16 感情のインストール
恐怖、焦り、絶望。
我慢したいのに、感情が全て引きずり出される。
気持ち悪い。
感情が止められない。
手足の感覚を取り戻したいのに、感情に邪魔されて感覚がなくなっていく。
まるで体の感覚なんて必要ない、とでもいうように。
『なぁなぁ翔!AIに足りないことってなんだと思う?』
知らない男の顔が脳裏に再生された。
内からあふれる戸惑いと外から入ってくる戸惑いが混ざり合う。
『うーん。なんだろうな』
『感情だよ感情!特に、行間ってよばれるやつ!言葉に入ってないのにのせられるアレ!』
『ん?ああ、そうかもな』
『それをAIにいれれたら、絶対成功できると思うんだよなぁ』
『うーん難しくないか?』
『おまえなら、できるだろ?』
おそらくノリトを開発した二人だろう。
視界に移る男はさくらの兄の友人、とすると。
『おれたちで日本から世界をつかみにいくんだよ、翔!』
『あ、ああ…』
見たことのないコードが脳裏に流れてくる。
何の知識もない海斗からは暗号にしか見えない。
しかし、これだけはわかった。
おそらくAIノリトを構成するコードの一つ。
それがさくらの兄 翔の脳裏で即座に作られたものだったのだろう。
迷い、不安、畏縮、自信。
外から多くの感情がつぎ込まれる。
多分翔の感情だ。
自分の感情が麻痺していく感覚。
『なぁ、翔』
気がつけば、周囲の風景は変わっていた。
きれいなオフィスビルの一室にいる。
『まだ足りないんだよなぁ、そう思わないか?』
二人の前に映るのは、AIの試験運用の画面だ。
『可能性を感じる。でもどうインプットしたら、おれ達日本人が感じてる感情の読み取りを認識するのかわからないんだ』
『こっちが言語化できていないからかもしれないな』
先ほどと違ってプログラミングコードなどが現れない。
翔の行き詰まった感情があふれてくる。
『モヤモヤするなぁ!』
目の前で苦しむ友人の姿。
言葉だけならイライラしてるようだが、その言葉尻は楽しんでいるのがわかった。
こういう苦しみを二人で乗り越えてきたんだ。
楽しまないと損でもある。
『もっとインプットが必要なのか?まだ情報が足りないのか…』
友人はぶつぶつと言いながら画面とにらめっこしている。
『そうだ!何人か人を集めてデスゲームとかやってみたら、限界状態のいろんな感情が得られるかもしれない!』
『だが、それをどうやってインプットするかだな』
そんな脳裏に一つの部品が思い浮かんだ。
それが何か、知っている。
『なぁ、考えたんだが…』
AIのデータのために、ハードディスクなどの記憶媒体が別に用意されている。
だが、データ収集は外からのインプット。
そのインプットを体を通すようにデバイスを入れてしまえば。
二人は自分の体にデバイスを植え込んだ。
AIと連携させ、聴覚と触覚、思考を読み取る様なデバイスにした。
そうすると、AIがより情報を求めたもんだから、新たなデバイスの提案をしてきたので、受け入れた。
そうしたら。
『インストールを開始します』




