14.珍獣と結末のお話
「グルゥ……、グゥガアァァァアア!!!!」
何とか【タウント】のおかわりが間に合って、しっかりわたしにターゲットを固定した白熊さんが再度の咆哮です。結構ガツンとした衝撃が伝わってきて、普通の咆哮かな、って思ってたんだけど、今回はどうやら魔法の攻撃も一緒みたいです。冷気が吹き付けてきた後に、氷の塊が4つほど、槍に形を変えて襲ってきます。……白熊さんまでおかわりしなくていいのに……。
片手剣と重盾にチェンジしてたけども、そもそも2本ガードしただけで4割以上HPバーが削れるってことは、全部ガードするとデッドエンドがほぼ確定、だよね。微妙に時間差が付いて4連なのはありがたいのか事故なのか……。
とはいっても最低でも2本以上は避ける必要があるわけで。まずはひらりと横に飛んで1本目を回避。次に迫る2本目を体を捻って躱し、そのまま1回転して重盾を叩きつけて3本目。そのままさらにもう1回転して4本目も重盾で。
……うん、ちょっと調子に乗りました。結果的に4本捌けたけど、当然のごとく真正面からぶち当てたので、ガード判定になっててHPバーがごっそりと削れちゃってる……。ざっくりと6割~7割ぐらいの欠損です。一歩間違えてたらアウトだったよ……。すかさずショコラが【キュア】で回復してくれて、一安心。
とりあえず気持ちと装備を切り替えて、白熊さんのほうに駆けだすと、向こうも同じように4足になって突っ込んで。白熊さんはそのまま飛びかかってくるのかと思いきや、接触する直前で右腕を振り上げて勢いを利用しての薙ぎ払いが。
慌てて急停止してバックステップで避けると、今度は振り切った右腕で裏拳が。これもそのまま連続してバックステップで避ける……ってちょとまってちょとまって、白熊さん!振りぬいた腕の後を白っぽい軌跡があったり、きらきらしてたりするのはまだいいんだ。でも!なんでその後氷の弾が飛んでくるんですか!
「ちょぉっと!」
あわや直撃!ってところでとっさに両手剣を振ったら、ガキンという音がして氷の弾が砕けちゃって。なんとか間一髪セーフみたい。あぶないあぶない。ここにきてさらに攻撃が追加とか、まったくもう……。こうじゃないと面白くないよね!
さておき、白熊さんも悠長にしてるわけもなく。
「グルゥア!!」
軽い咆哮で冷気が吹き付けてくるんだけど、今回はここにも氷の弾が混じってます。直撃コースを見極めて、武器を振って散らしたり、回避したり。何個かかすったけど、ダメージは2割弱といったところなので、もしかしたら直撃しても耐えられそうな気はするんだよね。痛そうだから絶対に嫌だけど。
なんとか裁ききったと思ったら、目の前に熊さんの体が!そのまま、ぶおんぶおんと両腕の連続ぶん回しです。後ろに下がったらまた氷の弾の追撃があるだろうから絶対アウト。逃げ場は前しかないのです。腕を振った後に白い軌跡が残ってるけどそんなこと気にしてる暇もないので、必死に腕を潜って潜って、時には横に避けて……。しつこいぐらいに追ってくる腕を避け続けて。ここっ!最後大ぶりになった腕を躱して、全力でお腹に両手剣を叩きつける!そして、そのまま脇を抜けて背中側へ。
これでちょっと一息。HPバーを見ると熊さんのほうは残り3割ほど、わたしのほうは……レッドゾーン?思い当たるのは空中に描かれた白い軌跡だよね……。全く気にせずにいたんだけど、微妙にダメージを受けるのかも。もしかしてだけど、消えるまでは設置型のトラップみたいな役目もしてるのかな?
吹き付けさせて行動阻害だけって思ってたけど、なんてめんど……厄介な能力なんでしょう。当然のごとくショコラも引っかかっちゃって、必死に回復に回ってます。
「グルゥ……」
両腕の振り回しが当たらないのに苛立ったのか、今度は少しジャンプしつつ両腕を掬い上げるようにして振り上げて、そこから体重を乗せた叩きつけを。とはいってもこれは避けやすいので、横に……。ってぶるっと気ました。嫌な予感がしたので、白熊さんのほうに飛び込むようにして転がりながら後ろに抜けます。
「グラァ!!!!」
ズガァン!とすごい音とともに、白熊さんの腕がぶつかった地面の周辺に氷の柱が出来上がってる……。あのまま、後ろとか横に避けてたら即アウトー!って感じだったね。まぁそんなのんびり言ってはいるけども、叩きつけの衝撃で氷の破片交じりの冷気が吹き付けてきて若干ダメージを受けたんだけどね……。
「グルゥ……」
パリンといって氷の柱が砕けた後、こちらを振り向いて再度ジャンプをする白熊さん。どうやらさっきと同じ叩きつけが来るみたいです。とはいってもこの攻撃は見たばっかりなので、今度はこっちの攻撃です!
「あまーい!」
白熊さんのほうに向かいつつ、お腹めがけて全力の切り上げのプレゼント。白熊さんの落下にしっかりと合わせたのでこれは中々効いたみたい。着地したはいいけど、若干体が丸くなっちゃってます。
そのまま追撃!と思ったんだけど、それは向こうもわかってるみたい。すぐに体勢を立て直して、腕を振ってくるので下がるしかなかったよ。でも、そこを白熊さんは好機と見たようで――
「グウゥ……、グルゥガ――」
しっかり溜めをとって唸り声を上げる白熊さん。氷の塊が徐々に空中に顔を出して、咆哮と同時に放とうとしてるみたい。でも、それもそう簡単には打たせられないよね。
「せいや!」
「きゅっぴっぴ!」
唸り声と氷の塊が見え始めたあたりから、わたしはすでに駆け出してて。体をねじって突進の威力と遠心力を載せた全力の横薙ぎを白熊さんのお腹へ。ショコラもおまけの【ウィンドランス】。剣と魔法のセット、お待ちです!
腕も上がり始めてたから、がら空きのお腹にクリーンヒット!結構いい衝撃で、白熊さんも効いてるみたい。さっきのダメージがまだ抜けてないみたいで、今度は完全に丸くなってます。
「それ、おかわりだよ!」
「きゅっぴっぴ!」
背中に抜けた後すぐに反転し、全力で白熊さんの膝裏に一撃を。連続して痛烈な一撃をお腹に受けたせいで、完全にそっちに意識がいってたみたい。そこに来て足への追加の一撃で、耐えきれなかったみたいで大きく体が傾いでく。
そのまま、倒れ始まった白熊さんの脇腹を狙って切り上げ、その余力を生かして飛び上がる。そして、両手剣を思いっきり振り上げて、デザートは大上段から全力の兜割りです。
「これで、どうだ!」
「きゅぴ!きゅっぴっぴ!」
白熊さんのお腹へ見事ヒットして、ズドンという結構いい音と衝撃で結構なダメージを与えた感じ。HPバーを確認してみると……、見事に全部割れたみたいです。はてさて、これで一段落かな。
「……きゅっ!きゅぴぴっ!」
「うん?どうしたの、ショコラ――」
「グルゥアァァ!!」
あちゃぁ~、油断してました……。さっきの1撃で大ダメージが入ったみたいだし、力尽きて蹲ってたように見えたからもう動くこともないと思って気を抜いてたんだけども。どうやら微妙にHPが残ってたみたいです。そんな感じで気を抜いてたところに、白熊さんが最後の力を振り絞っての威嚇の咆哮です。当然ながらガードなんてできなくて、吹き付ける氷交じりの冷気にでダメージを受けちゃって、そこにさらに咆哮によるダメージでノックバックが発生しちゃって、吹っ飛ばされちゃいます。
吹き飛ばされながらHPバーを確認すると、見事にレッドゾーンに足を突っ込んでるよ……。白熊さんのほうを見てみれば、止めとばかりに両腕を振り上げてて、今すぐにでも振り下ろしそう。
「ぎゅぴっ!きゅぴぴぴぴっ!」
「これはアウトかも、ショコラ」
「ガァァァアアア!!!!」
そのまま、咆哮とともに白熊さんはジャンプして、その両腕を振り下ろしてきます。
「これはまたいつか、戻ってきて挑戦だね」
「きゅぴぴ~……」
「ごめんね、みんな。わたしの分まで――「ズバン!」……ズバン?」
爆発するような音の後、両腕を今にも振り下ろそうとした体制のまま、飛び上がっていた白熊さんがわたしとショコラのほうに落っこちてきます。……って、潰される?!
とそんなことを思ったけど、そんなこともなく。潰される直前でポリゴン片になって溶けていったんだけど、
「もふ」
「きゅぷ」
白熊さんの代わりにドロップ品の毛皮みたいなものに覆いかぶさられました。そのままの状態で草の上にごろんとして、白熊さんの毛皮でお布団です。もう、最後の最後で思いっきり気が抜けちゃったよ……。
そんなわたしとショコラの元へ、ユリさんたち3人が向かってきます。
「ユキちゃん、無事でよかったよっ。どうどう、最後のはっ。ピンチの時に颯爽と助けに入るっ!ヒーローっぽかったよねっ!」
「もっと早く助けに入ればよかったのだが、本当に一人で倒しそうになっていたからな」
「最後はひやっとしたわ。それにしても無事討伐完了ね。これは最前線の人たちが泣きそうね」
あの後、ユリさんがなっちゃんとドラコさんを回復させたまではよかったんだけど、予想外の激戦になってた上に、思った以上にわたしが押してたのを見て介入するかどうか悩んでたらしいです。ちなみに最後の爆発音の正体はなっちゃんの【フレイムランス】だったみたい。みんなも気を抜いてたみたいなんだけど、なんとか間一髪ってところで間に合ったんだとか。ほんとに感謝感謝だね、あれがなかったら今頃街にいるはずだもん。
……元はといえば、これで終わったと思ってわたしが気を抜いちゃってたことが原因だもんね……。きちんと対象が消滅するまでは油断しちゃダメってことだね、うんうん。
「うむ、予想外の珍客ではあったが、ユキのおかげだな。それでこの後どうする、まだ討伐するか?」
「私はパス。もうなんか達成感がすごいもの」
「あたしはまだまだいけるよっ!……って言いたいとこだけど、もうお腹いっぱいかなっ」
目的の4匹目の灰熊さんじゃなかったからどうしようってことだけど、みんな白熊さんで大分やり切った感じになってるみたい。かくいうわたしももう今日は戦闘しないでいいかなって思ってたりするし……。
「わたしもなっちゃんと同じく。今日はもうのんびりでいいかなって……」
「きゅぴぃ……」
「皆同じ意見か。それなら、しばし休憩してそれから戻るとしようか」
ということで、しばらくのんびりと。それから、忘れちゃいけないお楽しみ、戦果の確認のお時間です!
まずはアイテムから。今回、白熊さんからドロップしたアイテムはなんと!4種類もあるんです!
まずは1つ目。
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白熊の雪毛皮
―極稀に夜に現れるという、ホワイトベアーの新雪のように真っ白な毛皮。
毛足が長くとても柔らかく、また保温性抜群。
そのふわふわの手触りは至福のひと時を与えるといわれる。
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白熊さんの毛皮です。というか動物関連はみんな毛皮が出そうな気がする……。確かに覆いかぶさってきた時の感触はものすごく気持ちよかったから、この説明も納得です。ショコラとか完全に埋もれてた上に、ちょっと寝かけてたもん……。そしてこちらは2つほど獲得です。
お次はこちら。
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白熊の氷雪手
― 極稀に夜に現れるという、ホワイトベアーの氷の力を纏った手。
非常に美味とされ、好事家たちの間で非常に高値で取引されるという珍味。
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もはや熊さん関連の素材でお馴染みと化した熊の手の白熊さんバージョンです。珍味で美味しいっていったいどんな味がするんだろう。ちょっと興味があります。
そしてお次は3つ目。何故か瓶詰めされてるこちらも熊さんではお馴染みなのかも?
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大楓の樹液
― 熊の森にある大きな楓の木の樹液。
すっきりさわやかな甘さで、森の生物の大好物。
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どうやら広場の中央の大木は楓だったそうです。ファンタジーとかによくある精霊さんの宿る木なのかと思ったけど、案外普通……?とはいってもものすごく太くてでっかいんだけどね。
そして今回ははちみつじゃなくて樹液です。メープルシロップみたいな感じなのかな?こちらはなんと、瓶が3つもあるんです!大当たりなのかも?
最後はちょっと変わったものなんだけど、こちらです。
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大楓の枝
― 熊の森にある大きな楓の木の枝。
小ぶりながらも、魔法の力を引き上げるといわれている。
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うん、ぱっとみただのその辺に転がってる枝です。ちょっと先端のほうに葉っぱがくっついてるのがポイント?小ぶりっていうけど、ショコラがもっても違和感がまったくないぐらいの大きさです。
試しに振ってもらうと、一歩魔法使いに近づいた感じがしたり。……何やら気に入ったみたいで、ちょっとお試しのはずがぶんぶん上下に振ってきゅぴきゅぴ楽しそうにしてます。
配分のほうは毛皮と手はいつも通りドラコさん預かりで、樹液と枝はもらえることになっちゃったんだけど、もらってばっかりでちょっと申し訳ない感じも。そのうち何か珍しい素材ででもお返しできたらいいんだけどね。森の奥でも行ってみたら何かあるかな?
さて、お次はステータス関連です。
わたしのほうからだけど、まずはレベルが2つ分上がって17です。BPのほうは即決でAGIとSTRに半分この2ずつを振りました。SPのほうは合計14です。そしてステータスはこんな形に。
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雪花 Lv17
職業:ナイト
-ステータス-
STR: 19[+0, +2]
VIT: 13[+2, +1]
INT: 4[+0, +1]
DEX: 5[+0, +1]
AGI: 22[+2, +3]
-スキル-
【片手剣 Lv5】【両手剣 Lv9】【重盾 Lv7】【鎧 Lv8】【神聖魔法 Lv1】【筋力上昇Ⅱ Lv9】【体力上昇 Lv5】【知力上昇 Lv1】【器用上昇 Lv6】【敏捷上昇Ⅱ Lv9】【分析 Lv1】【従魔Ⅱ Lv1】
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スキルのほうなんだけど、【器用上昇】が1アップ。【両手剣】【重盾】【筋力上昇Ⅱ】【敏捷上昇Ⅱ】の4種類が2つアップ。そして【鎧】と【従魔】が3つアップかな?【鎧】のほうは久しぶりのレベルアップで、【従魔】のほうは10に上がったからⅡに強化されたみたいです。そして最後に【体力上昇】が4つアップ!これはちょっとうれしいかも。
とと、【筋力上昇】と【敏捷上昇】の効果が上がってるのか、ステータスの加算値がちょっと増えてます。もしかしてもちょっと前から上がってたりして……。うん、後でまとめてスキルの確認をしたほうがいいかも。それと、【盾】以外の新しいアーツはいつ増えるんでしょう。こっちも気付いてなかったり、とかありそうですが。
さておき、お次はショコラです。こちらもレベルは2つ分のアップです。BPはINTとDEXに半分こだそうなのでその通りに。SPの合計は17かな?そしてステータスがこちら。
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ショコラ Lv15
種族:ポテリス
職業:ポテリス・ウィッチ
-ステータス-
STR: 1
VIT: 2
INT: 16 [+0, +2]
DEX: 13 [+0, +1]
AGI: 2
-スキル-
【風魔法Ⅱ Lv6】【器用上昇Ⅱ Lv6】【知力上昇Ⅱ Lv6】【神聖魔法 Lv4】
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スキルのほうは覚えたてだった【神聖魔法】が3アップで、他は全て2アップといったところ。一気にこれだけ上がってるってことは、それだけ一生懸命回復してくれてたってことで。後でいっぱいご褒美をあげましょう。ルモレの実って思ったけど、どうせならケーキのほうがいいかな?
はてさて、ほかのみんなも確認が終わったみたいで、いざ街に向けてのんびりと。……って!あぶないあぶない忘れるところでした。ここに来たもう一つの目的を!
お読みいただきありがとうございます。