番外編 田舎ライフ3
完結済みにしてしまうと更新ができなくなるようで「次話投稿がない!?」と焦りました(バカ)。一度完結済みから連載中に変えたら更新できましたが、調べてみましたところそういうシステムになっているようですので、今回の番外編3話にて本当に完結ということで更新はお終いになりまっすん!
目にも留まらぬ速さでヒートが駆け回ると、全ての蔓が切断されて私は落下した。
地面にではない、夫の腕の中にだ。
「よお、馬鹿女。クソ馬鹿クソ芋。今夜は今までにねえほど、イチバンひでぇ目に遭わせてやるからそのつもりでいやがれ」
「……素敵」
思わず本心を吐露した私を見て、ヒートがにやりとする。
「奴隷みてえにブチ壊してやるよ、お望み通りな。俺はわかったぜ」
私を抱くと同時に剣を捨てていたヒートは、蹴りだけで魔物をブチ抜いて走る。新たに伸ばされた蔓も、ヒートが蹴ると千切れ飛んだ。
「ああ、ああ――気持ちいい――イきそうだ!! 相手はこんなゴミみてえな雑魚どもだってのによ、一年以上も我慢してっと気持ち良過ぎるッ!! 頭がおかしくなりそうだぜ!!」
全部の蔓を千切られ、球根のような身体を端から端まで寸刻みに踏み潰された魔物から紫色の体液が噴水のごとく飛び散る。
恍惚の表情でそれを眺めたヒートが歓喜して身を震わせる。
「実は、男の子も欲しいと思っていたの」
片方の手をヒートの首に回してしがみ付きながら、もう片方の手で彼の頬を撫でる。紫色の返り血を擦り込むように。
「ハッ、この変態女め。俺はよ、子供が産まれて、そんで良い父親になろうと思って、ちゃんと諦めたんだ。もう暴力を楽しむこたァしねえって、一度は決めたんだ。なんでだかわかるか? てめえがそれを求めてたからだッ!!」
逃げていく魔物をとっ捕まえては踏みちぎり、とっ捕まえては潰し砕き――ヒートは獣のようにギラつく眼で私を睨む。
「今んなってようやく理解したぜ、てめえはどうしようもねえ馬鹿女だ。そんでもってド変態の、ドスケベだ。気づいたのさ! てめえのクソ生意気は全部、俺の仕返しを期待してのことだった!! てめえはホントはどうしようもねえ被虐性愛者で、いつもいつもいつもいつだって――俺からの仕返しを望んでたんだってなァ!!!」
踵でブチ割られた魔物から噴出する体液を全身に浴びて、私は震えた。
全てヒートの言う通りだった。私は彼の怒りを期待して彼を貶したし、彼の逆上を期待して些細なことをしつこいくらいに注意し続けた。とはいっても単純な暴力を望んでいるのではない。それはおそらくヒートもわかっているだろう。愛は欲しいのだ。
というか、愛しか望んでいない。
「なァ? 悲鳴を上げちまうくらいに激しくされてえんだろ? けどてめぇは表向きソレを嫌がっていたいんだ、その方が気持ちいいから。てめえみてえな変態、他に見たことねえぜ」
「……カリウスが聞いてるわ」
「それが気持ちいいんだろ? お前みたいな奴はよ」
「……っ……!」
「そんな震えてまで喜ぶことかよ、ったく。けどよ、気がつくの遅れちまって悪かったな――お詫びと言っちゃあなんだが、今夜は寝かせねえぜ? 俺もここ一年以上、ずうっと我慢して大人しくしてたんだからよ。てめえが泣いて謝ったってやめねえから覚悟しとけ」
魔物はとっくに全滅して。
それでも欲求を満たせずにヒートは木々を蹴っては折り続けていた。中には蹴られた衝撃で破裂して弾け飛ぶものもある。
ヒートに蹂躙され見晴らしのよくなった空間を眺め、この衝動が今夜自分に向かうのだと想像すると気持ちが昂ぶった。
彼にだけ聞こえるように、そっと囁く。
「……嬉しい」
◆◆◆
太陽が昇っても、行為は続いていた。
今日一日の子守りはカリウスに任せてある。私たちは悪い親だ。そうは思えど、一日くらいは見逃して欲しいとも思ってしまう。
またすぐに続きが始まるのだろうが、ヒートが一旦休憩に入ったのを機に話しかけた。
「私のこと、見損なった?」
「アア? 本気で言ってんのか? てめえがどんなクズだろうが、俺はてめえを愛してるさ。いつまでだっててめえは俺だけの馬鹿芋だ、ガキにだってやらねえよ」
「そこはやりなさいよ」
「さっきまで大泣きして許しを乞うてたくせに、生意気言うじゃねえか?」
「本気で嫌がってみせた方が、盛り上がるでしょう? 実際に盛り上がったじゃない」
「おかげでちょっとホントに疲れちまったが……まあ正直に言えば、ガキを前にしてつい猫撫で声になっちまうのは別にそうしようとしてたわけじゃない。なんかそうなっちまうんだ」
「そこを演技だったって言われたら、私の方こそ演技じゃなくて本気でキレたかもしれない」
「そりゃあ怖えな、ちびりそうだぜ」
彼の手を握って、囁く。
「よかったわね」
「あ?」
「私を手に入れられて」
「急に何言ってやがる?」
「だって、あなたが暴れても壊れない女なんて他にいる?」
「……いないかもな」
「そうでしょう?」
「何が言いてえんだよ、お前?」
「大事にされたいだけ」
「これ以上ねえってくらいに大事にしてきたじゃねえかよ?」
「これからもずっとよ」
「当たり前だろうが。てめえこそ俺に感謝してろ、てめえみてえな田舎の芋女、俺以外にゃ見向きもされねえよ」
「そう? さっきカリウスが、何か言っていたような気がするけど」
「てめえ……そうやって俺を挑発して、また期待してやがるな?」
「…………」
「そっぽ向いてんじゃねえよ、ホントにしょうがねえ奴だな」
苦笑してヒートは私を抱き寄せる。
全ては収まるところに収まったのかもしれない、そんな気がした。
以上、ニンニちゃんの危険な性癖が暴露される番外編でした。当作品(と呼んでいいのかはさておき)をお読みくださった方々本当にありがとうございました、長編の構想がいくつかございますので、次回は長期連載に挑戦してみます!