第18現象 天啓の輪
「天啓の輪」
薄暗い礼拝堂の中、天導と呼ばれる者がいた。その者は現象者を集めて何かを企んでいた。
「現象は人類を次の時代へ導く天啓である」
現象者は選ばれた存在であり、その力を恐れる社会や非科学現象組合こそが人類の進化を妨げている。
天啓の輪は誰もが自由に現象を使える社会にしたい。非現象者は現象者を敬い、尊い存在として崇めよ。
信徒:天導様、万歳!天導様、万歳!
力なき者は力ある者に支配されるだけだ。そうなればお前たち自身や家族はどうなる。あの非人道的なヒーローとうかいう現象者気取りの思い通りではないか。だが天啓の輪は違う。
入信した信徒は全て私の庇護下にある。それは将来永劫力ある者から身を守る事を約束しよう。
信徒:天導様のお言葉は正義であり、絶対だ。
信徒:ヒーローは悪であり、天導様が善である。
君も「天啓の輪」に入信しませんか?
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最近変な広告が絶えない。こう言った宗教団体の様なものは突っかかると面倒なことになりかねない。
鉄城:現象を自由に使う…か。
白雪:なんだか不気味ですね。
フミヤさんが言っていた団体は多分「天啓の輪」のことだろう。ヒーローが警戒している団体なら怪しいんだろうけど、一概にそうとも言い切れない。
彼らは非現象者(市民)を信徒にしているため、中々手が出せないんだ。信徒を集めて全員を人質にされたら大体のヒーローは困惑してしまうだろう。特にヒーローが多い東京ではそうなってしまう。
今日は土曜日で学校も休み。ヒーロー科は部活動に入ることができないから暇になる。かといって学生ヒーローは仮ヒーローたから任務が来るわけでもない。
だから今日は親睦会ということで皆で出かけている。東京なんて修学旅行でしか行かなかったから、実際住むと、どこに行こうか迷ってしまう。
大和:神代くんは地元やから詳しいやろ?
神代:俺はゲーセンにしか行かない。
大和:東京は名所がようさんあるやろ。旅行では行かんような隠れスポットとかさ。
神代:スマホで調べろよ。
東京は人が多いとは聞いていたけど、確かに多い。スクランブル交差点を見ていると人酔いしそうなくらいだ。こう見ると鹿児島って本当に田舎なんだと感じる。
白雪:東京はすごく暑いですね。
鉄城:東京は建物が密集してるからヒートアイランド現象が絶えないんだろ。
大和:ワイのところも同じやねん。
とりあえず行き先は「東京 観光」とスマホで調べて出た所に行く。先ずは雷門に行こう、その後は浅草寺・仲見世通りで何か食べて、次の行き先を決めようと思う。
神代:徒歩だと約3時間かかるぞ、大体15kmある。
鉄城:俺は平気だが白雪が体力もたんだろ。
白雪:うぅ…ごめんね。
大和:白雪が謝ることあらへんで。
少し迷っていると後ろから黒く大きな車が僕らの横に止まる。僕らは少し警戒していたが意外な人物が出てきた。
フミヤ:お前ら仲良く観光でもしてるんだな。
この車はフミヤさんの「ARK」という人形をグランドオーダーさせた物だと話してくれた。フミヤさんも非科学現象組合の依頼が今日は無かった為、暇だった。
フミヤ:浅草まで送ってやるから、乗れ。
僕らはフミヤさんの「ARK」に乗る。「LAST HERO JAPAN」のホームページにこの車が載っていたが、こんな感じになっているんだ。
フミヤ:移動を快適にすることで少しでもリラックスできる空間になっている。
ARKで東京内を走っている途中、横断歩道を塞ぐ人達がいた。青信号になっているわけでもないのに沢山の車を横断させないようにしていた。
さっき見た広告の服をしている人達がいた。年齢はバラバラで老人から青年まで白を基調とした服を着ていた。
車を止めては1人1人に何かを聞いている様子だった。話が終わると本を渡していた。
フミヤ:「天啓の輪」の連中だ。くれぐれも自分が現象者だとバレないようにしろ。
フミヤさんは車の中でそう言う。僕らは学生ヒーローでそこそこ顔がバレているが大丈夫だろうか。
鉄城:バレたらどうなんるですか?
フミヤ:強制入信させられる。刻印などの縛りは無いが、洗脳にかけられるらしい。
その中で一際目立つ信徒が1人現れた。ソイツは仮面を付けていて、先ほどの信徒よりも丁寧に事情を話すと、さっきまで断っていた人達がみるみるソイツに従っていく。
僕はその光景をARKの窓から見ていたら、一瞬仮面がこちらを見に来るなり、近づいてくる。
大和:こっちに近づいてくるで。
白雪:こ、こわいです。
その仮面は運転席のフミヤさんに車のドアを開けるよう指示するが、フミヤさんは無視する。まるでそこに誰もいないかのように無視するけど、仮面も中々引き下がらない。
フミヤ:恐らくコイツが洗脳の類の現象持ちだろう。
確かに、断っていた人達が急に入信するって話が良すぎるような気がする。
渋滞が長引くと、非科学現象組合の社員とヒーローが駆けつけた。「天啓の輪」側は入信者(殆ど非現象者の市民)を囮にして姿をくらました。
無事に浅草まで着いたが、先ほどの出来事で頭がいっぱいだった。フミヤさんとはここで別れるが
フミヤ:くれぐれも「天啓の輪」の言葉を聞かないように、何を言ってきても無視しろ。
ここが雷門か。テレビでは見たことあるけど、実際に見ると迫力あるな。チラホラ観光客で賑わっている。昔みたいな日本のルールを守らない害国人は殆どいなくなっていた。
大和:道端にゴミが落ちてるのは嫌やしね。
神代:それは日本人も同じ。自己肯定感低い奴らは「みんながやってるから」って事で平気でゴミを道に捨てる。
表面上では日本は綺麗だと世界に言われているけど、いざ内側を見てみるとそうでもない。観光地や都市部は日本人以外に「見せる場」やメディア等で多く取り上げる場にもなるから清潔だけど、海岸や路地に行くとゴミが散乱している。
鉄城:現象先進国は対策をとってるが、日本への導入はだいぶ先だな。
アメリカの方では導入されているルールなんだけど、道路にゴミを捨てると近くの監視カメラから警報が鳴り、犯人を特定して大通りの広告塔に画面デカデカと捨てた犯人を載せるってやつだよね。
神代:試験的に始めたらしいが、今じゃデフォになってるらしいな。
昔はリサイクルマンっていうゴミ処理系ヒーローがいたけど、あの人も日本人の怠惰さに痛感を受けて結局ヒーローを辞めてしまったからね。
神代:W杯やオリンピックでゴミ拾いしてる日本人いるけど、自国でもやれよって話。
ここまで来るのに結構時間かかったから、ランチにしたいけどいいとこあるかな。みんなは何が食べたい?
鉄城:有名どころと言ったら「ヨシカミ」ってとこだろうな。
神代:ヨシカミならランチ¥1,000〜¥3,000で食べれる。
僕らは「ヨシカミ」に行くことになった。ヨシカミは1951年創業の超人気店で2087年現在も浅草を代表するお店の1つ。
白雪:私はオムライスに…しようかな。
大和:ワイはビーフシチューにするで。
鉄城:ステーキ一択。
神代:俺はハヤシにするけど、雨宮もそれでいいよね。
僕らは昼食を終えて浅草を後にしたら、またあの集団と出くわした。「天啓の輪」は懲りずに市民を入信させようとしていた。「天啓の輪」は表面上セミナーであり、宗教団体ではない。
マルチ商法で警察が取り調べるだろうと思うかもしれないが、警察の何人かが取り締まりに行ったところ入信してしまった事例がある。
ヒーローも入信者が市民なだけあってか手を出しづらく捜索が困難な状況らしい。フミヤさんも調べていると言っていたが、「天啓の輪」に近づけない以上悪人認定していいか分からないとのこと。
先ほどとは違う仮面の人が信徒と共にこちらに来ている。僕らは顔色を変えないように、現象者だとバレないように警戒を怠らない。
理:現象を持つものが、なぜ命令される側なのか理解ができない。管理されるべきは非現象者である。
私の名前は「理」。理でも理とでも好きに呼んでください。貴方方は見たところ「学生ヒーロー」のようですね。
私が来たからには安心して下さい、今すぐにでも「天啓の輪」に入れば自由を与えることができます。
人は生まれながらに平等ではありません。現象を持つもの持たないもの、その差は歴然です。持たぬ者は持つものの差を埋めるため努力しますが、叶うことはありません。
にも関わらず、非科学現象組合や国家は現象を縛りヒーローという名の鎖を与えました。現象を持つものはかえって腫れ物扱い。
現象は神に与えられた物である筈なのに、神より下の傀儡である人間如きが我々現象者を支配するなどあり得ない!
現象者はヒーローにならなければ、現象を許可なく使用してはいけない。空が飛べる現象を持っていながら、地べたを這いつくばって生きなければいけないなど考えられないでしょう?
我々は現象者を正しい未来に運ぶ、現象者を敬い尊い存在として崇める団体なのです。今すぐヒーローなどお辞めになって、「天啓の輪」に入信するべきです、するべきなのです!
信徒:天導様、万歳!!天導様、万歳!!
大和:完全に洗脳やないか。
神代:胡散臭い詐欺集団。
鉄城:無視して行こう。
待ってください、話はまだあります。非科学現象組合は何のためにありますか?
信徒:アンチヒーローを排除するためです。
素晴らしい、その通りです。では、アンチヒーローがいなくなればヒーローは必要でしょうか?
答えは必要ありません、彼らは市民の平和を守ってるのではありません。アンチヒーローとの争いを管理しているのです。争いがあるからこそ、ヒーローは存在できるのです。
私達は違います。現象者が天啓の輪に入信し、正しく導けばアンチヒーローという存在そのものが生まれない世界を作ることを約束します。
信徒:天導様、万歳!!天導様、万歳!!
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これは間違いなく洗脳の類いだ。あたかも理にかなったような事を話している様に思わせて、市民を誘惑している。
確かにヒーローはアンチヒーローや悪人を捕まえたり、排除したりするのが仕事で、人命救助は後回しになることが多いが、昔とは違ってアンチヒーローを倒すのと同じくらい市民を救助することに力を入れている。
この理が言っていることは表面上は合っているのかもしれない。見た目だけで判断したらそう言い切れるのかもしれないが、実際ヒーロー目線にならないと見えないものもある。
理:ヒーローは災害時、市民を救えないことが多いですよね。そんな存在に守られるのは不安だと思いますが。
ヒーローってのはみんなが思っているよりも「脆い」存在なんだ。ヒーローは万能でもないし、市民全員を救えるわけでもない。
災害が起きて助けることができなければ、理不尽なほどに罵声を浴びせられる。「なぜ救えなかった」・「もっと早く来いよ」そう言われることもある。
勘違いしちゃいけないのが、ヒーローはただの職業であって中身は人間なんだ。動けば疲れるし怪我もする。アニメや漫画、ゲームみたいに怪我を治すポーションがあるわけでもない。
その時によって、行動も変わってくる。1つ1つの災害が同じようになるわけではないから、判断を間違えることだってある。
市民が思っているよりもヒーローは「脆い」存在なんだ。
貴方方の「天啓の輪」は現象者は選ばれた存在だと思っているらしいけど、殆どのヒーローはそんな考え方をしない。
理:…
現象者だから偉い、非現象者だから劣っている。そんなことは一度も思ったことがありません。みんな同じ人間です、同じように笑って苦しんで生きています。
ヒーローだから市民だから関係なく、現象者だから非現象者だから関係なく、そんな事で上下は決まりません。困っている時は助け合うのが、それが人として当たり前なんです。
理:それはあまりにも「理想論」ですね。叶えられるかも分からないことを話すのは一番市民を不安にさせますよ。
そうかもしれませんね。でも、その理想論を諦めたらヒーローでいる意味が無くなります。
理:そうですか、分かり合えないのは残念ですね。
その時だった。フェラム発生警報がなった。街中にサイレンが鳴り響き、付近市民の避難が呼びかけられた。
理はこの状況に驚く様子もなく、フェラムが来ることを分かっていたかのように動き出す。
理:時間です。
信徒:天導様、万歳!!
理:今日はここまでですね。また、お会いしましょう。
信徒たちは人を囲むように立ち、統率の取れた動きでその場を去っていく。
大和:あいつ…最初からこうなるって分かっとったんちゃうか。
非科学現象組合からフェラムの通知が来るが、一同驚くことになる。フェラムは基本生き物が現象を持つことで起こる災害なのだが、今回のフェラムは無機物だ。
つまり、意図的に誰かがフェラムを起こしていることが分かった。




