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雑記帳  作者: curuss


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薪の値段

 こんなに『薪の値段』について意識の差があるとは思わなかった……!

 ので、「産業革命以前の『薪の値段』を想定してみよう!」な企画。

 なるべく最低側に寄せ、単位は日当です。


※ ここでは『日当=一般庶民が一日で稼げるお金』としてます

 近世まで薪の支度は子供の仕事――というか子供でも可能で、焼け石に水であろうと成果の見込めた手伝いだったそうです。

 で――


 その子供の用意した薪は、どれだけの価値があったか?


 が、最初のアプローチになります。

 まず一年中はできません。冬には無理です。

 それに薪拾い以外の仕事もあったと思われます。従事できたとしても、年の半分が良いところでしょう。

 そしてどんなに真面目に頑張ろうと、しょせんは子供のやることです。いわば半人前なので、大雑把ですが半分に。

 さらに真面目かどうかも担保されていません。遊びたい盛りなんですから、母親に促されてようやく、それも嫌々な感じでと想像されます。

 なのでここでは、さらに半分にしてしまいましょう。

 結果――


 標準的な年収の12.5パーセントほどに相当します。


 普通の大人が一年間働いて得る対価=標準的な年収なのですから、この算出方法でも大きな間違いはないでしょう。

 ……むしろ半年かけて12.5パーセントは、子供を舐めすぎている?

 そして大人が一月半ほど専念すれば、冬を越すための薪を確保可能ということに?

 またオール電化(ガスはブレ幅が大きいため回避)で年間の電気代が平均で約19万円。世帯収入の平均が約541万円ですから……燃料費は約3パーセント。現代とは大きな開きがあるようです。


 ただ、ここで幾つかの疑問も生まれます。


・はたして子供は、一家の一冬分に足る薪を備蓄できたのか?

・ここでは子供を一人と考えているが、複数人の場合はパーセンテージを上げるべき?

・子供のいない家庭は?


 目安程度には使えるも、子供の性格で幅が生まれ、人数でも左右され……いまいち一般化には向いてない?

 しかし、子供だけでは準備できなかったとしても、手伝わせる価値はあります。どうやら薪の値段は高くなりそうですし。



 ここで別のアプローチ――立ち木を伐採し、それを薪にする手間から逆算してみましょう。

 伐採する木は、直径20センチで高さ3.75メートルの円柱として考えてみます。


 え? そんな木はない?

 別に底面積が30センチで上端が直径10センチの高さ3.75メートルや、底面積が直径40センチで頂点は点な高さ7.5メートルなど……体積が同じなら読み替えても問題ありません。

 ここでは計算しやすくするために、単純化しているだけです。

 また想定より太かったり、曲がりくねっていたりも……手間が増える分だけ最終的な薪の値段が高くなるので、ここでは割愛します。

 これらが気になる場合、最終結果を割り増しで対応してください。


 まず、これを樵に伐ってもらい、自宅の裏まで運んでもらいましょう!

 本当は持ち主――一般的には領主や地主へ代金を払わねばなりませんが、ここでは割愛! 誰のものでもない森とします。

 伐って枝を払って運ぶのに半日とし、樵は一日に二本ほど原木を小売りできるとすれば……原木一本の値段は0.5日当です。


 え? 樵が小売りはしないだろう?

 ですが、ここで材木商など挟むと、その分だけ値段も高くなってしまいます。


 そもそも樵は――林業はそういう仕事じゃない?

 もちろん、そうだと思います。

 木を伐って運ぶのなんて商売の一部分でしかなく、植林や日常的な枝払いなども重要ですし、運搬にだって荷馬車などを使うでしょう(馬車の経費も掛かりますが)

 そして職業費も――斧などの減価償却や消耗品の代金も計上するべきですが……ここでは最も安いパターンを。

 これなら一家の父親が斧を片手に近くの林へ行ったのと変わりませんし、この大きさなら一人で担いで戻れるでしょう。

(といっても一般的には、立っている木は領主の持ち物。村人は倒木や枝払いしたものを、管理の手間賃代わりで貰えるだけですけれど……今回は割愛!)


 とにかく原木が家の裏へ届いたので、それを37.5センチ程度の長さでカットします。

 つまり、想定の円柱であれば9回です。


 直径20センチの原木をノコギリで……と聞いてうんざりできた方は、日曜大工などの経験がおありでしょう。

 ハッキリいって、一回切るだけでも重労働です!

 しかも時代によっては青銅製のノコギリ! 鉄製が買える時代でも、現代のものと比べれば鈍ら! 最悪、石斧の場合すら!?

(というかノコギリや斧も、村人レベルでは高価な道具だったりします)


 そしてカットできたからといって、終わりではありません。

 直径20センチなら、それを10本程度に割る必要があります。

 つまりは7回ほど斧を振らねばなりません。

 それが10セットなので……合計70回!


 ノコギリが9回で、薪割が70回……うん、一日仕事だし重労働だね!(苦笑)


 タフガイなら木を伐るところから薪まで一日でいける?

 普通の人なら一日半から二日はかかるでしょう。


 しかし、それで薪は何本できるかというと、120本しかありません。束にして12束!

 ようするに薪一束の値段は、安くても約0.1日当前後!(細かくは0.08から0.16)

 以前、冬を越すのに甘く見積もって270束としましたが……それは27日当になります!

 それして年間に必要な量を630束としましたが……63日当は、ほぼほぼ年収の六分の一となります。休みも考えると、五分の一の可能性すら?


 これなら農村から薪を担いで街へ売りに行くというのも、普通に有り得る話でしょう。

 限度一杯まで背負えば十束ぐらい背負えそうですし、それで1日当分の現金を得られます。

 一日を無駄(売りに行く日は無報酬なため)にしても、ギリギリ納得できる範囲です。現金を確保する手段に乏しかったわけですし。

(そういえば薪を担ぐ姿が有名な二宮金治郎ですが、今回調べたら薪売り&草鞋作りで一家四人の家計を支えたとありました。……思っているより薪売りは儲かる!? まあ、農地からの収入もあったようなので、捗る内職レベルかな?)


 そして秀吉の薪奉行の話も、解りやすくなるかも?

 秀吉が抜擢される前から節約令は出ていたようですが、「薪や炭は節約させるべき」と信長が思う程度には高かった訳です。

(これは『前職がリベートを取っていた説』もあるので、鵜呑みは危険? どのみち偉人の説話は眉唾がベターかも)



 でも、今回の結論は……領主や商人の取り分なしなんですよね。

 中間搾取されると一回につき最悪で倍。つまりは四倍ぐらいになる可能性も!?

(が、その分だけ農民の小売りは割安感がでて引っ張りだこに?)


 それにリサイクル燃料――建材を作る時に出た端切れや、不要な木製品――などもありますし、安くなる方向のネタも残っている?(やや期待薄)


 そして子供に薪を拾わせるのも納得です。

 仮に小枝ばかりになろうと、それでも薪一束分あれば0.1日当分の価値があります。

 子供が遊びに行ったついでに、棒切れ一本を持って帰ってきてくれれば儲けものでしょう。

 ……まあ、おそらく父親も何日かは薪の手配に従事したと思われます。子供だけで――少なくとも子供一人で間に合う必要量とは思えません。


 さらに薪泥棒に鉄拳制裁なのも当然ですし、冬の厳しさによっては凍死者がでてしまうのにも納得です。

 なぜなら働き手を喪った家や、老婆の一人暮らしなど……とうてい燃料を確保できそうもないシチュエーションは容易く想像できます。

 安価な燃料なのに確保できないほどの貧民ではなく……何かで少しだけ不運だった、ありふれた貧乏程度で、さらに不運が重なると凍死だったんでしょう。

 ……兵役で父ちゃん返ってこなくて、母ちゃんが絶望というのも当然? 家族愛より先に、生存のピンチですし?



 あと、おそらく誤解されそうなので前もって。

 世帯収入と個人収入を混同しないでください。

 今作で年収といったら、成人一人分の稼ぎです。

 しかし、夫婦+子供二人の場合、世帯で年収2.5人分ともいえます(夫婦が二人分、子供が一人0.25として)

 なので子供の労働力を成人年収の12.5パーセントと見積もっても、父親は残る87.5パーセントしか稼がないのではありません。

・個人的感想


 一束0.1日当なら、思ったよりも安くできた?

 でも、四倍が正しいとすると一束0.4日当。つまりは年収の三分の二が燃料費!

 それって、どこの北国!? 一人で暮らしている人間は、軒並み死亡確定です!

(だから現代まで、独り暮らしは成立しなかったという考え方も?)

 なので多くの要素を切り捨てたものの、これ以上高くするのは変……かも? まあ、計算上は高くないとおかしいのですが。

 何か見落としている……一日で作れる量の見積もりが実は甘く、実際には倍ぐらいな可能性も?

 それでも半分の四倍は0.2日当で、まだまだ厳しい値段。

 しかし、それが真の適正値? それとも、まだ安くできる要素がある?


 そして六分の一で考えると年収の16パーセントとなりますけれど――

 3パーでオール家電の現代に迫る勢い。……それは無理でしょう。

 10パーでようやく戦前レベル。これはギリギリいける? 技術的に厳しい?

 となると16パーという数字も、それほど奇妙には思えません。

 少なくとも「タダ同然」や「非常に安価」は、絶対に有り得ないでしょう。

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