13.張り付きと珍獣のお話
「グルゥウゥ――」
HPも折り返しもすぎて、仕切り直しとばかりに立ち上がり、咆哮を上げようとしている灰熊さん。そこへ、
「そうはトンちゃんがうんたらだよっ。そいやっ、【フレイムランス】!」
「きゅぴっ!きゅっぴっぴ!」
「うむ。行くぞ、【フレイムランス】!」
ここぞとばかりに、風と炎の3つの魔法の槍が灰熊さんを襲って小さな爆発が起こる。
「――グゥウゥ」
結構効いたみたいで唸り声をあげてる。けど、咆哮が飛んでこないので、そっちはキャンセルされたのかな。怯んでるようにも見えるし、これぞ好機!って感じだよね。当然ユリさんもわかってたみたいで、
「ユキちゃん!」
「了解、せーのっ!」
それぞれ両手剣と槌を思いっきり振りかぶって、
「「どっせーい!!!!」」
「グゥアァァ……」
両方の攻撃がクリーンヒット!ズドンという大きな音とともに、灰熊さんはポリゴン片となって溶けていきました。
あの後、夜になるのを待ってから出発したんだ。当然ながら噴水ショーをみたショコラはめちゃくちゃはしゃいでた。途中膝上から転げ落ちちゃったりしてたけど、終わるまでずっときゅぴきゅぴいってました。
熊の森では案の定もふもふ塗れになりそうだったけど、ショコラにお願いしてなんとかしてもらって、無事に灰熊さんのところへ。
先客はいなかったみたいなので、そのまま戦闘に入って無事討伐といった感じです。というか、みんな順調に強くなってるみたいで、かなりあっさり終わった感じがしたり……。
「キュキュッピ!」
「ふふ、やったね、ショコラ。いえーい!」
てててっと真っ先に走り寄ってきたショコラとハイタッチしてそのまま脇に手を入れてぐるぐると。ショコラも嬉しそうにきゃいきゃいとお手々をふりふり。っとと、ほどほどじゃないとまた目が回っちゃう。
それにしても、ショコラはいつの間に風の槍なんて打てるようになったんだろう。こやつめ~、とりあえずうりうりしちゃえ。うりうり~。
「ユキちゃんっ、その子って昨日捕まえたばっかりだったよねっ? もう風の2個目のスペル覚えちゃうなんてっ!」
「おー、2個目のスペル!ショコラすごいね~。たかいたか~い」
「キュピピ~」
ショコラも目を細めて嬉しそう。手足と尻尾もふりふりしてて、ほんとかわいい。
「……ふぅ。もうそこまで育ってるっていうのもそうだけど、2個目のスペルに気付いてなかったってのも相当ね……」
「うむ。まぁでもそこが――」
「ユキちゃんらしいよねっ!」
何やらみんなでうんうん頷かれてます。確かに、ショコラが2個目のスペル――風の2つ目のスペルは【ウインドランス】らしい――を使えるようになってたのは気付いてなかったけど、あの時はショコラのクラスチェンジに思いっきり気を取られてたからしょうがない……よね……・。
それさておき、みんなで話し合った結果、リポップするまではあまり遠くに行かないようにしてのんびりすることになりました。
のんびり~っていいつつ、結局大木の根本で雑談タイムになってました。
ドラコさんが茶熊さんそっくりになれる毛皮の着ぐるみ装備みたいなのを作って、人気が出たとか。それを着てたら攻撃されそうになったみたいな、製造の面白話だったり。
なっちゃんがβの時のイベントで、味方ごと敵を吹っ飛ばしただとか、城壁の上に上って名乗りを上げたはいいけど、MP切れで魔法が不発しちゃってみんながずっこけただとか。そんな感じのなっちゃんがいろいろやらかした話だったり。
そんな話をしながら灰熊さんを待ってリポップしたら討伐、というのを繰り返して順調に2回ほど、合計で3匹の討伐が終わったんだ。全員レベルが上がってきてるからなのか、最初に討伐したときよりもだいぶ楽というかサクサク進んでる感じかも。
ちなみに、ステータスのほうだけどわたしのほうが、
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雪花 Lv15
職業:ナイト
-ステータス-
STR: 16 [+0, +2]
VIT: 13 [+2, +1]
INT: 4 [+0, +1]
DEX: 5 [+0, +1]
AGI: 19 [+2, +2]
-スキル-
【片手剣 Lv5】【両手剣 Lv7】【重盾 Lv5】【鎧 Lv5】【神聖魔法 Lv1】【筋力上昇Ⅱ Lv7】【体力上昇 Lv1】【知力上昇 Lv1】【器用上昇 Lv6】【敏捷上昇Ⅱ Lv7】【分析 Lv1】【従魔 Lv7】
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装備は唯一の防具の毛皮のショールのみでこんな感じ。LVが3ほど上がったので、BPは特に何も考えずに半分半分をSTRとAGIに、それから、SPのほうは合計10に。
スキルのほうは、【神聖魔法】【体力上昇】【知力上昇】【分析】以外が全てレベルアップです。基本的に3つのレベルアップなんだけど、その中でも【器用上昇】は4つ、【従魔】は6つです。【従魔】のほうは、ショコラがいっぱい頑張ったってことなのかも。後でご褒美をあげなくちゃ!
それからショコラのほうは、
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ショコラ Lv13
種族:ポテリス
職業:ポテリス・ウィッチ
-ステータス-
STR: 1
VIT: 2
INT: 14 [+0, +1]
DEX: 11 [+0, +1]
AGI: 2
-スキル-
【風魔法Ⅱ Lv4】【器用上昇Ⅱ Lv4】【知力上昇Ⅱ Lv4】
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こんな感じでレベルは3つ、BPはショコラの希望でINTとDEXに半分こ。それからスキルのほうも全部3つほどレベルアップです。ショコラのほうはわたしと違って完全な魔法使いって感じです。
ショコラのほうはSPが合計15です。これの使い道も考えたほうがいいかも。まぁそのうちなっちゃんに聞いちゃいましょう。
戦利品のほうだけど、灰熊さんの毛皮が合計で5枚、灰熊さんの手が2つ、はちみつが3つでした。
今回もはちみつ以外は全てドラコさんが処理する感じになってます。そしてはちみつはというと、ショコラが1個を抱っこしてぺろぺろしてたり。……ありゃ、ショコラの口元がべたべたになっちゃってる。まったく、しょうがない奴め~。
残りの2つはわたしのストレージ行きです。
戦果の確認が終わったからこれから帰還かといったら、ところがどっこいって感じで。予備用でもう1匹倒そうという話になって4匹目を待ってたまではよかったんだけど……。
「こんなことになるとは、な……」
「ええ、まったくだわ。というかよりにもよって出てくるなんて……」
「これが大事故ってやつだね!」
時間が過ぎていざリポップってことで出現したモンスター。これがラスト!って気合を入れたまではよかったんだけど。現在、大木から離れて森の側まで対比中だったり……。
「えっと、真っ白ですごいもふもふしてる、ね?」
「……うむ、真っ白だな」
「……ええ、もふもふで気持ちよさそうね。ってそうじゃなくてっ!」
熊さんなんだけど、色が灰色じゃなかったんです!大きさは灰熊さんより一回りちっちゃいんだけど、全身が真っ白ふわふわな感じの毛におおわれてるんです!
「あっはっはー。ま・さ・か!ホワイトベアーのほうが出るなんてねっ!ほんとにいたんだねっ」
そうなんです!稀に、それもものすごく低い確率だとかなんとかって言われているホワイトベアーこと白熊さんだったんです!
レアらしいんだけど、当然のごとく灰熊さんより強いんだとか。……うん、名前のほうは真っ赤っかなので、だいぶレベル差がありそうです。まぁ、灰熊さんも真っ赤なんだけどね。
「それで、コレはどうする?おとなしく帰るのもありだとは思うが」
「そうねぇ……。せっかくのレアだけれど、ちょっと難易度が、ねぇ……」
「あたしはどっちでもおっけー!というか壁やるのはユキちゃんだから、ユキちゃんに決めてもらおうよっ」
「ふぇっ!わたしが決めるの?……それなら、討伐で。灰熊さんより強いならきっと面白いもん」
ドラコさんとかが決めると思ってたから、ショコラと一緒に白熊さんを眺めて、すごいねーとかふわふわしてそうだねーとか言ってたらいつの間にか決定権が回ってきちゃった……。だって大樹の根本で丸まって寝てるみたいなんです。まんまるふわふわのボールみたいなんだもん。
とはいっても結論はひとつです。強いっていうならやってみなきゃ、だよね。最後の一言でみんなちょっと呆れた感じになってたけどね……。
さておき、作戦会議をしたのちに挑戦です。
まず最大の問題点なんだけど、魔法系アタッカーが2人いるのにどっちとも回復が使えないということ。このパーティ、ヒーラーさんが0なんだよね……。今更過ぎる問題点です。なので、急遽ショコラに【神聖魔法】を習得してもらいました。これでショコラのSPは残り13に。
配置とかは灰熊さんと同じだけど、ショコラだけがわたしの側です。ショコラの役割は、わたしがダメージを受けたら回復、余裕があったら魔法で攻撃って形。
そんな感じで話し合いも終わって、いざ!白熊さんとの戦闘開始です!
「そーれっ!」
「きゅっきゅ!きゅっぴっぴ!」
まんまるふわふわな白熊さんに向かって、頭上のショコラと一緒に、大上段から思いっきり大剣の振りおろし。……ぼふって音がして、クッション殴ってるみたい。って、灰熊さんの時もいった……ような……?やっぱり毛皮が薄そうなところじゃないと、斬撃は通りが悪そうです。ショコラのほうは風の槍だったけど、こちらもぼふって言ってました。
「【タウント】!それから、もう一回おまけだよっ!」
「きゅ!きゅっぴっぴ!」
タウントを入れてタゲを取りつつ、白熊さんが完全に起き上る前に追加の一撃です。のっそりのっそり起き上り始めたことでみえた始めているお腹に、一回転して掬い上げるように一撃。ショコラのほうは再度の風の槍です。
なんとか脇腹に当てることができて、今回はちょっと手ごたえがあったり。……といってもやっぱり毛皮のせいで大分軽減されてるような感じはするんだけども。
「グゥゥ……」
それでもそこそこ効いたみたいで、ちょっと恨みがましい唸り声を上げながらこちらを睨みつけてくる。それから2足で立ち上がって、ってこれは灰熊さんの時のお決まりパターンだよね。
咆哮までの時間で、素早くショートカット機能を利用して装備品の変更を。登録済みのセットは、片手剣と重盾のセットと、両手剣だけのセットの2つ。今回は片手剣と重盾のセットにチェンジして、っと。
そのまま、重盾をしっかり持って防御の構えです。
「グゥルゥアァァァ!!!」
……あれ?衝撃がない?白熊さんを確認してみるとまだ咆哮の体勢のままっていうか、またちょっと溜めが入ってるみたい……。とか思ってたら、白熊さんの周りに氷の塊が浮かび始めてるんだけど!
「ゴォガアァァアアアァァ!!!!」
やばっ!って思ってすぐに重盾を構えて何とかギリギリセーフといった感じ。ガキンガキンって結構な音と衝撃だったけど、若干のノックバック程度で済んでます。というか、氷の塊だったものが槍の形になって襲い掛かってきてめちゃくちゃ焦ったよ……。
って、結構HP減ってるんだけど!2本飛んできて何とかガードしきった感じはあるんだけど、HPバーががっつりと4割ちょっと飛んでる……。これ、直撃したらヤバい系?そこまで衝撃なかった感じだったから大丈夫だと思ったんだけど、魔法防御が問題だったのかな……。
白熊さんのほうは、魔法を放ってからちょっと棒立ち見たいです。もしかすると咆哮の前後に加えて、魔法の前後にも隙があるのかも。
「ユキちゃんの敵だよっ。これでもくらうのだ!【フレイムランス】!」
「【フレムランス】!ナツよ、ユキはまだ倒れてはおらんぞ」
「それ、チャー、シュー、メンっと!」
そこをすかさず、白熊さんの背後に回った3人が攻めかかる。なっちゃんとドラコさんは【フレイムランス】を白熊さんの脇腹へ。ユリさんは大きく振りかぶった槌を思いっきり膝裏っぽいところに叩きつけてます。
「きゅぴぴ!きゅぴ……?」
「大丈夫だよ、ショコラ。むしろ燃えてくるよ」
その間にも、すぐさまキュアを唱えてくれて、心配そうにのぞき込んでくるショコラをなでり。これぞ強敵とかボスだ!って感じがして楽しくなってきちゃった。
白熊さんのHPはこれまでの攻撃でもまだ1割ちょっとぐらい。まだまだこれからだよね。装備も両手剣に戻していざ、突撃です!
わたしが駆け出すと同時に、白熊さんも4足になって突っ込んでくる。白熊さんはその勢いのまま、とびかかりながらの両腕でひっかき攻撃です。これを素早く横に跳んですり抜けつつ、掬い上げるようにして脇腹に一撃。ショコラもついでとばかりに【ウインドランス】を同じところに打ち込んでます。
白熊さんのほうは、とびかかった状態から裏拳気味に、左腕をぶん回してくるけど、素早く後ろに下がってこれを回避。白熊さんは、追撃とばかりに前進しながら大きく腕を広げてのベアハッグ。素早く走り寄って迫りくる腕をしゃがみながら潜って回避して、そのまま白熊さんの背中側へ。途中腕を潜った後に、素早く回転してお腹に大剣の一撃も忘れません。
「……グルゥ」
怒りのこもった視線で睨み付けてくる白熊さん。ちょっと雰囲気がかわったかも?振り向く勢いを利用して、右腕のぶん回しを素早く下がって避けて。うん?腕がちょっときらきらしてるかも?でも特に何かが変わったようには感じないんだけども。そのまま、連続して素早く左腕、それから大ぶりの右腕が。連撃の最後が大ぶりだったので、大きく後ろに飛んで避けたんだけど――
「グルゥアァ!!」
咆哮と同時に、きらきらしたものが吹き付けてきます!ちょうど攻撃を避けようと飛んだところの咆哮なので、なすすべもなく。結構冷たい風だったので、きらきらは氷の結晶とかかも。う~ん、冷たい風が吹き付けてきただけで、特に衝撃で吹っ飛ばされたりもないんだけどいったい何だったんだろう。
きちんと着地して、素早く熊さんに突撃!
「――つぅ」
いつも通りに素早く接近して切り上げって思ったんだけど、白熊さんの右腕の振りおろしとかち合っちゃって、当たり負けして吹き飛ばされちゃった……。いつもなら間に合うはずなのに、若干遅くなっちゃってるのかな。……もしかして!さっきの咆哮の時に吹き付けてきたアレでAGIが下がっちゃってるのかな?とすると、腕を振り回して広範囲に氷の粒をばらまいて、その後に吹き付けて対象の行動を阻害ってところかな?……結構厄介な感じ。って、HPも微妙に減ってってるじゃん!行動阻害に加えて微妙な持続性ダメージってことみたい。ダメージのほうは立ち止まってるときが一番減ってるから、動いていればあまりダメージにならないって感じなのかな?
とはいっても、そこまでわかってしまえば後はこっちのもの。阻害されてる分も考えて、っと。
「グラァ!!」
着地して体勢を整えてるところへ、両腕を振り上げつつ飛びかかってくる白熊さんをすり抜けて躱して背中側へ。振り向きながらの右腕の薙ぎ払いを下がって避けると、今度は体重をかけてのベアハッグが。素早くしゃがんでお腹へ横薙ぎを叩きこみつつ、再度後方に抜けて。ふっふっふ、阻害分はもはや計算済みなのだよ、白熊くん。
「きゅっぴっぴ!」
攻撃を避けられて、そのまま前方に重心がいってたところにショコラの【ウインドランス】が背中に直撃して、白熊さんは数歩たたらを踏んじゃって――
「ターン、ターン、メーン!」
ユリさんのフルスイングが、位置が下がっていた白熊さんの顔面に直撃です。見事に振りぬいてて、プロ野球選手みたい。ズドンってなかなかいい音がしてて、白熊さん、めちゃくちゃ痛そう……。これはだいぶ効いたみたいで、白熊さんが両手で頭を抱えちゃってます。
「はっはっはー。その程度かね、白熊くん!おまけだよ、【フレイムランス】!」
なっちゃんは高笑いしつつ、ドラコさんはそんななっちゃんをみて苦笑しつつ、2人ともここが攻め時とばかりに【フレイムランス】を連打してます。
って、見てるだけじゃなくてわたしも参加しなきゃ!すかさず【タウント】をおかわりしつつ、膝裏を狙って連撃を。あまり強めに振り切っちゃうともしもの時に離れられないので、ある程度は加減をしつつ。
ショコラも、【ウインドランス】をわたしが攻撃したところにぴったり合わせて打ち込んでます。
じりじりと、けれどしっかりと白熊さんのHPが減っていき、現在は5割を割ったあたり。もしかしたらこのまま押し切れるかも、とかちょっとよぎったけど。やっぱりそうは問屋のなんちゃっちゃみたいです。
「グゥウゥゴァァァアアア!!!!」
いきなり立ち上がったと思ったら、そのまま大きな咆哮を上げる白熊さん。わたしはちょうど背中側だったから、問題なかったみたいだけど、他の人たちが大打撃です。
ユリさんは頭に一撃入れた後は側面に回ってたからか、威力が減衰したみたいで、ノックバックが発生して少し吹っ飛ばされたけども何とか踏みとどまれてるみたい。だけども、ドラコさんとなっちゃんは真正面から直撃したみたいで、だいぶ吹っ飛ばされてます。HPも半分以上削れてて、おまけになっちゃんは頭の上でひよこがぴよぴよしてるみたいなエフェクトが出てるので、どうやらスタンのおまけつきみたい。
「ユキちゃん、ごめん!しばらく一人でお願いできる?」
「大丈夫、任せてよ!それよりも、倒しちゃってもいいんでしょ?」
ここからが白熊さんの本番みたい。ユリさんに二人をお任せしちゃって、みんなが復帰するまで一人で白熊さんのお相手です。
さて、白熊さんとの第2ラウンドを始めましょう。




