。
「なんで3日はかからないはずの街に、1週間以上かかってるのよ!?」
街を目の前にしてミノが叫んだ。
「僕を見て叫ばないでよ、うるさいな、ウィルが見当違いの方向に向かったからでしょ!」
「大変申し訳ありません……でも着きましたし、よしとしましょう」
深々と頭を下げるが、反省してるかどうか怪しいウィルが笑顔を見せる。
「じゃ、僕は友達のところに行くから」
呆れた表情で手を振り、歩き出すカシーラ。
「……なんでついて来るのさ」
しばらく歩いても、後ろからついてくるウィルとミノにカシーラは立ち止まり、振り返らずに尋ねた。
「誰もついて来ていませんが?」
言われている意味がわからないのか、ウィルは自分の後ろを確認した。
「やだぁ〜、何か見える系? やめてよ、アタシそういうの苦手なんだから」
怯えたように辺りを見渡すミノ。
「その顔で何いってんのさ、逆にそいつらが逃げ出すよ! 僕は君達にいってるんだよ!?」
理解してない2人を振り返って指差すカシーラ。
「……なるほど、そういうことですか……ですが水くさいですよ、いくらカシーラさんの友達のためで、僕達に怪我をさせたくないとそんな嘘をつかなくても……僕もミノさんも戦う覚悟は出来ています」
「えっ!? アタシはないわよ?」
覚悟を決めた清々しい笑顔を見せるウィルの横で、全力で首を横に振るミノ。
「何の話さ!?」
「えっ? カシーラさんだけで争っている連中と決着をつけに行くという話じゃないんですか?」
「勝手に作らないでよ! 最初から友達の様子を見に行くっていってるでしょ! そもそも君達の心配なんかしないよ!!」
盛大に突っ込みを入れ肩で荒く息をつくカシーラ。
「なるほど……では行きましょう」
「えぇっ!? 僕の話聞いてた?」
「友達のところに行くんですよね?」
「そうだけど……もう、勝手にして、疲れたよ」
もう無駄だと悟ったカシーラはお手上げと手を上げ、再び歩き出した。
「ところで、バックスでしたか? この街は始めてきますが、どういった街ですか?」
「どうっていわれても……普通の街じゃないかな?」
「カシーラちゃん、そんなんじゃダメよ! いいこうやるの……はい、ミノの観光案内よ、ここバックスの街は魔界十絶景にも選ばれるケサの泉と呼ばれる地下洞窟に隣接するように作られていて、そこから組み上げた水を使って作られるお酒が名産となってるのよ。なかでも幻の酒『魔王殺し』はかなりレアで高価格で取引されてるわ、主にスリーピルといわれる種族の魔者が暮らしているの。スリーピルは羊が主体の魔者でモコモコの毛が特徴なのよ。性格は温和で争いは好まない魔界では変わり者扱いね。ただ、怒らせると大変よ、彼等は相手を眠らせてその間に生命力を吸収しちゃうの、寝ている間に永眠なんてことになるわ、怖いでしょ? まっ、こんな感じかしら?」
胸を張ってドヤ顔を作るミノ。
「素晴らしいです、ミノさん」
「おお〜なんかそれっぽいよ」
2人は感嘆の声と同時に拍手を送った。
「任せなさいよ、伊達に内政四天王とは呼ばれてないわよ、アハハハ」
「おや?」
「えっ?」
「……ハッ!? えぇっと、何か聞こえたかしら? オホホホ……」
2人が首を傾げるなか、自身の失態に気付いたミノはなんとか誤魔化そうと笑った。
「ねえ、内政四天王ってなに? そもそも魔界四天王すら聞いたことないんだけどさ?」
いたずらな笑みを浮かべ、疑いの眼差しをミノに向けるカシーラ。
「えっ? 四天王もないんですか?」
「うーん、僕が人間界に行く前は聞いたことないね。そもそも魔者達は基本自分主義だから、誰かに好き好んで仕えたりしないよ。四天王とか役職なんてふざけんなって感じで、魔王も力で支配してたからさ」
「ちょっと、黙って聞いてれば好き勝手いってくれるじゃない小娘、確かに魔界四天王は大袈裟よ、ちょっと夢見ただけよ、でも内政四天王は存在するわ、アタシはその1人よ!」
「はいはい落ち着いて、顔近いから……じゃあ、なんなのその内政四天王って?」
食って掛かるミノから一歩後ろに下がり距離をとるカシーラ。
「魔界を四分割して、それを4人の魔者に割り当てて、魔界を活性化させる事を目的とした役職よ……」
「そんなのあったんだ……あのさ、最初会った時から思ったんだけど、キミ弱いよね?」
若干呆れるカシーラ。
「そうよ、戦闘なんかからっきしダメよ、生まれ持ったこの体とハッタリだけで生きてきたわ! 悪い! 最初の貴女との切り合い、ウィルさんが止めてくれなかったら、今頃アタシは三枚に下ろされてたわよ」
開き直りというか、半分逆ギレに近い勢いでミノが捲し立てる。
「三枚には下ろさないけどね……」
「ミノさん、素晴らしいじゃないですか四天王、先を見据えた重要な仕事ですよ」
「そうなのよ、魔王様は色々と魔界の事を考えていたのよ……ただ、ちょっと欲が出て、人間界にまで手を出しちゃったから、この人が来ちゃって……アタシの人生設計、水の泡よ」
「まあ、ミノさんは僕が来る前に失脚させられていましたから、それはあまり関係ありませんね」
「ガハッ!?」
容赦のないウィルの言葉に、心をえぐられ地面に崩れ落ちるミノ。
「しょうがないじゃない、誰にだってあるでしょ? 人生絶頂期で調子付いちゃうみたいな……あの時お酒さえ飲まなければ……全部お酒が悪いのよ、お酒が……フフフ、こんな街燃やして……ぎゃっ!」
「やめい! 結局全部キミ自身のせいじゃないのさ、この街は関係ないよ」
怪しい方向に暴走しだしたミノの、後頭部を踏みつけ黙らせるカシーラ。
「しかし、静かな……というより誰もいないですね……」
静まり返った街を見回し首を傾げるウィル。
「普段はこんなんじゃないんだけど……」
同じく街を見回し不安そうな顔をするカシーラ。
そのとたん、少し離れた場所から建物が崩れる、騒音と歓声が響いた。
「ちょっと、今のなによ?」
「わかるわけないでしょ、って、いきなり立たつな」
驚いたミノが急いで立ち上がろうとして、後頭部に足を乗っけていたカシーラがバランスを崩してよろける。
「おっと、大丈夫ですか……とりあえず行ってみましょう」
カシーラの体を支えたウィルが2人の返事を待たず走り出す。
「ありがとう、って、早いよ」
「嫌な予感しかしないわね……」
遠ざかるウィルの背中を、2人は仕方なく追いかけた。
音のした方向に急ぐと、建物を押し潰すように5メートルはあろうかという1つ目の巨体か倒れていた。
さらに、その周りを取り囲むように2メートル級の巨体が数十体。
「その程度で俺様に楯突こうなんて、あめぇんだよ!」
集団の中でも一際大きく逞しい男が、倒れている1つ目に唾を吐きかけた。
「あらぁ……オーガのガーダンとサイクロプスのサイロスじゃない、最悪なタイミングねこっそり様子をうかがいましょ」
建物の影に隠れ覗き込むように状況を見守ろうとするミノ。
「それが良さそうだね、オーガはめんどくさいし……」
さらにミノの体の後ろから覗き込むカシーラ。
「お前等、このでくの坊をしっかり教育してやれ!」
周りにいるオーガ達がガーダンの命令でサイロスを袋叩きにしようとにじり寄る。
「そこまでにしたらどうですか? 倒れてる方を殴っても面白くないじゃないですか」
「ちょっ……何であの人はあんなところにいるのよ」
目を離すほんの一瞬まで、隣にいたはずのウィルの姿がオーガ達のそばに移動していて驚くミノ。
「なんだ、てめぇは? 俺達は倒れてる奴をタコ殴りにするのが好きなんだよ、邪魔するんじゃねぇ」
突然現れたウィルに驚きもせず睨み付けるガーダン。
ガーダンの啖呵に周りのオーガ達も笑みを浮かべて賛同する。
「さあ、サイクロプスの方も建物の持ち主に迷惑ですよ、早く起きて下さい」 オーガ達を全く気にした様子もなく、ウィルはサイロスに手を差し出した。
「てめぇ! 人の話聞いてんのか!」
「ところで、建物の住人は無事ですかね?」
「聞いてねぇのかよ! ……まあいい、街の住人は全員俺達が手厚く預かってる、建物には誰1人住んでないから安心しな……」
不敵に笑うガーダン。
「ちょっと、どゆこと!? 今の話本当!?」
隠れていたカシーラが驚いた様子で飛び出してきた。
「また、変なのが出てきたな……あいつの仲間か?」
カシーラを睨み付けるガーダン。
「君に答える義務はないよ?」
ミノの時とは違い、若干の距離を置いて睨み返すカシーラ。
「カシーラさん安心してください、街には誰もいないそうですから怪我人はサイクロプスの方だけです」
2人の間に流れる緊張感など何処吹く風といった感じで、ウィルが能天気に手を振っている。
「……仲間だな……」
怒りに体を震わせてガーダンが歯軋りをする。
一方恥ずかしさに下を向くカシーラ。
「カシーラさん、サイクロプスさんを起こすので手伝ってください、あっ、ミノさんも隠れていないで、オーガさん達も突っ立ていないで、ほら、手伝ってください」
戸惑う周りを無視して、サイロスを引き起こそうとするウィル。
「……いい加減、俺様を無視するんじゃねぇ!」
怒りを爆発させたガーダンが、叫びながら全力で走り、ウィルに見事なドロップキックをお見舞いする。
ガーダンの巨体から繰り出される凄まじい衝撃に吹き飛ばされるウィル。
その見事なドロップキックにオーガ達から歓声が上がった。
一方、カシーラが展開を読めず、固唾を飲んで状況を見守っていると、ウィルが建物にぶつかる寸前で体を回転させ地面に見事に着地した。
「いきなりひどいじゃないですか、危なく建物を壊すところでした」
何事もなかったように平然と戻ってくるウィル。
「……やるじゃねぇか、ダメージを逃がすため自ら飛んだってわけか」
「いえ、そんな事はありませんよ? もっともらしい解説を入れて自分を強いアピールとかしないでください、普通に吹き飛ばされました」
間髪入れずのウィルの訂正に、恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にするガーダン。「くっ、さっきからてめぇは何なんだ!」
「あのさ、お取り込み中悪いんだけど、街の住人達はどこ?」
ようやく状況を呑み込んだカシーラが申し訳なさそうに会話に割り込む。
「てめぇも黙って……ん? ははぁん、なるほど、住人の中に大切な奴がいるのか?」
意地の悪い笑みを浮かべガーダンがカシーラ、ウィルと順番に視線を動かす。
「あっ、僕にはいませんから、こちらを見てもしょうがないですよ?」
「ちょっと、君は黙っててくれるかな、ウィル?」
いまだ能天気な笑顔を見せるウィルを押さえ、カシーラがガーダンと対峙する。
「君の推察通り、僕の友達が住人の中にいるよ、だからって君の思い通りになるとは思わないことだね」
「ガッハハハ、威勢のいい女は好きだぜ、どう思い通りにならないか見せてもらおうか?」
「……待てよ! お前は俺との勝負がまだだろ?」
ウィルに手を貸してもらいようやく上半身を起こしたサイロスが会話に乱入する。
「けっ、その様で何をいう……っていうか、てめぇはまだやってたのか!?」
起き上がったサイロスよりも、それに手を貸しているウィルに気をとられるガーダン。
「えっ? あっ、気にしないで、お話を進めてください」
「気にしねぇ方が無理だ! てめぇ等も何黙って好き勝手やらせてんだ!」
ウィルを相手にしても調子が狂うだけと、周りのオーガ達に当たるガーダン。
オーガ達は怯えたように目を泳がせた。
「お前こそ、部下に当たるとは器が小さいんじゃないのか?」
「あぁ? 実力がねぇ奴はよく吠えやがる」
「タイマンもはれない臆病者には言われなくないな」
「頭の悪い奴はこれだから嫌になるぜ、統率力も実力の1つだぜ?」
「言わせておけば、このっ……くっ!」
サイロスとガーダンの舌戦はガーダンに勝敗が上がった。
怒りに駆られ立ち上がろうとしたサイロスだったが、足に力が入らず膝から崩れ落ちた。
「おっと、足を怪我されてます、無理をしないでください」
「すまねえな……だがこの程度の怪我で弱音を吐いてたらサイクロプスの恥だ、それだけは出来ない!」
怪我した足に力を入れ根性で立ち上がるサイロス。
「素晴らしい、ヴァディスさんを思い出して胸が熱くなって来ました」
胸に手を置き昔を思い出すウィル。
「あんた……親父を知ってるのか?」
「なんと、ヴァディスさんのご子息でしたか、もちろん知ってますとも、前に拳で語り合った仲です」
「マジか? あの親父と殴り合ったのかよ?」
驚愕に間抜け面でウィルを見つめるサイロス。
「ええ、貴方のお父上との死闘は、思い出すだけで今も心が高揚します」
「……あのさ、思い出話を始めるのは勝手だけど、話進めてもいい?」
疲れた表情でカシーラがやる気のない声を出す。
「おちびさん、すまないが俺が先なんで譲ってくれるか?」
「ムッ、誰がおちびさんだって? 僕にいってるわけじゃないよね? 君に比べたらここにいる全員小さいもんね?」
不機嫌丸出しでサイロスを睨み付けるカシーラ。
「あっ……えっと、すまない……でも、なんで怒ってるんだ? お前子供だろ?」
「うるさい! 君も少し黙っててくれる」
まるでこの会話を切り裂くように、いつのまにか出していた鎌を横一閃に振り抜いた。
「お、おう」
気迫に気圧されるサイロス。
「……もう、めんどくさい……とりあえず、君は死んでよ、その後で君の部下にでも聞くからさ!」
視線をサイロスからガーダンに戻すと、カシーラは肩に鎌を担ぎ、姿勢を低くして走り出した。
ガーダンは武器を構えていない状態なので、身長差があってもリーチは完全に有利とふんだカシーラは一気に飛び込んで終わらせようと考えていた。
だが……
「カシーラさん右!」
突然ウィルが叫び走り出す。
ウィルの叫びに、カシーラは右に視線を一瞬向けると、自分目掛けて飛んでくる矢を目測、なんとかジャンプしてかわした。
しかし、着地の瞬間、一瞬無防備になったカシーラを、待ち構えていたガーダンが渾身の右ストレートで出迎える。
為す術もなく、顔に命中したカシーラはウィル以上の勢いで後ろに吹き飛ばされた。
きれいに入ってしまったパンチに意識を失うカシーラ。
建物を回避することは不可能、誰もが衝突すると思ったその時、走って先回りしていたウィルがカシーラの小さな体を受け止めた。
「チッ、またてめぇか? なんでさっきから俺様の邪魔をしやがる?」
つまらなそうに唾を吐き捨てるガーダン。
「ガーダンさんでしたか? 今回はこちらの敗けということで一度退きます……」
カシーラを抱き抱えたウィルがサイロスのもとへ戻ってくる。
「はぁ? なにいってやがんだてめぇ、敗けということでじゃねぇよ、敗けなんだよ」
「ミノさん、いつまでも隠れていないで出てきてください、帰りますよ、ヴァディスさんのご子息……名前何でしたっけ?」
ガーダンを気にせずマイペースなウィル。
「サイロスだ」
「貴方がサイロスさんでしたか、じゃあ一度退きますよ」
「勝手に退いてくれ、俺はまだ戦える」
「……また、醜態をさらすだけだとわからないんですか?」
「なんだと! いくら助けてくれたとしても侮辱はゆるさいぞ……」
今にも感情を爆発させそうなサイロスがウィルを睨み付ける。
「いいですか、ここら一帯には罠やオーガさん達が数多く配置されています、いわば砦のようなもの、そこに無謀に飛び込んでも返り討ちに合うだけです、せめて怪我を治してから挑みましょう」
「……そうだったのか、どおりでおかしいと思ったんだ……タイマンなら負けはしないのに……悔しいがあんたに従う」
ガーダンを睨み付け歯軋りをするサイロス。
「おいおい、俺達は倒れてる奴や弱ってる奴を痛め付けるのが好きなんだ、逃がすと思うのか?」
意地の悪い笑みを浮かべ余裕を見せるガーダン。
「……籠城を止めて、出てくるというのでしたらどうぞご自由に、一気に城が陥落しますよ?」
「あぁ? どういう意味だ?」
「わからないのでしたら、実践して学んでみてはいかがですか?」
「けっ、てめぇ本当に腹立つな、どうなるか教えてくれよ!」
右手を上げて合図を送るガーダン。
「……困った方ですね……サイロスさん、カシーラさんを少しお願いします」
「お、おう」
カシーラを、状況の飲み込めてないサイロスに預け、ウィルは腰に下げているメイスを手にした。
「よいしょっ!」
そのまま、自分の近くにある建物に向かってメイスを下から上へ思いっきり振り上げた。
瞬間、物凄い衝撃波を起こし建物を一撃で吹き飛ばした。
「あっ……つい勢いで建物を壊してしまいました……今度ここの住人に謝らないと……」
その場の全員が驚きの表情で固まるなか、ウィルは困った表情をした。
「おい!? いきなりなにやってんだよ!?」
「ああ、サイロスさんは気付いてなかったんですね……この建物の屋根と裏側にオーガさん達が潜んでたんですよ、で、僕達を強襲しようとしてたもので……」
「マジか!? 全然気付かなかった!?」
「屋根の方くらいは気付いて欲しいですね、それ以上に高いんですから貴方は……それより歩けますか?」
若干呆れたようにため息をつくウィル。
「大丈夫だ」「なら、行きましょう、あっ、カシーラさんをこちらに、怪我をされてる方に、運ばすわけにはいきませんから」
サイロスからカシーラを受け取り歩き出すウィル。
「おい、待ってくれ、あんたの名前聞いてなかったんだが、教えてくれ」
足を引きずりながらウィルを追いかけるサイロス。
「……ウィルです」
「ウィル? どこかで聞いたことがあるな?」
「気のせいじゃないですか、よくある名前ですし」
正体をばらすなとカシーラ、ミノに言われているので、歯切れの悪い返答になってしまうウィル。
「そうか……しかし、さっきの技凄いな、その体で親父と殴り合ったなんて信じられなかったんだが、アレを見てなんとなく納得だ、だがウィル、あんたならあいつらに勝てたんじゃないか?」
「まあ、あの程度なら建物の損害を気にしなければ問題ないかと……ですが先に戦っていたのはサイロスさんですし、やられたままでは嫌でしょ?」
「もちろんだ、タイマンなら負けない、しかし、俺の再戦のためとは、その男気に感謝する」
「いえ、感謝されるほどではありませんが、ミノさんがいなくなってしまったんですよ、どこか休める所はないですかね?」
歩き出したはいいが、宛がなく途方に暮れるウィル。
「それなら、街外れに使われていない蔵がある、そこならどうだ?」
「他の案はないのでそこに行きましょう」
「なら案内する、こっちだついてこい」
「……ちっ、なんなんだあいつは……」
ウィル達の姿が遠退いて行くのを歯軋りしながら見送るガーダン。
「知りたいかしら?」
「っ、てめぇは、確かミノリスキーだったか?」
自分の背後に現れたミノを睨み付けるガーダン。
「あら、覚えていてくれたのね、マークスだったかしら? 名前変えたのね?」
「うるせぇ……」
「しかも、実力者を名乗ってるけど? どういうことかしら?」
「うるせぇ……」
「今日の天気は?」
「うるせぇっていってんだろ!!」
捲し立てるミノに遮るように大声で叫ぶガーダン。
「あら短気……まあ、正直その辺はどうでもいいのよね、聞きたいのは、誰にそそのかされたのかってこと?」
「…………俺様の計画だ……」
「嘘が下手ね、その間は何かありますっていってるのと一緒よ?」
「黙れ、昔の俺様とは違う、てめぇだって倒せるんだ、早く情報だけ置いて失せろ!」
「……アタシは弱いから、もとから倒せたと思うわ、でも誰かの魔法で強化されてるだけじゃ本物には通用しない、わかったんじゃないかしら?」
「けっ、これが限界だと思ったら大間違いだぜ、あいつはぶっ潰す! いい加減何者かいえ!」
痺れを切らし威嚇するガーダン。
「……彼は勇者よ……」
「勇者だと……おもしれぇ、あいつを倒せば俺様が最強ってわけか……」
「まあ、頑張るといいわ、あと、そこの陰でこそこそ聞き耳をたてている貴方も、主に伝えるといいわ、勇者が戻ってきたとね」
「なんだと!? 誰だ、出てきやがれ!」
ミノが視線を向ける陰に歩き出し怒鳴るガーダン。
「流石だねぇ、ミノリスキー……しかし、解せないねぇ、お前さんは何が目的だい?」
陰から1頭のコウモリが現れると、黒いマント姿の青白肌をした人間のような外見の男に変身した。
「なっ!? ドラックロワ、様……生きて……」
現れた者に驚くガーダン。
「あら……ごめんなさい、トップ自ら来てると思わなくて、主に伝えなさいとかいっちゃって……」
「質問の答えになっていないねぇ、誤魔化しているのかい?」
「素直に謝っただけじゃない……そうねぇ、アタシの目的……混沌とした楽しい戦いかしら?」
満面の笑みを浮かべるミノ。
「……なるほどねぇ……なら楽しむがよい、ほとんどの者が4年前の雪辱に燃えとる、今の情報はすぐに魔界全土に広めよう、勇者を中心に魔界全土がお祭り騒ぎとなるだろう」
「それは楽しそうだわ」
「おい、待ちやがれ、俺様抜きで話してるんじゃねぇ! そもそもドラックロワ様……いや、ドラックロワ、あんた、なんで生きてやがるんだ、勇者にやられたんだろうが」
話についていけないガーダンが苛立ったように2人の会話に乱入する。
「……ガーダンといったか? 私を含め、多くの実力者が勇者に敗れたのは事実だ、だが、何を血迷ったか、あやつは誰も殺めておらん、身を退いた者もおるが、半数以上は己を見つめ直すため姿を消した、それが帰ってくるという話だ、お前さんごときがあまり調子に乗りすぎない方がよいぞ?」
刺すような冷たい視線でガーダンを見据えるドラックロワ。
「きゃぁ〜怖い、怖いからアタシは退散させてもらうわ、じゃぁね」
現れた時同様、忽然とその場からいなくなるミノ。
「まったくもって勝手な奴だ……」
それを確認すると、ため息をつきドラックロワもコウモリの姿となり飛び立つ。
「……どいつもこいつもふざけやがって……見てろよ……」
残されたガーダンが虚空を見つめ手を強く握り締めた。




