プロローグ?
誤字、脱字がありましたら申し訳ありません。
楽しくをモットウにしていますが、不愉快な表現などがありましたら大変申し訳ありません。
世界は魔王の驚異に脅かされていた。
誰もが明日に不安を抱き、嘆き暮らしていた……。
しかし、1人の人物が魔王討伐に成功。
その人物は人々に勇者と呼ばれた……。
それから4年の歳月が経ち、人々は魔王からの傷跡が癒え始めると同時にその事を忘れ始めていた……。
そしてなぜか勇者は牢屋の中にいた……。
「あの、すみませんが出してもらえませんか? 僕は何もやってません、冤罪です」
「皆そう言うんだ、いいから静かにしてろ」
「いえ、本当なんです、確かに僕はお腹が空いていました、だからってパンを盗んだりしません」
「うるさい、黙ってろ」
到底、勇者と思えない会話のやり取りだが、牢屋の中にいたのはお腹を空かせてやつれてはいたが4年前、魔王を倒し勇者と呼ばれたウィールス・モルドその人だった。
「情けない姿だね、これが魔界をたった1人で壊滅させた勇者なんて、嘆き悲しいよ」
不意に聞こえた女の声にウィルは顔を上げる。
先ほどまで立っていた看守は地面に倒れ寝息をたてている。代わりに黒いマント姿の幼女がウィルを見下ろしていた。
「魔者!? いや違いますね……何者ですか?」
「へぇ……やっぱりわかっちゃうんだ、腐っても勇者て事だね、そう警戒しないでよ、僕は君に倒された魔王の娘、カシーラ……と言っても半分は人間だけどね」
いたずらな笑みを見せるカシーラに、先ほどまでと違う鋭い目付きで彼女を観察するウィル。
「……わざわざこんなところまで来て話しかけてくるとは、報復というわけではありませんね、用件はなんですか?」
「なるほど頭も悪くないね……ここじゃなんだからさ……奢ってあげるから食事しながらどう?」
「見ての通り、捕まっている身なので遠慮します」
「出してあげるよ」
「脱獄したら、自ら罪を認めたことになりますので、結構です」
「あは、心配しないで、正攻法でいくから、じゃ、しばらく待ってて」
カシーラは笑顔を見せその場を去っていく。
彼女の言う通り、しばらくするとウィルは冤罪だったと釈放された。
「やっほ、食事行くよね?」
釈放されたウィルをカシーラは手を振って出迎えた。
「ありがとうございます、貴女が僕の無実を説明してくれたと聞きました、お礼にはなりませんがお話は聞きます」
ウィルは頭を深々と下げた。
「かたいことは抜きにして行くよ」
ウィルの手を掴むと、カシーラは引っ張るように歩き出した。
食事処に移動するとカシーラが料理を適当に頼み、テーブルの上から良い香りが漂ってくる。
「さあ、食べて」
「お話の方を先にお願いします」
「じゃ、食べながら話そっか?」
カシーラは手際よく料理を皿に取り分け、ウィルの前に並べていく。
「……負けました、頂戴します」
「遠慮しないで、バンバン食べちゃってよ」
「ああ……何日ぶりだろうか美味しい……」
ウィルは料理を口に運び感激の涙を流した。
「なんで勇者のくせに、そんなに苦労してるのさ?」
「勇者に厳しい世の中なんです」
どこか寂しげに笑うウィル。
「なにそれ……」
「それより、お話というのを聞かせて下さい?」
「……向こうの世界の今について、君はどれくらい知ってる?」
先ほどまでと違い、真面目な表情になるカシーラ。
「……申し訳ありませんが全く知りません」
「だよね……実は非常に大変な事になっているらしいんだよ」
「らしい?」
「誰かさんがこっちとあっちを繋ぐ門を封じちゃったから、実際の状況はわからないんだ」
「……申し訳ありません」
門を封じた張本人はウィルだ。困っているカシーラを目の前にウィルは謝るほかなかった。
「別に君を責めているわけじゃないよ……話を戻すけど、今向こうは統率者がいなくなり勢力抗争や暴徒が大暴れしていて治安が最悪な状態となっているんだ」
「治安? 申し訳ありませんが、それは僕がいった時から最悪でしたよ?」
ウィルは驚き首を振った。
「それは君が敵だからそう感じたんだよ、あれはあれで治安はよかった方だよ?」
「そうなんですか……実感がわきませんが……」
魔界の事を思いだし頭をひねるウィル。
「まあ、君がどう思おうとどうでもいいんだけど、向こうに僕の友達がいるから様子を見に行きたいんだ、僕が通る間だけ門の封印を解いて欲しいんだけど、お願い!」
小細工は効かないだろうから、カシーラは素直に頭を下げた。
「……友のため……実に感動しました、封印を解きましょう」
涙を流しながらウィルは感動に震えていた。
「なんかよくわかんないけど……お願いするよ」
若干ウィルにひきぎみでカシーラは安堵の息をついたが、すぐに気持ちを引き締める。
まだ第一段階をクリアしただけで、実際はここからが一番大変なのだ。
何せ魔界に行き、状況を確認しだい友のもとに行かなければならない、下手したら戦闘も避けられないだろう。
「それでは、この料理を片付けて早速行きましょう」
そう言って目の前の料理を凄い勢いで胃袋の中に押し込んでいくウィル。
「そ、そうだね」
ウィルの勢いに押される形でカシーラも料理を急いで食べ始めた。
事が決まればウィルの行動は早かった。
食事を終え門へと移動、すぐさま封印を解き、2人は魔界に来ていた。
「って、なんで君まで来てるのさ!?」
隣で平然とたたずむウィルにカシーラは思わず突っ込みを入れる。
「えっ? 今さらそこ突っ込むんですか? 門も一緒にくぐったじゃないですか」
空腹が癒え、今度は睡魔に襲われているウィルは気だるそうに答えた。
「物語の都合で話が食事から一気に飛んじゃったから、今突っ込むしかないでしょ!」
ウィルが眠らないようにカシーラは足を思いっきり踏んづけた。
改めて並んで立つと、ウィルの胸の辺りまでしかカシーラの身長はなく、頭や顔をひっぱたこうにもジャンプしなければならないので、カシーラは仕方なく足を踏む、蹴るの攻撃で言葉以上の感情を表現した。
「物語上の都合ではしょうがないですね……では、なんで僕まで魔界にいるかというと、魔界がこんな状態になったのは僕のせいでもあるわけですし、ご飯のお礼もありますし、お手伝いしようかと思いましてここにいます」
「そう、ありがとう……」
浮かない表情で空返事をするカシーラ。
心の中では……冗談じゃないよ、こんな奴と一緒に行動なんかしたら、どんな目にあうかわかったもんじゃない、上手い具合別行動を……。
「では、行きましょう」
「えっ? ちょっとどこいくの?」
自身が思っていた方向とは逆に歩き出すウィルに、困惑を隠せないカシーラ。
「色々と準備が必要でしょう? 良いところがあります、ついてきてください」「いや、それなら別行動で……」
「さあ、早く行きますよ」
カシーラの声はウィルには届かず、逆にもたもたする手を引っ張られ、強引に連れていかれてしまった。
連行されて少し歩くと、ウィルが何もない空間を無理矢理こじ開けた。
結界が張られていたらしく、何もない空間に突然ボロボロの今にも倒壊しそうな屋敷が姿を表した。
隣で驚くカシーラの反応などお構いなしに、ウィルはさっさと屋敷の扉まで行きノックした。
「……誰もいないんじゃない? 廃墟みたいだし……」
警戒しながら近付いてきたカシーラが屋敷の様子を伺う。
「廃墟じゃないわよ! 誰!? 心地よい睡眠の邪魔する輩は、お肌に良くないんだから覚悟しなさい!」
急に扉が開くと、筋肉隆々の牛頭の巨漢がドスの効いた野太い声をあげた。
「うるさっ!」
驚いて後ずさった事を誤魔化すようにカシーラが耳を塞ぐ。
「ああん、しつけのなってない小娘が、何の用よ!」
「こ、小娘……そう言う君こそ不躾じゃないのさ、筋肉ダルマ」
威圧する牛頭に対し一歩退かず睨み返すカシーラ。
「き、筋肉ダルマ……上等じゃないの、しつけし直してあげるから、かかってこんかい!」
何処からか巨大な斧を取り出し振り回す牛頭。
「死んでも知らないよ?」
それに応じて、同じく何処からか鎌を取り出し振り回すカシーラ。
2人の武器が交差する瞬間動きが止まった……。
どんなに力を入れても微動だにしないので武器の先に視線を向ける2人。
「お2人共、その辺にして下さい、怪我しますよ?」
両方の武器を、両手で片方づつ押さえたウィルが笑顔を浮かべた。
「ぎゃー!? 勇者……様? ご、ごめんなさい、ちょっと寝惚けちゃって、てへ」
背筋に冷たい汗が流れ、牛頭は武器を放り投げウィルにウインクした。
「うぇ、キモッ」
それを目の当たりにしたカシーラが顔を歪める。
「ああん、あんだって小娘!」
表情を歪めるカシーラを睨み付ける牛頭。
「はい、そこまでにして下さい、話がすすみませんから……ミノさん、お久し振りです」
「あら、お久し振りです勇者様……というかどうしたんですか?」
巨体を屈め、さきほどの威勢は何処へやら借りてきた猫のようにウィルに対しては低姿勢になるミノ。
「ちょっと、僕への態度とえらく違うんですけど?」
「死にたくなければ、お黙りなさい小娘」
「やれるもんなら、やってみれば?」
挑発するように鎌をもてあそぶカシーラ。
「うるさいわね、アタシにじゃなく勇者様に殺されるわよ、静かになさい」
「そんな事滅多にしませんよ……それより、ミノさんに協力して欲しくて来ました」
ミノは心の中で叫んだ!
貴方の滅多にはどのくらいよ!
前回、滅多にな事が頻繁にあったじゃないの!
協力なんて勘弁して欲しいに決まってんでしょ!
「なにかしら? 協力出来る事ならいくらでもしますわ」
心で泣いて、見事な笑顔を浮かべるミノ。
「ありがとうございます、ではまず、武器と防具を貸してもらえませんか?」
「もう任せてちょうだい、完璧なコーディネートしちゃいますから」
「武器は自分で選ぶので後はお願いします」
「そういえば君、武具持ってなかったよね? 対魔者用、聖なる武具みたいなのないの?」
2人で話を進めるなか、蚊帳の外だったカシーラが参加してくる。
「お恥ずかしい話ですが、武具はお金に困り売りました、といっても聖なる武具とかではありませんでしたがね」
「勇者のくせに本当にどんな生活してたのよ……」
呆れ顔でため息をつくカシーラ。
「さあ、移動しますわ、ついてらっして」
ミノに促され武具庫に移動したウィルを着せ替え人形の用に、カシーラとミノが各々の思うコーディネートでファッションショーが開始された。
が、割愛。
魔界王子風、闇の騎士風、舞踏会風などなどお互いにダメ出しをしつつ、半日ほど経ってシンプルな鎧に黒いマントを頭から被り正体を隠すようなものに落ち着いた。
正体を隠す、これだけは唯一2人の意見が重なった点である。
それに、自身で選んだ打撃武器メイスを腰に下げた。
「では、改めて行きましょう」
「ちょっと待って下さい、何処へ行くのですか?」
状況が飲み込めないミノが困惑する。
「失礼しました、説明していませんでしたね……えぇと……」
頭を下げると、ウィルは困った表情を浮かべカシーラに視線を向けた。
「……バックスの街に向かうんだよ」
「だそうです」
「ちょっとちょっと正気!? あの街は今危険なの、かなりの実力者だと噂のサイロスとガーダンが街の覇権を争ってるのよ! そんなところへ行ったらどうなるか!?」
悲鳴に似た叫び声を上げてミノが首を横に振る。
「ミノさん、その街にはカシーラさんの友人がいて、カシーラさんはその身を呈して助けに行くと言うんです、それを放っておけというんですか? いや、そんなはずありませんよね、ミノさんはそんな方ではありません」
ウィルが熱弁する傍らで、身は呈さないとカシーラは必死に首を横に振っている。
「そもそもカシーラって誰よ?」
首を振るカシーラに気が付いていたが、あえて無視するミノ。
「あっ、そういえば紹介がまだでしたね、では、改めまして、こちらが今話した魔王の娘さんでカシーラさん……で、こちらが元魔界四天王でミノタウロスのミノさん、正式にはミノリスキー・ウッツ・ペイン・アガッツさん」
「ウソッ!? この小娘魔王の娘なの?」
「四天王? それより君、さっきから口調戻ってるよ?」
先ほどのように険悪な雰囲気で睨み合う2人。
「あら、ごめんなさい勇者様、取り乱しちゃいました、てへ」
「いえ、気にしないで下さい、普通で構いませんよ、あと今回は勇者として来ていないので、勇者でなくウィルと呼んで下さい」
「まあ、なんて心が広いのかしら、わかったわ、これからはウィルさんと呼ぶわね」
「うざっ、しかもウィルでいいっていってるのに、さん付けじゃん」
体をくねらせ感激を表現するミノを一刀両断しさらに追い討ちをかけるカシーラ。
「うるさいわね、いい、宴会の席の無礼講と同じで、調子に乗って社長に社長ちゃん飲んでる? とかやったら左遷になるのよ! わかった!」
ゴブシを握り締め熱弁するミノ。
「……う、うん、なんかごめん……でも妙にリアルだね?」
あまりのミノの勢いに思わず謝ってしまうカシーラ。
「ミノさんは魔王にこれをやって、四天王の座から地方管理の職に降格させられたトラウマがあるんですよ、触れないであげて下さい」
「思いっきり君が触れてるけどね……」
ウィルの説明にへこんだ様子を見せるミノ。
「……ミノさん、やってしまった事を悔やんでもしょうがありません、それを乗り越え次に行きましょう」
「そうよね、生きていれば良いこともあるわ」
「そうです、だから一緒にバックスに行きましょう」
「ええ、それがいいわね、新たな発見を……えっ?」
ウィルにのせられるまま、立ち直ろうとしていたミノが固まった。
「どうかしました?」
「あの、ウィルさん、今なんていったのかしら?」
「バックスに行きましょうと?」
「あれ? アタシ返事しちゃった?」
困惑するミノは助けを求めるようにカシーラに視線を向ける、が残念そうに首を横に振った。
「だいぶ時間も経ってしまいましたし、急いで出発しましょう」
意気揚々と歩き出すウィルに呆然とするミノの肩に手を置いて、同情したように頷いてから歩き出すカシーラ。
「もう! 最初からどう足掻いてもこうなる気はしてたのよ!」
最後の抵抗と叫び声を上げてから走り出すミノ。
こうして、元勇者ウィールス・モルドは仲間を引き連れ、魔界の治安維持のために新たな冒険がはじまった。




