開戦
~エルフガルマニア国王宮~
はい、我らが王よ。敵の新兵器を動かす火薬を保管庫もろとも木っ端微塵にいたしました。
王専属の侍女
サルマトよ大義である。信託が下った、醜い猿どもを根絶やしにし、肥沃な地を我らのものとせよ。と、王は言っております。
は、有り難き幸せ
我が王に勝利を!!
~エリザ王国郊外~
第一火薬庫は跡形もなく吹き飛び、第二火薬庫は辛うじて生き残った。吹き飛んだ第一火薬庫は第二火薬庫の十倍の火薬が貯蔵されていたが近隣の被害は最小の範囲で収まっていた。
それでも近くの村はもろに爆風を食らい、火薬製造に携わる者が十数名負傷。民家に偽装した火薬工場は無事だったが火薬製造ライン人手不足で止まり、製造ラインが復旧したとしても生産量は全盛期の半分以下か。
~翌日オーデル川防衛陣地付近の演習場~
狙えぇぃ!撃てぇぇえ!!
ズドドドドドン!!!
第二射撃てぇぇぇ!!
ズドドドドドン!!!
(こんな非常時にも関わらずこの人は、、)
エリゼ少将は何かに急かされているように、製造された火薬を数時間で使いきり、第二火薬庫の備蓄にも手を伸ばしていた。
「エリゼ少将!火薬を節約して下さい!第二火薬庫の備蓄ももうほとんど残って無いんですよ?!?!」
部下や兵たちの士気が下がる事を恐れ、爆発の件は伏せていた。
アホなのか?バカなのか?鉄砲の数はドワーフ達の働きで予想以上のスピードで半分近く揃ったが、火薬は残り少ないんだぞ?!
バカスカ撃ちやがって何を考えてるんだこの人は?!?!
夕方に製造された火薬もほぼ底を尽きていた。
お!おい!あれを見ろ!
山脈の山道に幾つもの明かりが!!
あ?!あれはまさか?!?!
信じたくはなかった。だが、日が沈みんだころ伝令が届き、山脈にできた幾つもの明かりを放つ無数の線が松明を掲げたエルフ軍の隊列だと認めた。
総員!配置につけ!
パパパパパ~!!
戦闘準備のラッパが鳴り響く。
「ユーキ中佐、司令所に来い」
俺はここで死ぬのだろうか、仮想世界のトップランカーゲーマーで一度も死んだことはないのに。失意からか恐怖からか膝が震え始めた。
「安心しろ、お前は死なない。何故ならお前は私の部下だからな」
「でですが、、火薬が、、あと何回撃てることか、、、」
「ふふっ、珍しく弱気だな。そんな貴様も悪くない。だが、これを見ろ!」
司令所の床が剥がされた。そこには地下通路?!?!まさか、あんた一人だけ逃げる腹積もりだったのか?!?!
「おい、お前今何か凄い失礼な事考えてやしないか?」
暗闇のなかよく目を凝らすと
"danger explosion 1"と書かれた大量の木箱が山積みにされていた。俺は驚いた。これは第一火薬庫に保管されていたはずの大量の火薬が保管されているではないか?!?!
「敵を騙すにはまず見方からだ!ほら何をボサッとしてる!早く現場の指揮に行かんか!」
そう言うと私は司令所から追い出され、少将に命じられた兵たちが火薬を次々と外に持ち出した。
弾薬と戦闘糧食が手際よく隅まで行き渡り、警戒体制をとった。第二倉庫から追加の弾薬が届けられた。準備は満タン何時でも来やがれ!
この日は戦闘は起こらずに終わり、エルフは対岸の1キロ先、小高い丘の上に陣取った。
翌朝、敵は日の出と共に攻撃を開始した。
バシャーーン!!
ドーーン!!
何かが空から降って来る、川や手前の土手にそれらは命中。土手には大穴ができた。
ゴ!ゴーレムだ!!!
兵達が震えあがる。
対岸の丘上から、エルフ魔道師が操る30メートル級の戦略ゴーレム五体が投石を開始したのだ。当たれば間違いなく即死するだ。幸いこちらは土手上から降りることで身を隠し直撃は回避できる。
しかし、その隙を敵が見逃すはずがない!
ウラァァァァァァアアアア!!!
雄叫びをあげながら数千の騎兵が歩兵を伴いその数は約一万。一気に丘を駆け下り一斉に突っ込んで来た。完全に不意を突かれた。射撃体制を取るよう命じた時には敵の騎兵は川の中程、100m地点まで迫っていた。
川の水深50センチもなく騎兵の突撃速度は落ちない。
(これでは間に合わない?!?!)
私が焦っていると、何処からか地鳴りが
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
あ!あれは?!
こ!洪水だ?!?!
退けっ!急げっ!
敵騎兵と歩兵は大混乱に陥った。
「やぁ、ユーキ君君の作戦は素晴らしいね」
エリゼ少将が俺の方をポンポン叩きながらそう言う。俺はなんのことかと思ったが、エリゼが俺に作戦案の書類を見せたことで思い出す。
「そーだ!君が初任で来たときに立案した洪水を使った戦術だよ。」
(まじか、この人。あの適当に書いた立案書を律儀に取っといたんか、、、いや、この人は恐らくあの時、今こうなることを予測してたに違いない。)
敵の第一次攻撃は押し寄せる濁流に流され失敗に終わった。突撃してきた敵の歩兵は全滅、騎兵は半数が壊滅した。
中には濁流をかわし、こちら側の土手を登ってきた騎兵や歩兵も一部存在したが、少将の号令で一斉射撃を開始。
鉛玉を食らったエルフたちは体制を崩し、濁流の川へと土手を転げ落ちていった。
「優秀な部下の知恵をつかうのが優秀な上司だよ。よく覚えておきたまえ。」
弾薬庫の件もそうだが、エリゼ少将の戦争指導やカリスマ性は、あらゆる可能性を考慮した未来予測から来るものだと俺は確信した。




