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『未完成の英雄』と『未詳の青年』  作者: むぎ茶
序章 二人の始まり
1/11

第1話『英雄』の死

こんにちは〜むぎ茶です。

今作品は、投稿中の『神にでもなってやる!!』を執筆中に面白そうな設定を思いついたので書いてみたものとなります!気軽に読んでもらったら幸いです。



「──ここは……」


俺の朧げな視界が段々と開いていく。


見上げる空には、雲の隙間も、光の強弱もなかった。

ただ一面、無機質な灰色が地平線の端まで塗り固められている。


そして目線を下すと、全身血塗れの橙髪の美女が地面に横たわっていた。

原形を留めない服、幾条もの服の裂け目から覗く肌には、泥と血が混じっている。


今にも生き絶えようとする女性の左手が、俺の右手を力なく握る。


「あの子を…妹を、導い、てあげて……」


その言葉を最期に、俺の右手を握る彼女の手の握力がなくなった。


握りしめられていた右手が、不自然なほど急激に熱を失っていく。指先から這い上がる死の冷たさが、俺の肌を粟立たせた。


俺はその瞬間理解した。

目の前の彼女は死んだのだと。


「どう…ゆうことだ…」


目の前の情景に頭の整理が追いつけない。

彼女は誰だ?ここはどこだ?なぜこの状況になっている?


何も理解できなかった。


「──ちゃん、お姉ちゃん!!!!」


呆然とする俺の元へ、死んだ女性に似た面影を持つ橙髪の少女が叫びながら駆け寄ってきた。彼女は俺をはね退け、女性の遺体を抱き締める。


「なんで、なんで…??魔王は倒したって言ってたじゃん…。なんでこんなことに…?誰が、誰が、こんなことをした──」


絶叫のなか、彼女の瞳が俺を射抜いた。

憎しみと怒りが混濁した目が、涙を濡らして俺を睨みつける。


「アンタが…アンタがお姉ちゃんを殺したんでしょ!!」


少女は腰に掛けてあった白銀の剣を構える。


「は、ちょ、ちょっと待てって!カノン…って、え?」


「なんで、私の名前を知ってるの…アンタ、誰」


彼女の視線が数倍鋭くなり、俺への警戒心が高まるのを察した。


俺の口から出た単語『カノン』、それはこの少女の名前だ。

ただ、俺はこの子を知らない、見たことも聞いたことも、記憶になんてない。


でも、なぜか俺は、ハッキリとこの子の名前を発していた。


「なん、でって…、俺はただの──」


「…ただの?」


「──俺は…誰だ…??」


俺は自身に問いかける。


『俺は誰なんだ?』


思い出せない。


『俺の名前は?何処からきた?』


思い出せない。


『俺は今まで何をしていた?』


思い出せない。


自身の問いに、答えは返ってこない。

俺の中には、何もなかった。


「誰って、とぼけても無駄っ!!絶対にアンタが殺したっ!アンタは世界の『英雄』に、私の姉に、なんて酷いことをっ!!」


少女の握る剣に真紅の炎が燃えさかり、少女の左目が紅色に染まる。

圧倒的な熱量、空気が急激に膨張し周囲に熱波が吹き荒れる。

真紅の炎が周囲の酸素を食い荒らし、肺の奥が焼けるような錯覚を覚える。

爆ぜる火の粉が頬をかすめるたび、死の香りが鼻を突いた。


「あっつ!?マジで待ってくれ!俺も何が何だか訳が分からないんだ!なんでこんな場所にいるのかも…」


「うるさいっ!!そんな虚言通じるとでも…?悪魔らしいやり口ね──」


少女の紅の剣が俺に向かって斬り下ろされる。


「まって…!!」


自分の死を確信した、そのときだった。


キンッッッッ!!


「――そこまでだ、カノン。剣を引け」


金属同士が噛み合う耳障りな音が響き、視界を埋めていた真紅の炎が、彼女の一振りで強引に切り裂かれた。


「どいて!!トライアさん!この悪魔を倒さないと…いけないの」


俺の前に立つのは、金色の長髪をなびかせる騎士風の女性。


「おまえが取り乱すのは分かる、だが冷静になって状況を把握しろ、いつもいってるだろ。今、この場面にいたのはこの彼、この彼を殺してしまったら何もかも手がかりがなくなる」


「っ!…でも…」


「でもではない。辛いのは重々分かるが、ヤケになって真犯人を逃してしまったら本末転倒だ」


「っ…なんで…」


少女は、悔しい表情を浮かべ地面に膝から崩れ落ちる。

そして、金髪の女性が俺へ振り返る。


「……青年、君も混乱しているようだが、話を聞きたい。すまないが連行させてもらう」


「は…はい」


俺は彼女の手を借り立ち上がろうとした、その瞬間。


「っ?!あ゛ああ゛ぁぁ…」


突然、脳内に凄まじいノイズが走り抜けた。

頭が引きちぎられるような激痛に襲われ、俺は頭を抱え倒れ込む。


痛い痛い痛い痛い…!なんだこの痛みは…?

膨大な『何か』が無理やり頭に注ぎこまれていく。


「大丈…か、青年……、……い」


脳が焼き切れる感覚に襲われ、視界が白黒して意識を保てない。

金髪の女性が叫ぶ声もだんだんと遠くなっていく─────。


『──システム、インストール終了。『英雄の(みちびき)』、待機状態スタンバイ


未知の情報の奔流。

その濁流の底で、無機質な声だけが、俺のコアへと突き刺さった。


「い、ま…何か──」


そして、俺の意識は完全に闇の中へ沈んでいったのだった。


謎だらけの主人公、彼は一体誰なのか?


次回第二話『尋問の行方』です!お楽しみに〜

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― 新着の感想 ―
記憶喪失の主人公、目の前の死体、そして濡れ衣を着せられるという絶望的な状況。緊迫感が伝わってきます。
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