第38話「南端の罠」
休息を終えた俺たちは、焚き火跡を崩してから小部屋を後にした。
南の通路は狭く、岩肌が鋭く突き出している。
天井は低く、ところどころで頭を下げなければ通れないほどだ。
足元には乾いた砂が広がり、湿気はほとんど感じられない。
湖畔の湿った空気とは別世界のようだった。
だが、この乾きは……嫌な予感を呼び起こす。
「砂地は足音が響きにくい代わりに、罠を仕掛けやすい」榊原が小声で言う。
その言葉の直後、俺は足元の感触に違和感を覚えた。
砂が微かに沈む――次の瞬間、床板が落ち、縦穴が現れる。
「下がれ!」
咄嗟に水無瀬の腕を引く。榊原も素早く後退した。
穴の底には、無数の鋭い岩槍が突き出していた。
背後から、乾いた金属音が響く。
砂の奥から現れたのは、全身を砂に覆った甲冑兵のような魔物――サンドナイト。
盾と槍を持ち、通路を塞ぐように二体が現れる。
「盾持ちか……」俺は竹刀を構える。
榊原の銃弾が一体の足元を撃ち抜き、水無瀬が側面に回る。
しかし盾の防御は厚く、簡単には崩れない。
俺は深く息を吸い、盾のわずかな隙間を狙って踏み込む。
面を狙うフェイントから、瞬時に胴へ切り替え――有効打突。
一体が崩れ落ちた。
残る一体が突きを放つが、水無瀬が下から刃を滑らせ、関節を断つ。
砂とともに倒れる魔物を踏み越え、奥へ進む。
やがて通路は広がり、壁に古びた石碑が現れた。
表面には、剣と盾を交差させた紋章。そして、その下に刻まれた古い文字。
「これ……心気の理と同じ書体ですね」水無瀬が指でなぞる。
俺は石碑を見上げた。
ここもまた、スキルの秘密と関わっているのかもしれない。




