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Ed04:同じ風感じてゆけるのなら

GM:

 では、ラストシーン。ユメコが、広瀬さんを呼び出したシーン。で、いいのかな?


ユメコ:

 そうね。オープニングで行ったお店に呼ぶわ。まだらのままの顔を、化粧でごまかす。あやめに手伝ってもらって。


あやめ:

 私は、ユメコさんに頼まれて広瀬さんを連行してきて、そのまま遠くの方で様子を伺います。


GM/広瀬賢:

「お久しぶりですね、ユメコさん」

 少しやつれた感じですが、精一杯元気そうにほほえみます。


ユメコ:

「ごめんなさい。散々面会拒絶した挙句、無理に呼び出して」


GM/広瀬賢:

「いいえ、大丈夫ですよ。ユメコさんは大ケガまでしてたんですし」


ユメコ:

「それで、用事だけど。……アムリタが合併するまで、支援してあげてくれないかしら」


「社長の身内で、アムリタの持つデータの価値がわかるのは、きっとあなただけだと思うから」


エリル:

 ここにきて、まだお仕事のお話……。


あやめ:

 焦るな……焦るんじゃあない……


GM/広瀬賢:

「なるほど……社長になれ、という話ではないわけですね?」

 社長は絶対に断るという強い意志を感じる。


ユメコ:

「よほど強い意志がないと、それは無理だわ。それがいいとも、私は思わないし」


「ただ、あなたのおじいさんや、お父さんが残したものが、きっと人を救うと思うの。だから、お願い」


GM/広瀬賢:

「………祖父と父が残したものですか。そうですね、父も、ああなる前は研究者でした。確かにいくつかの物を残しています」


「ただ条件があります」

 そう言ってずずいと前のめりに。


ユメコ:

「条件? フォーチュンになら、少しはかけあえると、思うけど」


GM/広瀬賢:

「あの時の食事の続き……しませんか? それで手を打ちましょう」


ユメコ:

 ひどく、複雑な顔をしたあと。

「そうね。せっかく、このお店にもう一度来れたんだものね」


GM/広瀬賢:

「それと、もう一つ」


「私は浮気性ではありません。私が好きなのは、ひとりだけ。誰だと思いますか?」

 そういって、茶目っぽく笑う。


ユメコ:

 それは、曲解しちゃうでしょうね。


「……っ。そんなの、一人しかいないわ」


「あなたの道を決めた、想い出の人なんでしょう」


「ずっと、あなたを求めていたのよ。自分を犠牲にして。今もきっとそうよ」


「あとはあなたが、『一生かけて、君を治療して見せる』って言って」

 この辺から、惨めさに手が震え始めて。


「過去現在未来、全部がつながったハッピーエンドよ。大団円よ」


「もう、用事、終わったでしょ? 端役の軍人とはなしてちゃ、だめよ。しゃくの……むだ、よぉ」

 うつむいて、ぽろぽろと泣く。


GM/広瀬賢:

「どこの物語ですか、それは」


「そもそも私が道を決めたのは彼女の事があったからではないです、きっかけは、祖父の言葉です」

 そう言いながらハンカチで目元を拭いてあげる。


ユメコ:

「やめて、今、自分で化粧直せないのに」

 ファンデーションが取れて、いろんな色の肌が混じったひどい顔になる。


GM/広瀬賢:

「『我らは、人の為に究極の薬・アムリタを求めた、だからお前らも人の為になる事を』ってね」

 そう言いながら拭くのをやめない。


「それに私が『一生かけて』なんていう相手は彼女ではない」


「あなただ」

 そう言って目線が合う様にそっと顔を合わせる。


ユメコ:

 ぎゅっと、右手で彼の手を掴みながら。

「全然、つじつまがあわないわ。ひどい話よ。見てる人、ぽかんとしたあとブーイングの嵐よ」


GM/広瀬賢:

「はは、とんでもない。僕の視点から見たらきっとスタンディングオベーションですよ」


「初めて会った時から貴女は教導中の子達の為に一生懸命だった。教導中のあなたは、凛としていて」


「なのに可愛らしい一面もあった、僕の視点を映像にしたいくらいです」


ユメコ:

「! あたしだって! あの子たちに必死なあなたが好きだった! 真面目で、誠実で、優しくて!」


「それなのに、誘ってくれたのは、あたしだった。どれほど舞い上がったと思う?」


GM/広瀬賢:

「じゃあ受けてくれた時どれだけ嬉しかったと思います?」


ユメコ:

「ずるいわよ……! どれほど必死だったか知らないくせに! この格好になるまで3時間はかかるんですからね!」


「けど。……そんなの、ノータイムで美人なほうが、いいんじゃないの?」


GM/広瀬賢:

「美人の方が良いとか悪いとかじゃないですね」


「あ な た が 、良いんですよ僕は。僕はあなたが好きなんです」


ユメコ:

「……ずっと、探してた」


「ずっと、どこかにいるあなたが、ずっとずっと欲しかったんだからぁ!うあああああ!」

 すがりついて、泣く。


GM/広瀬賢:

 そっと包み込むように抱きしめる。頭を優しく撫でながら、

「これからよろしくお願いします、ユメコさん」


ユメコ:

「もう、逃がしてやるもんか。ずっと、引っ張り続けてやる!」


GM/広瀬賢:

「まぁ、とりあえずです、デートの続きしませんか? 隣に座っても?」


ユメコ:

「うん、……ぐす」


あやめ:

 さて。もう大丈夫そうですね。そっと涙をぬぐって、その場から去りながら、独白を。


挿絵(By みてみん)


 正直、"白蕾"に初めて出会ったとき、平凡さに驚いたことは事実です。

 けれど、彼女と時を過ごす間に知りました。不器用で、優しく、繊細で、かわいらしい"花都ユメコ"を。

 強化人間にもない輝きが、レムリアのお姫様にもない華憐さがあるのだと知ったんです。

 だからこそ、自分が気づいた彼女に惚れ込む王子様が現れて。

 何より、嬉しかった。


挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)


「……ようやく……ようやく会えたんですね、ユメコさん。おめでとう」


 私はお店を去りました。2人の背中に、小さく祝福を残して。


※  ※  ※

『蕾よ花開け』

EDイメージソング:『月恋花』(歌:諫山実生)

※  ※  ※


~ Fin ~


 これにて、リプレイ完結です。

 お楽しみ頂けたなら、評価、レビュー、感想など頂けたなら幸いです。より多くの人にリプレイを届けるきっかけにもなりますので、よろしくお願いいたします。

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