地獄の戦場!ヴェルダン攻防戦
~エルフの陣地~
「昨日の奇襲で同志の大半が戦死した。指揮機能も喪失したに等しい。ここは撤退を!」
「何を言っている!あのような失態!本国に帰れば間違いなく火刑ものだぞ!」
「静まれ、私が臨時司令官に任命されたからには私の命令にしたがってもらうぞ!」
エルフの臨時司令官が編み出した戦術、それは禁じ手でありながら、奥の手でもある。生きているエルフ一人一人から魔力を死なない程度抜き出し、集めて固めた魔石の生成だ。この魔石は強い衝撃を受けると大爆発を起こす、ゴーレムで投げれば着弾時に爆弾と同等の大爆発が起きというわけだ。
「人間どもの火薬兵器とやらと同じかそれ以上の威力じゃ。」
「だがそれは吸い取る魔力量の加減を間違えれば兵の命に関わるでしょう。」
「反対意見があるなら、代案を是非聞かせてほしい。」
場は静まり返り、この案は可決となった。臨時司令官は疲弊したエルフたちを鼓舞するため演説を行った。
「万全の準備を整えた大反抗作戦は二週間後だ、ガルマニア本国からサマルト司令率いる第二軍団と合流して川を渡る!今度こそ肥沃な大地を我らのものとするのだ!」
オオオオオオオッッッ!!!!
~臨時要塞地下司令部~
敵の動きが無い。
どうやら、エルフどもは近くの村を襲撃し家畜や農作物を粗方盗むことにせいを出しているらしいた。
我々が丘を占拠してから二週間ほどが過ぎた。
「作業の方はほぼ完了いたしました」
「ありがとう、下がっていいぞ」
丘の各所に簡易的な塹壕が掘られ、地下陣地と通路も造られた。無論火薬庫も五つの地下保管庫に分けて、湿気対策をしっかり施して収納された。
「エリゼ少将!陣地の強化が完了しました」
「了解した」
即席のゴーレムによる投石対策は完了した。各所に塹壕がほられた。今後の長期戦も見込んでコンクリートを使用した本格的な要塞化も一部で始まった。
近くの石切場からは防壁用の石材とコンクリートがツギツギと搬入され、王都からは大工や工兵隊、総勢2500名の派遣も始まった。
(あとは、ドワーフたちに頼んだ試作大砲が来るのを待つだけか。)
俺は搬入履歴等を含めた書類に目を通し、次々に判を押した。
「なぁ、ユーキ中佐。最近あまりにも静かだと思わないか?」
少将は煙草の煙を吹かしながら言った。
「そうですねエリゼ少将。奴ら何かを企んでいるのでないでしょうか??」
敵は2週間近くまったく動かなかった。1つ変わったことは謎の横断幕がこちらの視界を塞ぐよう、敵本陣との間、二キロ地点に五ケ所設置された事ぐらいだ。
「そうだ見落としていた!死体の数があわなかった!」
先の戦果報告書によれば、出現したゴーレムの数から術者は少なく見積もっても五人はいたはずだが、術者らしき死体は三体しか確認されていなかった。
(予備の術者も合わせていたとしたら、、)
「敵は今日中にもゴーレムか、それ以外の何かで仕掛けてくる可能性が高い。準備を怠るな。」
「はい、少将」
わかっておりますとも、全て考慮はしていた。
だが、何だろうすごく嫌な胸騒ぎがする。
そして、この嫌な胸騒ぎは必ず当たる。
~エルフの最前線陣地 横断幕内 ~
「よし、準備完了!」
「了解、始めろッッ!」
ゴーレム召還!!投石開始!!!
~臨時要塞地上~
「今日の夕飯何だろーなー」
「工兵たちが王都から食肉を運んできたらしいぜ!」
「おー!!今日は久しぶりの肉料理か!胸が期待で熱くなるぜ!」
ヒュルルルルルルルルヒュルルルル
上空から凄まじい風切り音がなったり
「敵襲ッッッ?!?!敵のゴーレムか!」
「大丈夫だ、投石は当たらなければもんだい、」
ドドドドドーーーーーーーンンンッッ!!!
~臨時要塞地下司令部~
「何事だ!!」
「ハッ!敵のゴーレムが爆発物を投石!!兵に多数の死傷者が出ております!」
あの5つの横断幕は爆発物を保管していた。そして夕方の今、隠されていたそれをゴーレムでぶん投げてきたのだ。
「何てことだ。敵も火薬兵器を持っていたのか?!」
「いぇ、爆発の閃光が緑だったことから新型の魔道兵器かと思われます!!!」
魔力反応が魔術師により検出されたことから火薬ではないようだが、これは艦砲射撃レベルの爆発だ。塹壕で耐えられるレベルではなかった。
~後方のエルフ陣地司令部 ~
「いいぞ!放てェェッ!!」
「次だ!もっと撃ち込め!!」
「下劣な猿どもを皆殺しにしろ!」
エルフの陣地からは、人間の築いた即席の防衛陣地に凄まじい爆炎が上がるごとに拍手と歓声が鳴った。
「作戦は順調でありますな。魔力を超圧縮した魔石を50発も喰らわせてやればただではすまないでしょう。」
エルフの陣地からはゴーレムによる魔石攻撃が三日間かけて実施された。追加に急造分されたものを合わせると約200発近い魔石が臨時要塞に随時叩き込まれた。
~臨時要塞内~
「痛いいいい!イタイイイイ!」
「腕か、腕ガァぁぁ」
要塞内の人的被害は酷いものだった。王都から派遣された工兵や大工2500名のう四分の一が原形を止めぬ遺体となった。
エリゼ少将率いる大隊3000名の内、爆発による死者傷者は1296名を超え部隊の半分が失われた。
地上の施設はほぼ全壊し、要塞を取り巻く壁に空いた小さな穴は木材で応急処置がされたが気休めだ。しかもすぐに修復できない大穴が三ヶ所もあった。
「ははは!はーっはははははは!!!!」
目の前で戦友を一瞬にして肉塊にされ狂い号ぶものがいた。絶望し吹き飛んだ自分の片腕を抱きしめ奇声をあげるものもいた。
ユーキの部下アルトとエディンも例外ではなかった。地下の救護所には一命を取り留めたアルトがいた。工兵と大工を庇い、頭を打って意識不明の状態であったが生きてはいた。エディンは地上で消火活動中に落ちてきた魔石の爆発で右腕と視力を失い、簡易ベットの上にぐったりと横たわっていた。
偵察兵からはエルフの前線基地からゴーレムの術師が後退したとの報告がされた。
地上では早急な復旧作業が開始した。
「諸君!聞けぃ!」
声の先にはダークブルーの髪をほどきドクロの連隊旗を掲げるジャンヌダルク、、、いやエリゼ少将がいた。
「我々がこの要塞を退けばこの地に住む多くの民に悲惨な死が訪れるだろう!たとえ神が我々を見捨て、死が避けられぬ運命であったとしてもこのドクロの旗の誓のとおり、死を対価とした勝利が我々に保証されるだろう!」
「さぁ、今こそ立ち上がり!嵐を巻き起こすぞ!」
ウぉぉぉぉぉおおおおっっっ!!!
エリゼ少将の鼓舞に兵達が奮い起った。
不思議な力だ。皆に勇気と力がみなぎっていた。
ここからさらに10日以上、死闘が繰り広げられた。
エルフの残党たちはゴーレムの投石に合わせ、騎兵と歩兵が一斉に突進しきた。我々は魔道歩兵と騎兵を前にエリゼ大隊が掩護射撃を実施した。
「撃て!撃ちまくれ!」
「コロセェェ!」
一進一退の攻防戦は続き、両軍合わせて千人以上の死傷者がでることもあった。大隊の消耗は少なく、代わりに激しい肉弾戦を繰り広げる魔道歩兵と騎兵の消耗が激しかった。
途中、ゴーレムの投石数が激減した。これは戦後に知った話だが、エルフ側の過剰な魔力抽出で多くのエルフが魔力切れを起こしたことが要因だった。
丘上の要塞を巡る激しい死闘は、第一次世界大戦のヴぇルダン要塞戦のようだった。
臨時の要塞付近には、両軍合わせて一万近い死体が転がった。
~開戦から26日目~
後方から人員と物資の補給が円滑に行われるようになった。ようやく試製の大砲六門と後方訓練を終えた砲兵50名が到着した。
エリゼ少将の大隊に兵が補充され、総数は4000名へと拡充された。
要塞の各所には急増品の鉄板が装甲材として施され、砲台まわりには爆風、破片対策が行われた。
「た、大変です中佐!」
ユーキは伝令兵からエルフ軍陣地に追加の兵五万名が到着したとの報告を受けた。偵察兵によると追加のゴーレム術者や魔力の多い人材も到着したとのことだった。
「エリゼ少将!」
「ああ、中佐あとは任せる。思う存分やってこい」
総員配置につけ!!!
戦闘配置が完了した頃、新たな情報が入る。
「なに?!それは本当か??」
「はい、確かな情報です。」
偵察兵の新たな情報によると、今までの敵陣地後方に敵の総司令部が構築されたとのことだ。物証として、そこから発送された高位の作戦指令書が差し出された。
(これは、かなりの大物が来ている可能性があるな)
敵は手前に最前線の陣地を作り、その後ろにもう一つ陣地、そのさらに後ろに司令部を置く三段構えか。
エリゼ少将は馬を使った大隊員の遊撃隊を組織させた。機動力で敵の陣を二つ突破し、敵の最高司令部を叩くためだ。
俺はこの一見無謀にも見える作戦の立案を任され、即座に実行に移された。
作戦内容書面の一部
部隊編成
魔道騎兵200名
大隊から馬に乗れる銃騎兵100名
指揮官 ユーキ・ハルバート
開始日時 : 2日後
さぁ、準備は整った。
スドーン!スドーン!
日の出とともに新設された砲兵科の操る榴弾砲が火を吹いた。敵の最前線とゴーレムが粉砕されていく。新兵器大砲の威力を目の当たりにしたエルフ陣地は大混乱に陥った。
トレビシエット(投石機)では届かなかい敵前線陣地に砲弾が次々と着弾する。
第三斉射後、敵陣で大爆発が発生、おそらく爆風の衝撃で横断幕に隠れた魔石が誘爆したのだろう。
「未だ!全隊前へぇぇ!」
ドンドコドンドコドココココ
満を持して要塞の門が開かれた。太鼓にあわせてエリゼ指揮下の大隊3900名、その後ろに魔道歩兵と騎兵6000名が横隊を組んで前進開始。
「お!おい!猿どもが出てきたぞ!」
「よし!皆殺しにしろ!魔毒の矢を放て!」
ヒューッ、ヒュンヒュンッッ
エルフ陣地から凄まじい風切り音とともに毒矢が飛んでくる。
「狼狽えるな!盾を頼りに前進しろっ!グハッ」
エリゼ少将率いる軍団が敵のヘイトを買っているうちに、俺が遊撃隊を率い敵の総司令部に向けて突進した。当然我々に気づいた敵軍から毒矢が飛んでくる。
「放てぇぇぇっ」スドドドドン!!!
エリゼ率いる大隊の一列目が援護射撃を開始。距離が遠く、敵に弾丸はほぼ届かない。
だが、発砲音に敏感なエルフたちは一斉に姿勢を低くし、エルフの弓兵どもを黙らせるのには成功した。
遊撃隊は全速で駆け抜け、敵の総司令部に突撃を敢行した。
~エルフ総司令部~
「ほほほ、猿どもが穴蔵からわいて来ましたぞ我々の勝利も近いですなぁ、サルマト殿。」
「そうですなぁラディシュ政治将校殿、、」
(くそっ。宰相に嵌められた!!敵の兵力と新兵器の詳細を2ヶ月も前から知っておきながら、今さら情報公開をしてくるとは?!さては人類の大臣クラスから情報を?!?!)
サルマト長官は本作戦の最高司令官でありながら、宰相にまんまと嵌められていた。
前線に送り出した部下たちが次々と榴弾砲の砲火で戦死した頃、ようやくラディッシュ政治将校は榴弾砲などの敵新兵器について話し始めたのだ。
宰相が派遣したラディシュ政治将校とその部下に囲まれ、常に監視されるサルマト長官は撤退が許されていない。
(軍事資金を2ヶ月に分割して全力を出させないようにし、消耗させる事も計算の内か。まさか、身内争いで破滅寸前まで追い詰められるとはな、、)
今現在、エルフの残存戦力2万名以下に対して敵は1万弱の戦力で交戦。敵の新兵器の存在を考慮して互角かそれ以下。エルフの魔法は最大射程が80メートル、敵はその2倍先から撃ってくる。
「うむ、もはやこれしかあるまい。」
「総司令部より伝令!予備の後方ゴーレム部隊は速やかに魔石を前線に投げこむべし!」
「何を考えてやがる!同胞が巻き添えになるぞ!みんな死んでしまう!!」
「サルマト長官は気が狂ったのか?!?!」
ドカカカカカッッッ!!!!
「敵襲!敵騎兵が司令部目掛けて突っ込んでくるぞ!!」
現場指揮官「通せ、」
歩兵「は?今なんと?!」
現場指揮官「なにもするな!敵を、人間どもを通せと言っているんだ!」
督戦隊「気が狂ったのかキサマァ!!!」
歩兵「炎よツラヌケェッ!!!」ジュックザッ
遊撃隊「なんだ?エルフども仲間割れか?」
ユーキ「戦場ではよくあることだ!構うな」
遊撃隊は敵の中間陣地を無傷で突破した。
敵司令部に突っ込むぞ!!敵陣が射程距離に入ると騎兵の弓矢と大隊員の銃撃で牽制射撃を開始。一気に接近し火をつけた爆薬を敵の司令部目掛けて投げつけた。
爆発、炎上した敵司令部から這い出てきた。
「生きているものたちは全て治療を施し、捕虜とせよ!」エルフたちは司令官クラスが軒並み爆死か捕縛されたことで大混乱し、戦闘はそれからすぐあとに終了した。
我々エルゼ王国は10倍以上のガルマニア帝国を相手に勝利した。遊撃隊は捕虜を連れ臨時要塞に戻った。
「今戻った!報告をしたい!
エルザ少将はいるか?!」
私は暗い顔をした医務官に呼ばれ、エルゼ少将の寝室に入った。「?!?!?!」医師は言う彼女は軍団を指揮し、その大半を殲滅することに成功したが、馬の死骸に隠れていたエルフの少年兵に脇腹を短刀で刺され。
今は昏睡状態です。
~ 王都凱旋 ~
「諸君の活躍を称え、勲章と恩給を与え、新たな戦勝記念碑の建立を行うこととする」
この世界で二度目の凱旋だ。式は滞りなく進み、王都には束の間の平穏が訪れた。戦後処理も進み、エルフ軍の資産は賠償金として没収された。将官以下のエルフたちは速やかにガルマニア本国に送還された。激戦地となった臨時要塞は新しく作り替えられた。
エリゼ指揮下の大隊は師団に格上げされ、第一戦列歩兵エリゼ師団と命名された。本人が聞いたらどんな顔をすることやら。
新しい師団旗はエリゼの髪色、ブルーブラックの下地にバラを咥えたトグロの紋様となった。
工房を運営していたドワーフたちは任期満了を迎え、若手に引き継ぎを済ませると報酬と酒樽の山を担ぎ国へ帰っていった。
それから一ヶ月が過ぎ、休暇療養を終えた兵たちは軍務に戻り始めた。重症だった部下のアルトは意識を取り戻し、エディンは左目の視力が回復しリハビリを開始。
凄いですよ本当に、時間があっというまに過ぎていく。昨日もエリゼ少将に憧れる連中が師団への入隊を希望して庁舎に殺到してきまして、ほんとカリスマ性も行きすぎると迷惑と言うか、、、
ベットに寝たきりのエリゼの手を握る。エリゼはいまだに目を開けない。容態は安定しているはずなのだが、、、。エリゼ少将の代行として、週二回閣僚級の会議に参加するのだが、最近の国王陛下の様子もやはりおかしい。
俺もおかしくなってしまったのか、気づけばエリゼの美貌にあてられキスをしていた。
(やばっ、こいつは男だぞ、、)
恥ずかしくなり顔を反らしてしまった。
「おい、きひゃま今何をした??」
きひゃま?今噛んだなこの人
「は!戦後処理と最近の情勢を説明しました!!」
「それは知っている!コイツ、、出ていけ!」
女性のような反応をするエリゼ少将。俺は言われるがままに逃げるように部屋を飛び出た。
「ンッッ、バカ、、、」
エリゼは唇をなぞり顔を枕にうずめた。
あーあ、やってしまった。閣僚会議の内容も頭に入ってこないし、会議が終わると王と王妃に呼び出され「孫の顔が早くみたい」とか訳のわからない事を言われるわ、、明日から復職するエリゼ団長にどんな顔をすればいいのか。
「今日は朝食をお召し上がりにならないのですか??」
侍女のマーシャは心配そうに顔を覗き込んできた。熱がある気がする、食欲もない。今日は仕事休みたい。俺は恋愛もののゲームやリアルな体験が少ないから困っていた。
しかし!仕事を放棄するわけにはいかない!
「・・・・・・・」
おい、エリゼ団長と中佐今日は一言も喋ってないぞ。
いつもはワチャワチャしてたのにね。何かあったのかしらぁ~
くそっ、やりづらい。
何時もの発想力とやる気が全然湧いてこない。何故か柔らかかった唇のことだけを想像してしまう!昼食の時間、俺はエリゼ団長に呼び出された。
「この間の件は忘れてくれていい。何もなかったいいな」
そんな軽い一言で済ませていいのか団長。俺は団長に誘われ、昼食を食べに町にでた。
「ここの肉料理はいつ来てもうまいな店長」
「ありがとうございます。ドンドン召し上がって下さいな。」
エリゼ少将はあまり手の進まない俺の皿に厚切りの肉をよそう。
「いいかユーキよ戦火を遠ざけ、再びこの店で食事ができるのもお前の策と活躍あってこそだ。ほら食え!」
悩んでいるのがバカらしくなった俺は厚切りの肉にかぶりついた。
「そうだ!ドンドン喰って頭をまわせ!このヘタレ野郎!」
なんか最後悪口を言われたが、まあいい。
俺は2キロ近い肉料理を完食し、少将とともに午後の職場へと戻った。




