第40話「細道の突破」
崩れかけた細い通路に足を踏み入れると、壁の圧迫感が全身を包み込んだ。
横幅は人ひとり分。天井も低く、竹刀を振るえば岩に当たりそうだ。
「前方、段差あり。足元注意してください」水無瀬の落ち着いた声が前方から届く。
「後方、接近加速中。距離二十メートル」榊原の低い声が続く。
狭さのせいで、殿の榊原は十分に身を引けず、ほぼその場で銃撃を繰り返していた。
銃声が岩壁に反響し、耳が痛む。
俺は中央で、竹刀を半身に構えたまま前後の状況を警戒する。
背後から、重金属を引きずるような足音が近づく。
甲冑兵か、それとも……鎧騎士か。
「水無瀬、前は?」
「通路先は広間に繋がっています。あと十メートルです」
その時、通路の奥から低い唸り声が響いた。
瞬間、俺の前に砂をまとった腕が伸びる。
狭い通路の壁をすり抜けて出てきたサンドナイトが、槍の穂先を突き出してきた。
「くっ!」
俺は体をひねってかわし、逆に槍の柄を払うように小手を狙う。
しかし狭さで振りが浅くなり、有効打突にはならなかった。
「真、伏せろ!」榊原の叫びと同時に、背後からの弾丸がサンドナイトの頭部を撃ち抜く。
崩れた砂が床を覆い、視界がさらに悪くなった。
「抜けた!」水無瀬が声を上げる。
俺たちはほぼ同時に通路を飛び出し、広間へ転がり込んだ。
そこは高さのある天井と、複数の出口を持つ空間だった。
後方の細道からは、まだ足音が迫ってくる。
「出口は三つ。どれも未踏破の方向です」水無瀬が迅速に報告する。
「南西へ行く。地図上だと第五層への降下ルートに繋がる可能性が高い」榊原が判断を下す。
俺は深く息を吸い、竹刀を握り直した。
石碑に刻まれていた「二度重ねて果たす」という言葉が、頭の中で何度も響いていた。
――その意味を知る日は、そう遠くない。




