◆日和荘◇
【読者の皆様へ】
本作を開いていただき、ありがとうございます。
この短編は作者である説人が体験した実話を元にした怪談です。
※【全3話、完結済み】です。毎日1話ずつ、22時に更新予約を設定しています。
深夜に玄関扉から『コツン』という小石が当たるような音が繰り返し聴こえたら、あなたはどうしますか?その音が不規則に何日も続いたら、無視し続けますか?それとも玄関を開けて外を確認しますか?
作者が一部実際に体験した怪談をお楽しみください。
短い怪談ですが、寝る前のひととき、あるいは夜更けの読書のお供になれれば幸いです。
※作者が生成AIで作成した本作のイメージ画像です。
◆日和荘◇
二階建ての古い木造アパート『日和荘』。一階と二階に各四部屋ずつある。上階への移動手段は、急な角度の外階段のみ。
人の入れ替えが早く、外国人が住むことも多かった。立地が良く、スーパーや駅が近かったので、人は入れ替わり立ち代わり、入居しては出て行った。
日和荘の住人は、周辺住民との近所付き合いがほとんどなかった……。
その一階の角部屋、一〇一号室に新たな入居者が引っ越して来た。
久しぶりの連休。
帰宅してすぐにシャワーを浴びた。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、蓋を開けた時の音で緊張から解放された気がした。ごくりと一口流し込むと、その喉越しが堪らない。胃に落ちたアルコールが身体に沁み渡り、内側からカッと熱くなって心までほぐれた。
仕事帰りにスーパーで買った、半額の惣菜をテーブルに並べ、その戦利品の荘厳な光景に胸がときめく。大トロとサーモン、イクラとブリがつまの上に並び、まるで宝石を眺めているよう。その他の揚げ出し豆腐や磯辺揚げ、今日は鴨肉まで手に入った。
タブレットを立ち上げ、サブスクリプションでバラエティを楽しみながら一週間の疲れを癒した。
タバコが欲しくなり、玄関を出た廊下でスマートフォンを片手に煙をふかした。
時折、正面の通路に目がいく。
近くに遅くまでやっているスーパーがあるので、閉まるギリギリの時間まで通行人は絶えない。
いつもの光景だった。
満足してタバコの火を消し、部屋に戻った。
夜がふけた——布団に入り読書灯を点け、うとうとしていると、玄関扉から『コツン』と小石でも当たるような音がした。
外の廊下を誰かが歩いているような気配も声もしない。
夜遅い時間に住人の出入りが激しいことはない。
それは繰り返し、夜な夜な不意に聴こえる。毎日ではないが、聴こえるたびに何の音か気になった。
気にする意識が強くなると、古い記憶と繋がった。
それはここに引っ越してくる前のマンション。
その音はそこでも聴いたことがあった。
それはいつも夜遅く、部屋が静かな時に聴こえていた。
当時は聴こえた瞬間に玄関を開け、廊下に飛び出て見回したが、何もなく誰もいなかった。強風で何かが扉に当たったのか、原因は分からず仕舞い。
結局、それは何年も続いた。
引っ越して、しばらくその音が気になることはなかった。
あの音をもう一度聴くなんて考えもしなかった。
それが、いつの間にか、また聴こえるようになっていた……。
『コツン』——何の音だろうか……。
早朝、身支度を終えてバッグの荷物に不足はないか、中に手を入れて確認をしていると、目の前の棚に調味料の小瓶が置いてあるのが見えた。
その棚と自分の位置は充分に距離があり、触れたり、振動が伝わるとは思えないほど離れていた。
バッグをいじりながら、その小瓶を戸棚に戻さないとな……と考えていると、突然、小瓶が目の前で『コトン』と倒れた……。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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